成果主義でやる気のある人を評価しても会社のパフォーマンスが向上するわけでもないかもしれない、という試算

 同じ業界の友人と成果での評価や報酬について話していて、おおいにもりあがったことがある。その結果、わたしは各種アンケートがあればそう書くようになったし、友人もアンケートがあると書いていると言っていた。

結論からすると、「トップパフォーマーを優遇するだけで、そのほかもろもろの労働者への手当をおろそかにしても、いいことはない」(むしろ、損)という話だ。たとえ、それが意図せず結果的にそうなっただけだとしても、頑張ったのに報われなかった、と思う人間は多い。少なくとも、私の周りでは。

背景としては、こんな感じの運用がされていると想定した。

1.お給料(賞与だけ、とか、昇給だけ、というパターンもあるかもしれないが)は成果に基づく成績に連動する                2.昇進は成績に連動する                     3.日本の人口構成と同じような年代構成であり(具体的には、45~50が多い。45~60が過半数)、大体45ぐらいで管理職になれなかったらずっと管理職になれない                      4.定年は60.再雇用制度はあるが、お給料は半減。ただし、成果評価の枠組みからは外れる                        5.成果は実績の数字が重要視され、「ナイスチャレンジ」などは評価されない                               6.チームごとの貢献ではなく、個人ごとの貢献で評価される(=サポート役には不利)                           7.役職定年制度(50代なかばぐらいで部長、課長などの役職から離れる)がある。                           8.成績は、絶対評価ではなくて相対評価である。

この場合、年功制ではないので、管理職への登用は大体45ぐらいが上限になるだろうか。制度の文面としては、管理職でない専門職として年齢に関わらず昇級する仕組みはあるものの、実際は、管理職推薦をされる予定の人が優先的に昇級していき、50をすぎたら、もう、昇級は実質的になくなる。そんな運用になっていくのではないだろうか。

リーマンショックだとか景気の動向とかいろいろあったので、人口比率がそのまま社員の年代にあてはまるわけではない。ので、仮に、労働人口のうち正社員の割合で考えてみる。

注)友人と話していたときは、互いの会社の比率について肌感覚で話していたのだが、折角なので、統計情報をあたろうと思ったところ、何故か、総務省の労働力調査の表やグラフは、15~25、・・・55~65のようになっており、55~60と60~65を一緒にするのは「なんか違う(60すぎの正社員の中には、役員とかふつーに入っていそうだし)」気がするので、更に調べてみた。

2020年にはいってしまうとコロナの影響もあるので、とりあえず、2019年の「労働力調査 / 基本集計 全都道府県 結果原表 全国」を見てみた。

すると。。。なんと年齢別のデータはなかった。。。

ので、「年齢階級,産業別就業者数」というデータを見てみた。ん?その直下に「年齢階級,産業別雇用者数」というのもあるではないか。違いはゆっくり見るとして、これだと、15~19、のように5歳ずつのきざみなので、まあ、いいだろう。

とりあえず、近そうな業種3つの合計で見てみる。30歳から44歳、50歳から54歳の間では就業者数は雇用者数よりも多い。就職氷河期が1991年~2005年というのとも無関係ではないだろう。

さて、それで比率である。                                                                              40-44:15.45%, 45-49:14.09%. 50-54:14.09%, 55-59:9.55%(その前は省く)

45-59の、もう、この先出世の見込みのない人間の合計は37.73%である。なんと3分の1を超えるのだ。

そして、残りの62.27%だ。ここは、まだ将来に希望はあるものの、その中では、2:6:2の法則が成り立っているとしよう。いわゆる、上位2割はすごく優秀に活動し、6割は普通、そして下2割はなんとなくだらける「ようになる」というものだ。

45歳以上は普通の6割は「頑張っても、昇級や昇進のあてもなくお給料もあがらず、報われない」と考えているとしよう。            成績で評価されることで、半年のうち一ヶ月ぐらいはモチベーションがさがったり、なんとか上司に成果をアピールするためのエビデンスをかきあつめたり、といったことで回転数が落ち、生産性が3割下がるとする(苦労が報われない感は、実際は3割どころではないけれど、そこは、テンションが低くてもできる、例えば出張生産みたいな作業の時間にあてて、時が少しでも傷を癒やしてくれるのを待つ、というぐらいのスキルは身につけているので)。                               下の2割もとりあえず、3割下がるとする。

一方、45歳未満については。下2割は成果で評価されようがなんだろうが、生産性は変わらない(もともと低い)とする。ここは普通の6割の人は、まあ、2割生産性が下がるとしよう。

一方、どちらの年代でも上位2割はやる気が出て1.5倍の生産性が出るとする。これは、わたしが急に後輩がやめて、物理的に1.4人月の仕事がする事になった時に仮面ウツを発症した経験から、2倍働くなどとすると、結局体をこわしそうだし、現実的にはその人の通常の1.5倍がいいところではないかと思った経験からだ。

それで、どちらの年代も上位2割は1.2、普通の6割は1、下2割は0.5の生産性を持っているとする。

仮でおいた数字は、わたしと友人の飲み会の中での肌感覚だから、まったく根拠などないが、それでも、まあ、せっかくだから一応計算をしてみよう。

画像1

成果評価を導入して、トップパフォーマーの生産性を1.5倍にし、その代わり、踏み台にされた人がパワーダウンすると、全体としては、4%程度、生産性が低下する、ということだ。ま、その時期の1ヶ月だけ。半年ごとだから、6分の1だけれど。

もちろん、何度も書いているように、数字は「エイヤ」でいれているので、ほんのちょっとどこかの数字をいじったら、結果は逆転することは大いにありうる。

ただ、「トップパフォーマーを優遇するだけで、そのほかもろもろへの手当をおろそかにしても、いいことはない」とは言えると思う。

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