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駐妻より駐在員の方がすごい??

どうも!ヨシサキです。

どこの国でもそうかもしれませんが、ここインドネシアでも女性駐在員はマイノリティです。
なので初対面の日本人と話すとき、しばしば以下のような会話が繰り広げられます。

「ヨシサキさんは旦那さんの帯同で来たの?」
「いえ、仕事で単身赴任で来てます」
「へー、すごい!かっこいいね!!」

おそらく相手は他意なく褒めてくれているのだと思います。なので素直に喜ぶのが正解なのですが、なぜかそうした反応にもやもやしてしまう自分がいました。

それはその言葉の裏に「帯同で来てる駐妻(or駐夫)より仕事で来てる駐在員の方がすごい、かっこいい」という前提があるように感じてしまうからです。

でも、本当にそうなのでしょうか。
駐妻より駐在員の方がすごい?
そうした前提はどこから来ているのか、いくつか考えてみました。
 

「駐妻より駐在員の方がすごい」に潜む前提
 

1.駐在員のおかげで駐妻は海外に住めている?

 
海外赴任になった場合、駐在員は家族帯同でも単身赴任でも赴任先に住むことができますが、駐妻は就労するパートナーの家族として、その国での居住権を得ます。そのため「駐妻が海外に住めるのは駐在員のおかげ」という前提が生まれるのかな、と考えました。

でも、そもそも駐在員が海外赴任できているのはなぜでしょう。本人の実力?

もちろん会社から海外の仕事を任されているのですから、ある程度社内で評価されているとは思います。
でも100%本人の実力で勝ち取った海外行きかと問われると、「親のおかげで不自由なく勉強できていい大学入って」「たまたま海外展開に積極的な会社に入って」「たまたま海外に行けそうな部署に入って」「たまたま海外に行けそうなタイミングで異動のルーティンが回ってきて」みたいな感じで、運とか周りの環境による部分が大きいのかな、と感じます。

さらに、家族を持つ駐在員が海外で思う存分働くには(単身赴任だろうと帯同だろうと)家族の理解、応援、協力が必要不可欠です。そうした要素を考慮せずに「駐在員のおかげで駐妻は海外に住めている」と考えるのは驕りすぎな気もします。
 
 

2.海外で働く方が帯同で来るより高い能力を求められる?

 
外国人を相手に仕事をする駐在員の方が駐妻より高いスキルを求められる、だから駐在員の方が駐妻よりすごい、みたいな意見もあるかもしれません。でもこれも本当でしょうか?

駐在員はたまたま異動先が海外になっただけで、キャリアに連続性があります。もちろん英語や異文化対応力は多少求められるものの、所属組織(勤め先)自体は変わっていないので、意外とこれまでの働き方をベースに進めることができます。

一方駐妻は、帯同によって環境も人間関係も自分の肩書もがらりと変わるため、駐在員以上に激しい変化に晒されることになります。語学も、買い物やメイドとのやりとり等で案外駐在員以上に現地語が求められたりします。

さらに子どもがいる場合、ただでさえ子育てなんて正解もないし大変だし不安の連続なのに、それを言葉も通じない、親類も頼れない、必要なものや情報がどこにあるのかも分からない異国の地でやらなければならないのです。お気楽な単身赴任生活をしている身からすると「すごいな…」と感服するばかりです。

そもそも、駐妻の中にはもともと日本でバリバリ仕事をしてたのに、家族のために退職や休職というキャリアにおけるリスクを負って帯同している方もいます。そうした背景もある中で、能力においてどちらが高いと比較するのは意味がない気もします。
 
 

駐妻でもない私がこの記事を書いた理由

 
本音を言うと、この記事を公表するかどうか、しばらく悩みました。

「駐妻より駐在員の方がすごい」という考えは実は私自身が持っている偏見でしかなくて、周囲はそんなこと微塵も考えていないんじゃないか。自分の主観や偏見が詰まっていて、駐妻で来られている方を不用意に傷つける内容になっているんじゃないか。

でも、1年半インドネシアで暮らす中で、色々なコミュニティにおいて駐妻が「お気楽な人たち」というステレオタイプで揶揄されたりネタにされていたことは事実です。そしてそうした会話を聞くたびに心の中でもやもやしていたことも。

私がそうした会話を受け流せず、このような記事を書いたのはなぜか。それは私が駐妻に育てられた子どもだからです。30年前、母は父に帯同し、未就学児の私を4年間ドイツで育てました。

幼い頃の私は、海外で働く父に憧れる一方、母に対しては「お父さんのおかげで海外暮らしができてラッキーだったね」くらいにしか思っていませんでした。
でも、当時の母の年齢になり、子どもをもつことを真剣に考えるようになるにつれて、母がどれだけ苦労して海外で人間関係を築き、私を育て上げたのか、想像できるようになりました。

私が海外勤務を目指すようになったのは、幼少期に海外暮らしの面白さを知ったからであり、母が駐妻を勤め上げてくれたおかげです。

そうした母への感謝の念があるからこそ、大きな変化の伴う帯同生活を乗り切るどころか楽しんですらいる駐妻の皆さんには「すごい!かっこいい!!」と勝手に賛辞を贈りたいし、そういう評価がもっと当たり前になってほしいな~と思うのです。

今日はここまで!Sampai jumpa lagi~

テルナテのナイトマーケットにて。そんなバナナ。


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