セットされたら崩すのは難しい(2021/4/18 C大阪vs浦和)
昼間に予定があったのでこの試合は夜にディレイで観ました。スコアを知ってから観るのは別に良いのですが、負け試合と分かって観るのはあまり気が進みませんね。。
どうでも良いですが、髪色が明るいのが、山中、小泉、関根、明本といて、実況の若田部さんは何度も言い間違えていましたね。しかもみんな身長が同じくらいなので、スタジアムの実況席からは見分けにくいんでしょうね。
さて、浦和は前節・徳島戦の序盤に武田が負傷した影響でこの試合はスタートから柴戸と敦樹を2CHで並べるような形でスタート。ビルドアップの初期配置は柴戸が2トップ間に立って西と敦樹がCBの外側をサポートするようなイメージでした。セレッソはSHを縦スライドさせてプレッシングに行く傾向があるので、4-1-4-1の時のようにアンカー+開いたCBでのビルドアップとなると、開いたCBにセレッソのSHがそのまま出ていきやすいので、プレッシングの行き先を絞らせないためにも西と敦樹が少し引いたポジションからスタートしたのかもしれません。
ただ、敦樹のポジションが低くなったことで、ビルドアップ隊から左のハーフレーンが主担当である明本までの距離が遠くなってしまいます。それに加えてセレッソはCHの奥埜と藤田を中心にロティーナ前監督の遺産である守備組織のコンパクトさをしっかり表現できていたことで、明本がボールを受けるために中盤ラインを越えてボールを受けに下りてくるシーンが頻発しました。
明本が下りてきた時に、別の選手が前に出ていくことが出来れば良いのですが、敦樹や山中が代わりに前に出て行く動きはあまり見られず、結果として明本に敦樹が押し下げられるような形になってしまったという見方も出来るのかもしれません。6'16、14'10、16'12なんかはそのような配置になってしまっていたのではないかと。
例えば14'10~のシーンを図にしてみると
右サイドが詰まったのでリサイクルで左からの前進を試みます。槙野が豊川の脇でボールを受けて運ぼうとするのは良いのですが、西から岩波にボールが下がる段階で明本も後ろに下りようとしていて、それによって敦樹は押し出されるようにバックステップを踏んで槙野の脇に出て行きます。
槙野としては自分の外側に人がいれば開くスペースがなくなるので、豊川からあまり離れずにボールを受けていますが、例えば明本が下りずに敦樹がいる場所を残してあげて、敦樹もその位置に留まっていれば、槙野の左側のスペースは広くなるので、もう少し違った展開になったかもしれません。
明本、山中、敦樹のところで上手くローリング出来れば、というのが浦和の左サイドの大まかな狙いだったように見えました。しかし、藤田と奥埜の素早く的確なスライドによってゲートを狭められたことに加えて、右サイドは右利きでキック力のある岩波と変態的なボールスキルを持つ西なら狭いゲートでも通せるし、受け手となる関根や小泉は狭いスペースでもターンする能力がありますが、左サイドは右利きの槙野がボールの出し手になってしまうことと、明本は狭いスペースでのターンは出来なくないけどまだ自信はないという感じが見受けられるので、ちょっと手前に詰まってしまったのかなと。
そういう理由かどうかは分かりませんが、ハーフタイムで敦樹に代えて興梠を投入。単純に考えてしまうと、明本とノッキングしてしまうくらいなら、多少守備のパワーが落ちてもボールは持てているし詰まっている場所から一人どけてしまって、明本の使える場所をもっと広くしてあげようという意図だったのかなと。敦樹が悪かったというよりは、敦樹と明本の組み合わせであったり、全体のバランスの中で手を入れやすい場所が敦樹だったという感じではないでしょうか。
そして、興梠が武藤のいた9番のポジションに入り、小泉がボランチに落ちる分、武藤が右側に移動し、イメージとしては興梠1トップで武藤と明本が2シャドー、山中と関根がワイドに張り出すという感じ。
ボランチの柴戸と小泉がそれぞれ自分のいる側にボールがあれば味方のサポートに動き、残った方がピッチ中央を埋めます。また、後半になって明確にシャドーのような立ち位置を取った明本は前半のようにボールを受けに落ちるような動きが無くなりましたし、武藤は丸橋と西尾の間にポジションを取って裏に抜ける動きを見せることで関根をフリーにしていました。これはミシャ期に何度も見た武藤が最も輝く役割だったのではないかと思います。
武藤の恩恵を受けて、大外でフリーでボールを関根が何度もボールを持つことが出来、突破してシュートを打ったシーンもありましたがゴールを奪うことは出来ず。ドイツに旅立つ前のキレッキレの関根を知っている身からすれば、あれだけお膳立てされたら1点くらい決めてくれ!という感想も持ちましたが、ここのところ中盤で起用にプレーすることが増えてちょっと勘が鈍ってしまったのかもしれません。
そんな感じでハーフタイムでの修正によって「後半に関しては少しリスクを冒して中盤の選手を外し、前線の選手を入れてゴール前での違いを作れる状況を狙って、交代も含めて行いました。」という言葉通り、前半よりもゴール前での可能性を感じるシーンは増えました。不具合が起きている場所を的確に修正する技量はやはり流石ですね。チャンスの数自体も作れていたとは思うので、この試合で得点を取れなかったのは正にそこで決めきるかどうかという部分に帰結してしまうのは仕方ないのかなと。
失点シーンもコーナーキックを与える流れは、山中から柴戸への浮き球のパスのスピードがちょっと緩かったのと、少し浮いたボールの競り合いが曖昧になってしまった部分があって、このちょっと前に小泉のハンド疑惑でプレーが止まっている間に槙野が「ちょっとぬるいぞみんな!」という声掛けもありました。今回は10回あって1回あるかどうかわからないようなシュートが入ってしまったわけですが、勝負を勝ち抜いていくためにはそういうシュートですら、いかに入れさせないか、あるいはそもそもそういう状況を作らないかというのは大切になってきますね。
また、オープンな展開になる時間帯もありましたが、ほとんどに時間帯でセレッソの守備組織はラインを1列越されるたびに斜め後ろに全体で下がりながら対応しており、ペナルティエリア付近までボールが運べてもゴール前を7、8人で固められてしまうとなかなかシュートコースもパスコースも空きません。ゴールの幅にDFが集結し、SBが出て行ってもすぐに奥埜か藤田が下がって埋められてしまうと、それをどうやって崩せば良いの?となってしまいますね。
昨年のセレッソ戦に際して、
(C大阪と対戦して「ブロックを敷いたときに非常に守備が堅い」、「危険なところを埋めるスライドも速くてなかなか崩せない」という印象を語る監督や選手は多いが、そういったC大阪を崩す上でどういったことが大事になるか?)
