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【雑感】2023/5/27 J1-第15節 京都vs浦和

端的に振り返ってしまえば、前半のうちに京都が点を取らなかったおかげで負けなかったという印象でした。開始10秒で岩尾がボールのバウンドの目測を誤って谷内田を手で止めたものの、あまりにも早すぎて主審の御厨さんがカードを出し渋ったおかげもあるかもしれません。

京都は曺貴裁さんのチームらしくどんどん前へのアクションを起こしていて、前半の浦和保持vs京都非保持ではそのスタンスがハマった展開だったと思います。

京都の非保持は4-1-2-3の並びがベースにあるのかもしれませんが、WGは木村も豊川も内側からスタートしていて、それぞれショルツとホイブラーテンを正面で捉えられるような位置、パトリックが中央というイメージで、一般的な4-1-2-3の形というよりは5バックのチームが1トップ2シャドーで構えている形の方がイメージは近い気がします。

浦和はそれに対して、岩尾がパトリックの背中にいて「西川まで出たら俺が空いちゃうよ?」というポジションを取ったり、荻原がホイブラーテンのサポートで手前に引くことで豊川に対して「ホイブラーテンまで出たら俺が空いちゃうよ?」という駆引きをしようとしたのかなと思います。

DAZNの試合前インタビューでマチェイさんは「相手のハイプレスに対していくつか解決策を準備してきた」と話していましたが、西川の脇までしっかりCBが引いて相手WGを引き出す、それによって空くWGの外側にも選手を置いてIHも引き出す、それによって中央から相手をどかして前進するという算段だったのかなと想像します。

ただ、右IHの谷内田が数年前の川崎での田中碧のようにWGの外側まで素早く出ていくアクションが速くて、その分アンカーの川﨑が岩尾まで出ていくという具合に浦和の方が仕掛けたポジショニングでの駆け引きに対する反応は鋭かったと思います。

3'30~の浦和のビルドアップに対しては豊川と谷内田のタスクは逆になりましたが、荻原へしっかり人を当てることでバックパスをさせて、それを追いかける流れで川﨑は岩尾をロックしてボールを奪い決定機を作りました。

京都の方は別に谷内田が荻原まで出ていくということを決めている訳では無く、谷内田自身が豊川ーパトリックのゲートの開き具合やボール状況を見てゲートの奥にいる岩尾まで出たり、外側の荻原まで出たり臨機応変にやっていたようには感じます。

また、少なくとも後列の選手がどこかへアクションを起こせるようにという点も含めて京都の3トップが浦和のGK+2CBに対してなかなかオープンにボールを持たせなかった場面が多かったです。ただ、そこでオープンにボールを持つことが出来れば1'40~には西川と岩尾でパトリックを外してライン間の興梠までボールを届けたり、19'42~にもショルツが平戸の背中を取った敦樹へズバッと縦パスを刺したり、京都が前に出てくるのをひっくり返すことも出来ています。


京都が前に出てきた時にそれをひっくり返すようなロングボールがあまり無かったのはビルドアップ隊がオープンにボールを持てることが少なかったことだけでなく、京都の4バックはラインは上げるけどポジションを捨てて縦スライドすることは少ないのでロングボールを入れても前向きに競られそうという感覚があったのかもしれません。

浦和の右サイドは酒井を高めの位置からスタートさせて、大久保が内へ絞る、ショルツの右側は人がいないので時折敦樹がサポートで右外へ引いてくるというのが多かったです。手前で詰まったら右前へ飛ばして酒井をロングボールのターゲットにするということを目論んだのかもしれませんが、京都の方もCBでプレーすることが多い麻田を左SBにしてマッチアップさせていたので、そういった点でも浦和の方はなかなかロングボールは入れにくかったのかもしれません。


そうした時に浦和の方は前から選手をどんどん手前に落としてサポートを増やすということはしませんでした。それは昨年までと今年の違いとして感じた点です。ただ、そうなるとビルドアップも盤面ではなく局面で相手を外していく必要があって、ショルツやホイブラーテンは基本に忠実というか真面目な人柄がプレーにも出ているのがこうした展開の中ではネガティブにも働いたように思います。

例えば水曜のルヴァン杯での犬飼や平野がやっていたような、パスを出す方向とは別の方向に体を向けておきながらグイッと捻ってパスを出すといったプレーをすることは少ないです。柴戸も意図しているのかは分かりませんが体に無理が効くのでそうしたパスの出し方をすることも多々あります。

