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【雑感】2022/7/16 清水vs浦和(J1-第22節)

試合に向かうにあたって大雨予報が出続けた天気がかなり気になるところでした。雨でボールが思うように動かないことで技術よりも強度の方に焦点が当たりやすい展開を考慮してなのか、そもそもコンディションや1週間のトレーニングでの出来であったり、単純に対清水を考えてなのか、浦和の左サイドは大畑、大久保ではなく、明本、関根となりました。ただ、結果的には雨は強まったり弱まったりしたもののピッチ状況に大きな影響は与えず、この2人が得点に大いに絡んだので後者だったのかもしれませんね。


試合自体はお互いにビルドアップで上手く相手の1stラインを越えるシーンが多かったものの、ラスト1/3のエリアでは決定機をなかなか作らせないという展開だったと思います。

まず清水の方のビルドアップですが、ベースは2CBが開いて中央へ左CHの宮本がアンカー役として入りますが、右SBの原が立田の脇まで引いて関根との距離を取り、右CHの白崎と右SHの西澤が関根の内側と背後を取るようなポジションにいたり、白崎が宮本と並んで中央を2枚にしたり、宮本が左側に下りて山原を押し上げて4-1のような形にしたり、常に浦和の2トップ+両SHに対して数的優位を取ろうとしていたように見えます。

これに対して浦和はモーベルグが鈴木に対して外切りのようなイメージで寄せて行ったり、手前に引く原まで関根が出て行ったり、松尾と小泉が相手を左右分断させるように横方向に追いかけようとしましたが、後ろの権田も含めて清水のビルドアップ隊は常に複数のパスコースが確保できていたので、浦和の1stラインを越えることはそこまで苦労していなかったのではないでしょうか。

さらに、関根の背中を取っている西澤まで出ていきたい明本に対しては神谷がさらにその背後へ斜めに流れていこうとする動きを繰り返したのも浦和にとっては厄介だったと思います。

ただ、浦和の方は1stラインを突破された後は下手にボール保持者へのアタックを続けるのではなく、一旦4-4のブロックで中央を埋めながら撤退するのが早かったと思います。そのため、清水はそのまま内側から突破することは出来ずにボールは外側へ一旦出て行ってくれるので、浦和のゴール前でスクランブル状態が発生することはなく、西川が横っ飛びでセービングする場面はあったものの、シュートを打った場所自体はゴールから多少距離があったので決定機と呼べるような場面はそこまで無かったように思います。

ビルドアップ隊やそこからのボールをピックアップするために人数を使っていたのでゴール前に人数が割きにくかったというのもあったかもしれません。


浦和のビルドアップは岩尾をへその位置で2-1の形を作り、その前には5レーンにそれぞれ人を配置するようなイメージからスタートしました。ただ、清水の方が宮本を岩尾のところまで押し出してきたので、岩尾が最後尾へ落ちたり、岩尾の脇に小泉が落ちてきたりすることでこの動きによる規制を回避していきました。

浦和の試行錯誤はさらに続き、試合序盤こそ明本が外、関根が内という配置がベースでしたが、11'16~がそのように明本が外側の手前に引いた状態で西澤を引き付け(原が関根に対して行ったようなポジショニング)、関根も外側で西澤の背後を取るようなポジションを取る(西澤が関根に対して行ったようなポジショニング)ことで、ショルツがドリブルするための花道が開けました。


得点シーンは再び浦和の左からで、今度は明本が西澤に近い内側のポジションへ入って西澤を内側に留めることでショルツから大外の関根へのコースが開通し、原が関根への意識が向いたので明本はそのまま内側から一気に裏のスペースへ抜けていきました。

元々が右サイドから素早くショルツ、関根へと展開していったため、明本がハーフレーンをえぐった時にゴール前の人数が足りていなかったのは残念でしたが、関根が明本へパスを出した後にすぐに次の展開に備えて中央でマイナスのボールを受けるためのポジションを取りに行けたのは素晴らしかったですね。

まずは1人がゴール前のニアへ、次の人がファーへ、その次の人がマイナスのコースへ、というFC東京戦でも見られたチームとしての形を表現すべく、関根が誰もそのエリアへ入れていないことを確認してアクションを起こせていたと言えます。

さらに、それまでの浦和がビルドアップで清水の1stラインを越える場面については、清水の選手たち(特にCH)が内側から外向きに寄せることで浦和の選手が中盤でオープンにボールを持てることはほとんどなかったものの、この場面ではその矢印を関根のパスで裏返すことが出来たのは大きなポイントだったと思います。


後半に入ると浦和は非保持でモーベルグを前へ出すのはやめたように見えます。ただ、前節のFC東京戦も序盤はモーベルグを2トップに並ぶくらいに押し出していたものの、飲水タイムあたりで4-4のブロックの中に留まるように変更していたので、これはモーベルグがアドリブでやっているのを矯正したのか、プランとして前に出すのがハマらないのでやめたのか、どちらなのかは気になります。

