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【雑感】2023/10/11、15 ルヴァン杯SF vs横浜FM

8月のリーグ戦に続いて自分たちから前へ前へと出てくる横浜FMに対しては使えそうなスペースを見つけることであったり、出てくる相手の力を利用して引っくり返したり、今のチームが狙っていることをやりやすい展開だったと思います。

1stLegはアウェーだったこと、まずは試合を壊さず2ndLegに繋げることが念頭にあったのか左右のSHが安居と小泉でCHに柴戸ということで、選手のキャラクターとして中盤タイプ(アタッカーではない)の選手で構成されたことは興味深い点だったと思います。早川が前半の途中で負傷して関根が入りましたが、その時に関根をSHにするのではなくそのままトップ下にしたのも1戦必勝ではなく、180分の内の前半90分という感覚だったのかなと想像します。

浦和の保持は35'30~のような酒井、安居、関根、カンテが右外レーンで縦関係になったところから一気にゴール前に迫るシーンや、44'20~のカンテがペナルティエリア付近でくるくる回ってシュートコースを作ってしまった場面など、人数自体は前にかけることが出来ていた印象です。


ただ、ビルドアップでは特に岩尾が最終ラインに落ちてショルツを右に開かせた時に相手の最終ラインのそばには人がいるものの、相手の中盤ラインの背中や脇を取るポジションが取れている選手はいなかったように見えました。36'45~もショルツが2トップ脇から運んで前進しますが、ショルツと対峙したエウベルの付近に浦和の選手はいないため対応にはあまり困っていなかったように見えます。

この場面は安居がライン間に下りてきてターンして前を向いていますが、下りてからのターンなのでボールを持って前を向いても体の勢いは前にはついてない状態です。また、酒井もエウベルに背中で消されたような状態から安居が止まりながらターンしたのでその後に前に出て行くのか、一旦横にはたいて安居がワンツーをもらいに裏へ飛び出していくのか、イメージが絞れなかったのかもしれません。結果的に酒井がその場に留まったため安居にとって前方向の選択肢は柴戸だけになってしまいました。

1stLegは試合を通してこのようなイメージでビルドアップ隊と前線が分断しがちだったのかなと思います。特にビハインドになった試合終盤はその傾向が強かった気がします。相手の中盤と駆け引きする選手がいないと相手が守備対応で困ることが少なくなることに加えて、ボールを前に出して失った時のネガトラのフィルター役がいないので、攻守がターン制になりやすくなります。


このシーンとの対比で2ndLegの52'27~の場面を切り取っておきます。ショルツが2トップ脇からエウベルの方に向かって運んでいくのは先ほどの場面と同様です。先ほどの場面と違うのはショルツが運んでくるときに関根も小泉もエウベルの脇あたりにポジションを取ったところからスタートして、ショルツが運ぶのに合わせて、ショルツに押し出されるようにジリジリとポジションを前にずらして行っていました。そして、ショルツが永戸と角田の間を一気に貫くパスを出してそこへ関根も小泉も反応しています。

1つのパスを2人で奪い合う結果にはなっていますが、オープンな選手が前に出てくる動きに合わせつつ、関根も小泉もどちらへパスが出たとしても対応できるような半身の体勢を取りながら少しずつ前へ出て行っているのが良かったと思います。1つのパスを2人で奪い合ったのは、裏を返せば2人が裏へ出られる準備が出来ていたとも言えます。

この場面のように関根が内でも外でも相手のWGの背中や脇でビルドアップ隊のオープンな選手に合わせて前へ出て行くのがとてもスムーズだったことが2ndLegで浦和がどんどん相手を押し込んで行けた要因の1つだったと思います。そして、相手のWGの背中や脇を取る選手がきちんと用意出来ていたことでネガトラにスムーズに移行出来ていたとも言えそうです。