大槻さん「まずは崩さなくてもいい状況で点を取れることが一番いいと思っています」
(試合後)
(C大阪が守備に人数を掛けていて堅かったということもあると思うが、レッズの攻撃のスピードがなかなか上がらずにスローダウンしながら攻撃していたシーンもあったと思う。速い攻撃はどの程度できたと思っているのか?)
長澤「全員の共通認識でボールを奪ったときに、相手が守りのブロックを作る前に攻め切るということ、カウンターのような形は狙っていました。相手も帰陣が速く、ブロックをしっかり作ってやられたくないところをしっかり守っていくというような速い守備が機能していたと感じていました。」
という話がありました。今年は速攻を狙わないのかと言えばそうではないのですが、自分たちのバランスを崩さないことにより重きを置いているため、相手の組織が整う前に刺してしまうスピード感というのは少なくなってしまいます。全方向にメリットしかない手段はサッカーには存在しないので、何を選択して何を捨てるのかという課題に対して、今回は捨てたものの方が目立つ形になってしまいました。
終盤に武藤に代えて杉本を投入し、さらに88分あたりから槙野を前線に残してパワープレー的な選択をしましたが、ボールを引いても出てきてくれずゴール前に人垣を作る相手に対しては、崩すよりも物理的に殴ってしまう方がチャンスがあると踏んだのでしょう。
ただ、槙野を前線に残してからは明本が代わりに後ろに残るようになり、そうなるとそれまで裏のスペースを匂わせて来た武藤と明本がいなくなってしまい、セレッソの守備組織をよりコンパクトにさせてしまいました。勿論、山中や西といったキックの上手い選手がクロスを出すことになるので、何発もチャレンジすれば1発くらいあたるだろうという見立てもあるので、簡単には否定できませんね。
セットされた守備を崩すのはどんなレベルにあっても簡単ではなくて、左右だけでなく、前後に相手を揺さぶって、相手の守備組織を広げることでやっとゴールに近い場所にスペースが出来るので、相手が意識する必要のある方向を自ら減らせばゴールが遠のくのは自然なことです。ルヴァン杯の柏戦もそうでしたが、ボールを手前から繋ぎたければそのためのスペースを作るために奥のスペースを狙って相手に意識させないといけません。
負けたのは当然良くないのですが、変にパワープレーで結果が出なかったというのはチームを作っていく、チームで原則を積み上げて行く段階においては悪くなかったかもしれません。「やっぱり俺たちは無理やりこじ開けるよりもきちんとポジションを取って相手を見てプレーしないとね」という方向に振れて行けば、この敗戦も教訓として活かされるのではないかなと思います。
さて、ここから連戦がスタートしたわけですが、7連戦のうちミッドウィークはいずれもルヴァン杯ということで、リーグ戦とルヴァン杯でターンオーバー気味に選手を起用していきそうなことを定例会見でリカルドは匂わせています。
(C大阪戦の後はYBCルヴァンカップもあってゲームが立て込む大変な時期になる。3月のゲームがたくさんある時期には「大きく選手を入れ替えるとまだ安定感を保てない」と言うような話をしていたと思う。それから1ヵ月ほど経ち、チームはローテーションに耐えうる状況になっているのか?)
「その可能性はあると思います。戦術も浸透していますので、ローテーションは可能だと思っています。フィジカルコンディションも上がっていますし、選手たちの理解度も上がっています。さらにケガから戻ってきている選手たちもいますので、それができると今のところは思います」
3月の代表ウィーク中のエリートリーグで4-1-4-1という適解を見出しましたし、ここから続くルヴァン杯の中で現在の主要キャストに割って入る選手や役割が出てくると良いですね。FODは浦和の試合を全部流してくれてありがたい。
今回も駄文にお付き合いいただきありがとうございました。
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