ただ、清水の左CBの鈴木はモーベルグが出て来ずにオープンに持てるのであれば臆せず運んで行けるので、それによって浦和の陣形は後ろに押し下げられて行ってしまいました。

浦和が押し下げられる、清水が押し上げる、ということで清水陣内にはスペースが出来るのでロングボールで引っくり返していく場面は何度か作ったものの、結局攻撃を完遂できなければ後ろの押し上げが追いつかないので再び浦和陣内でのプレーが増えることになります。

ある程度ボールを持って浦和陣内へ押し込めて行ける自信がついたところで清水はホナウド、後藤を投入してビルドアップ時も原を手前ではなく外側の幅担当へ変更し、2CB+ホナウドの2-1をベースにした形にしたり、ホナウドを左に下して3-1にしたりしました。


後半を全体的に清水が幅を取りながらボールを持つ時間が増えたものの、ボールを取り返してポジションを取る時間さえ確保できれば、上手く攻勢に転じられる場面を作れたのはここまでリカルドが積み上げてきた成果と言えるでしょう。特に55'45~の場面は相手の矢印を巧みに外した爽快な場面でした。

動画にタッチペンで矢印とかをいろいろつけながらの方が分かりやすいだろうと思いますが、個人的には図で表すのはこれが限界です。。

宮本、白崎のそれぞれの矢印に対して小泉、岩尾、関根がきっちりポジションを取ることで清水のプレッシングを裏返すことに成功しました。ここまで中盤でオープンにボールを持てたのはこの場面が一番だったのではないでしょうか。


2点目の場面は酒井が岩波からのボールを一旦外側まで流してボールを持って前を向けたところがまず良かったですし、敦樹がきちんと酒井の内側でサポートに入ったこと、江坂が敦樹に出て行った鈴木、その次は関根に出て行った山原の背後を連続して取ったことでハーフレーンで余裕をもってボールを持つことが出来ました。そして、ゴールに最も近い明本が真っ先にニアへ走りこんだことで原のオウンゴールを誘いました。

酒井が前向きにコントロールしてからあっという間の流れでしたが、適切なポジションバランスによって相手の矢印を利用しながらフリーな選手を作り、ゴール前にもまず危険な位置へ人を送り込むことが出来たとても良いゴールでしたね。


浦和のリードが2点へ広がり、それまでも清水が幅を取りながら保持を増やしている中でオ・セフンも投入してクロス砲撃体制を整えたところで、リカルドは宮本を投入して5-4-1へ移行しました。

試合を通して非保持で前向きなアクションが上手くハマっていなかったことや、最低限ボールは外回りにさせることが出来ていて中央の陣形はあまり崩されていないし、酒井、岩波、ショルツで構えればある程度はじき返せるだろうということで、ボールを奪い返しに行くリスクより、クロスを入れられるリスクの方を取ったのだろうと思います。

山原のゴールは前節の松木のシュートと同様に打たれてしまったらさすがの西川もノーチャンスというか、シュートを打った方を褒めた方が良い気がしますが、それ以外はクロスがよほどピンポイントに入ってこない限りは問題ないだろうという感じでした。

勿論、もっと保持の時間を増やして、相手を自陣へ押し込んで試合を優位に進めることが出来れば良かったのですが、相手から意図的にボールを取り上げることが出来なかった中では、今切れる手札の中では一番良いカードを切ったのだろうと思います。


鳥栖やマリノスのように、相手が手前に人数をかける時にそこを押しつぶすようにこちらも人数をかけてプレッシングしていくという手法を取ることはしないので、同じようなスタンスの相手に同じように押し込まれがちなのは悩ましいところです。

逆に中断明けの相手で言えば名古屋やFC東京のようにビルドアップをそこまで丁寧にやろうとしなかったり、後ろの人数は最低限に留めたい相手にはプレッシングが機能したように、同じようなスタンスの相手には同じようにボールを取り上げられるとも言えます。このように、傾向がはっきり出る、言い換えれば再現性が高い、というのは良くも悪くも論理的にチームを構築で来ている証でもあるのですが。

ともあれ、上手くいかない局面を作られながらも勝ち点を重ねられたのは良いことなので、こうして勝ち点を稼ぎながら課題も克服していくサイクルを作っていって欲しいところです。リーグ戦で優勝するためには多様な相手から勝ち点を安定して取らないといけないので、弱点はなるべく隠せるようにならないといけません。


PSG戦はありますが、ここで再び代表ウィークによる中断が入ります。6月の中断以降は4勝2分かつ、全試合でゴールを取れるようになれているので、この2週間でユンカーの復帰やリンセンの組み込みなど更に上積み出来ると良いですね。

今回も駄文にお付き合い頂きありがとうございました。

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