2ndLegでは安居も岩尾もほとんど最後尾に落ちることなくビルドアップ隊は2-2のような形でした。特に右サイドで関根がエウベルの気を引くポジションを取れていたこと、それによってショルツが2トップ脇に開いたときにプレッシングを受けにくくなったこと、浦和の2CHがどちらも中央にいるので横浜FMの2トップは迂闊に中央を空けてショルツまで追いかけにくくなったこと、どれが起点というわけではなく、それぞれが決まった役割だけを担うのではなくボールの状況に応じてどっちにも行けるよというポジションや体の向きを作れていたのが良かったと思います。


せっかくなので2ndLegの早川のゴール未遂の場面も図にしておきます。

横浜FMのプレッシングの傾向として2トップの脇はWGが縦スライドする(4-2-4のような形になる)ことと、前からプレッシングに行った時にはCHが少なくとも1枚は2トップの背中にいる相手を捕まえに出て行くことが挙げられます。

この場面は正にその特徴が出たわけですが、ショルツに対して縦スライドしたエウベルの両脇(斜め後ろ)を関根と髙橋が取れていて、山根は浦和の2CHのうちショルツに近くてボールが来る可能性が高そうな安居を捕まえに行ったことでSBの永戸は関根と髙橋のどちらに出るかの二択になります。

ショルツが永戸まで見えていた上で関根に出したのかは分かりませんが、結果的に永戸は髙橋を捕まえに出ていて、フリーだった関根へパスが入ったところからターン、逆サイドへ大きく展開、ゴール前にニアから小泉、カンテ、早川と人数が揃った状態、という理想的な形を作ることが出来ました。

この場面でもビルドアップ隊とその先が分断せず、相手の最終ラインとも中盤ラインとも駆引きできるニュートラルな状態の選手がボールサイドに2人いたことが良かったと思います。


また、2ndLegで際立ったのはショルツとホイブラーテンの被カウンター耐性の高さでした。荻原も関根も保持では前に出ていましたし、岩尾も安居も簡単には最後尾に下りて来ないのでボールを失った時には自陣に広大なスペースがありました。

当然横浜FMもそこを狙ってロングボールを入れてくる場面が何度もありましたが事前のポジショニングやボールの出て行く方向へ走る時のコース取りで先に体が相手とボールの間に入れられていました。カウンターをことごとく防げたことで、オープンな打ち合いになることなくある程度コントロールできた状態で試合を進められたのだろうと思います。

CBの被カウンター耐性があることで2CHを後ろに落とさない、SBも前に出ていける、それによって相手の中盤や最後尾と勝負できる選手が増えるというこの試合のような内容はスコルジャ監督が理想としているものだと思います。

ただ、それは横浜FMが非保持で前に人を出してくる、ある程度ガチャッとした展開も許容するチームだからこそ出来たと言えます。8月のホームゲームでもこうした展開の試合をしながら、先日の横浜FC戦など待ち構えられる相手に対しては膠着状態になることもまだまだあります。

決勝の相手になる福岡は最近は5-2-3でブロックを作って、自分たちのいる場所といない場所をきちんと設定した上で相手を誘導し追い込むという非保持が上手に出来ているチームだと思っています。なので、決勝もこの試合のようにガンガン行けるぜとはならないだろうなとは思います。そうした相手にも自分たちの強みを押し付けることが出来ることを期待しつつ決勝の日を待ちたいと思います。


試合後のクラブ公式のX(a.k.a twitter)でロッカールームの映像が上がっていましたね。

「今日は素晴らしかったし、今日の夜と明日はオフでサッカーのことは忘れて休んで良いけど、金曜日には柏戦がある。まだまだ仕事はある。」と引き締めるスコルジャ監督のスピーチがありました。リーグ戦は残り5試合をすべて勝ってこそ優勝できるか、ACLEに出場できるかの話が出来ると思います。決勝までの間に柏戦、鹿島戦があります。さらにACLのGSでライバルになるであろう浦項とのホームゲームもあります。

今回の試合のようにヒリヒリする舞台を味わうためには決勝までの3試合もしっかり勝たないといけません。終盤戦の過密日程はチームが強くなってきている証ですから、この状況を楽しんでいきたいですね。


今回はこの辺で。お付き合いいただきありがとうございました。

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