健康至上主義の功罪
健康至上主義(市民の社会参加)は思わぬところで、所得と抑うつ症状の関連を強めている可能性があるかもしれないという(意訳)、長谷田先生の執筆された論文がとても興味深いです。
自らの知識不足で正しく解釈できているかはわかりませんが、論文内で個人的にキーとなると思った部分を要約して以下にまとめました。
日本の565の学区に住む65歳以上の男性42,208人、女性45,448人のデータを用いた我々のマルチレベル横断分析では、地域レベルでの市民参加率が高いほど、低所得者層における抑うつ症状の有病率と正の相関があることが明らかになった。
日本政府は、地域の健康を促進するために、地方自治体が地域社会と地域社会資本に力を与えることを公式に推奨している(厚生労働省、2015年)。本研究の結果を踏まえると、そのような努力は中所得者や高所得者の抑うつ症状の有病率を低下させるかもしれない。しかし、単に地域集団参加の機会を促進する従来の集団アプローチでは、格差が拡大する可能性がある(Benach et al.) したがって、地域介入政策については、その全体的な効果だけでなく、下位集団に対する差のある影響についても継続的に評価する必要がある。
地域社会のソーシャル・キャピタルの潜在的なプラス効果とマイナス効果を考慮すべきである(Portes, 1998)。市民参加の機会を促進する普遍的な活動は、公平な地域社会を築くという点では不十分かもしれず、精神的健康の格差を拡大する可能性がある。このような普遍的な促進は、孤立リスクの高い集団にターゲットを絞った追加的な介入と組み合わせるべきである(Marmot et al., 2010)。