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【与太話】鵜飼

この記事をご覧になった方々は岐阜県長良川で行われている伝統的な漁である「鵜飼(うかい)」をご存じでしょうか。

「鵜(う)」という水鳥が魚を丸のみにする習性を利用した漁で、鵜の首に紐を結び、鵜が魚を取ったら首のひもで飲み込めないようにさせて取り出すことで魚を傷つけることなくとることができるそうです。
古来から朝廷や幕府に保護を受けて来たこの鵜飼ですが、あなたはなぜ鵜飼が始まったかご存じでしょうか。

ここには古代日本の神話が由来しています。
ある神様が飼い鵜の散歩をしていたところ、川辺にいた魚を勝手に飲み込んでしまい、慌てて吐き出させたという神話この地にはありました。少し驚きましたが、神様の世界でもペットに道に落ちているモノを食べさせてはいけないという常識があったんですね。
この神話を元にして周辺の神社では川辺に鵜を連れていき魚を取らせては吐き出させる神事が行われていました。
最初は神事の副産物であったこの魚ですが、当時の漁法と比べると信じられないほど魚に傷がつかない事が分かり、神事としてではなく漁業の一環として庶民にその技法が広がっていきました。漁業となっていく過程で神事としての価値は忘れられていき、今では鵜飼の神事を執り行う神社は無いそうです。

鵜飼でとれた傷のない魚は特に献上品とされるようになり、朝廷や幕府もその恩恵に預かったことから、この漁法を保護して来た歴史があるのです。現在は日本の重要な文化として伝承されていますが、実際の漁として考えると、沢山の鵜が必要となる事や、鵜の飼育に関するコスト、川魚があまり流通されない現状もあるため、漁としての価値はほぼ無く、文化保護的な意味合いでしか利用されていないのが現状です。

しかし、この鵜飼は今新たな段階へ進化するための研究が進んでいます。近年、河川や湖で既存の生態系を破壊しているブルーギルやブラックバス、ナイルテラピアといった外来種に対して鵜飼を用いて選択的に外来種を捕獲する事で、効率的な外来種駆除ができるのではないかという試みです。

今はどのくらいの大きさの魚まで鵜が丸のみにできるかといった研究や、鵜の品種改良によってより大きな魚を丸のみにできるよう日夜研究が続けられています。

古代の神事としての鵜飼の歴史から現在生態系の守り手としての可能性を見せている鵜飼ですが、今後どのような研究と変化をたどるか楽しみですね。

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