京都は前の6人と後ろの4人は少し分断気味というか、中盤ラインの背後は空きやすいチームではあったと思います。最初の体の向きとは違う方向へパスを出すのはパス精度が下がりやすくてリスクはありますが、それによるリターンも大きそうな相手だなとも思います。勿論、そのリスクが裏目に出て失点してしまえば試合結果は逆になったかもしれないので、安全にプレーしたい気持ちはとても分かります。


ハーフタイムで大久保からモーベルグに選手交代をしましたが、それだけでなくビルドアップのポジショニングも変えたように見えました。荻原をホイブラーテンのサポートで手前に引かせるのではなく、高めの位置へ押し出しておいて相手が前に出てきたのをひっくり返すよりも、最初から押しに行くというスタンスにしたのかなと思います。

後半の早い時間に先制して、その後はなかなか保持の場面がなかったのでこの見立てが合っているのかどうかを判断するにはサンプルが少ないのですが、47'40~、48'55~あたりを見ているとそうなのかなと感じました。


浦和が先制したこともあって、後半は京都の保持がほとんどになった印象です。前半から京都は非保持と同様に保持でもWG表記される選手も中に入ってプレーするのでシャドーと表した方が合っているのだろうと思います。

非保持と保持の配置差が少ない分、トランジションでの混乱が少ないのが強みにはなると思いますが、ポジションの入れ替えが少ない分、静的な展開というか、京都の方からアクションを起こして前進しないといけない状況になるとなかなか上手くいかないという印象でした。

非保持は自分たちの所定の位置を軸にして相手に自分たちのやり方を押し付けるということが成立しやすいですが、保持は自分たちのやり方を押し付けることは簡単ではありません。そこは曺貴裁さんは選手個々に解決方法を委ねているのか、チームとしての解決方法を与えているつもりが機能していないのかは分かりませんが、ボールを持てば持つほど苦労するスタイルではあると思います。だからと言って、後半は浦和が京都にボールを「持たせた」ということはないと思いますが。


浦和はいつも通り4-4-2で2トップが中を閉めるところからスタートして2トップ脇に相手が出てきた時にはSHを縦スライドさせるというのが基本的な運用だったと思います。京都の方は中に人数は多いのですが、浦和の方から下手に中を通せるようなコースを空けることが無かったのでボールが外回りになりました。

外回りになった時にSBが縦を塞ぐ、SHやCHが内へコースを塞ぐ、という連動が破綻することはほとんどなかったと思います。危なかったのは63'17~のリサイクルした後に平野の脇へ福田から縦パスが入ってターンで平戸に中へ入られてしまった場面くらいだったでしょうか。後半から浦和はモーベルグが入りましたが、彼が入ってもこの構造を維持できたのは非常にポジティブな要素でした。


浦和の2得点はいずれもセットプレーの流れからでした。1点目はFKが直接壁に当たった後のスクランブル、2点目はキッカーのモーベルグによる不意打ちの横パスから。1点目はFKの壁に8人も使うのか?という点はあるものの、どちらも共通していたのは「あっ」と思った瞬間のアクションの速さだったと思います。

1点目は結果的に壁に入っていた京都の選手たちがモーベルグがクロスを上げるまでに誰もゴール前を埋めるために下がろうとしていないので後手に回っていて、2点目もモーベルグからの横パスにも敦樹のシュートのこぼれ球にもほとんどの選手が反応できていなかったことでホセカンテが余裕をもってシュートを打つことが出来ました。

浦和の選手たちの方がよりタフな試合を経験してきていることで1手2手先を予測したり、よりニュートラルな状態で次のプレーに備えられていたりという部分で上回ったのかもしれません。福岡戦の雑感でも書きましたが、結局はゴール前でどれだけ正確にボールを扱えるかで試合の結果が変わってしまうので、その点で京都の選手たちの質で助かったと言えるかもしれません。


次はACL決勝によって先送りになっていた分の試合であり、勝ち点2だけ先に行かれている広島との試合です。未消化分はしっかり勝って順位を押し上げたいというだけでなく、直接順位をひっくり返せる試合になります。

好戦的なプレッシングに対してどう振舞うのかというのが再び問われる試合になりそうです。今季は事前に盤面での解決策はあまり用意せず、試合の中で選手たちが慣れながら変化していくというスタンスだと思うので、ルヴァン杯川崎戦のように慣れる前に先制パンチを食らってしまうという側面はあると思います。

広島も特に非保持では自分たちがやることがハッキリしているので迷わず出てくるというチームだと思うので、そのアクションを観察している間、特に前半の20~25分くらいまでは上手く対処して欲しいなと思います。


今回はこの辺で。お付き合いいただきありがとうございました。

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