【感想】玄侑宗久「禅のアンサンブル」(2023)
玄侑先生の最新刊は、2002~2006年のコラム集(前書と後書は書き下ろし)。短くて読みやすいものが多い! 一部は時事ニュースから禅の考えに発展させているので、ニュースは懐かしい(20年前)けど、その解説は色褪せない。以下、心に残ったお話。
五月病と阿弥陀さま
受験勉強のよう指向性のある、人工的な生活に勝利した人ほど、その揺り戻しを受けて5月病になるんじゃ?と書かれています。目標を掲げると安心するけれど、ときどきは目標のない時間に戻ろう、と。
うちの近所にも桜並木があり、個人的には5月の新緑が好き。輝く緑色で生命力に溢れている。5月は新芽達を見習って、赤ん坊のように無思考/無指向に生きてみるのもいいのかも。「我々の生きる時間は、本当はもっと無意味なのだから(作中より)」
上機嫌な企業
企業目標を「スーパーで豆腐を買ってくる」に例えて書かれていて、無事に豆腐を買って帰ることは個人の幸せではなく、その道中、たとえ豆腐を忘れても上機嫌に過ごすことが幸せである。楽しく持ち帰ることが企業と個人が折り合える道、と書かれています。なんと分かりやすい。豆腐をチョイスするのもさすが先生(大ファン)。これがバナナだったらサルのお使い。
みんなでプリンを食べる勇気
兄弟げんかをやめさせたい親が怒鳴ったりして「愛の鞭」を振るう。しかし子供は親の真似をして、自分の要求を通すためには怒鳴ったり力を行使していいと思う、と書かれている所は、まさに思い当たる。
わが長女は次女を論破して泣かせる。私がまさに長女を叱っていたように。論破したって平和も幸せも訪れないことを、長女はいつか気付いてくれるだろうか…。
なるほどなるほど…うちの子たちはそこまでお菓子に執着しないので、どう
したものか…YouTubeとかゲームとかしてみる?
別コラムでは「地獄で舌を抜かれる」とか迷信を使うこともすすめられている。子供は不思議を欲している。イマジネーションの力が抑止力も養うという。
因みにこの知人とは、どうやら小林正観さんのよう。たまたま読んだ「ただしい人からたのしい人へ(小林正観,2002)」に同じエピソードが書かれていた。スピリチュアルな方のようで、「中陰の花」に出てくるおじさんを思い出した。
少年犯罪について
今、バスタフェロウズ2って乙女ゲーをやっていて、殺し屋とかギャングとか怖い人いっぱい出てくるけど、最も怖いものとして描かれるのが、その怖い世間の中で、自分は無関係だと思って生きている人々。SNSの悪口とか。いやほんと素晴らしいシナリオ&セリフまわしで。何が正義で悪なのか、とか、主人公になって考えられて、しかもイケボ祭という、なんたる、なんたる作品…!
話がそれ過ぎたけれど、玄侑先生も、犯罪を犯した少年と自分で、何が違うのか(それは紙一重)と書かれている。わたしも、善悪で答えるなら悪側の自覚はある、けど、やはり少年犯罪とかショッキングなニュースを見たときに、ただショックで終わらせずに、自分にとってなにがショックで、自分はどうありたいのか、想像したいな、と。
読み終わって
私が玄侑先生を知ったのも、PHPという小冊子のコラムだった。(PHPは怪しい雑誌ではありません…まぁ松下教といえばそうだけど)
色んな角度からお悩み解決するあたり、まさに生き仏(←自分でも驚くほど浸水中)いつか講演など聞きにいきたいけれど県外が多く…毎週ローカルテレビのご出演を楽しみにしております(ファンレターのように終わる)。
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