読書録「乱反射」貫井徳郎
昨日に引き続き、読書の記録です。
ネタバレします。
面白かった、というか、
ものすごく読みごたえがあった。
一人一人の「まぁいっか」が重なって、
幼い命を奪う事故が起こってしまう。
父親が事故の真相に迫ろうとするが、誰も彼もが責任逃れ。
父親のやり場のない感情が伝わってきて、痛い。
けれど誰も彼も、事故に直結するようなことはしていないのだ。
車の車庫入れに焦って逃げてしまった女性、
面倒を避けることで責任逃れをする医師、
精神の不安定さを職場で隠す男性、
住民活動に精を出すことで自分の存在意義を見出す主婦と、仲が良いふりをしながら心の中ではお互いを馬鹿にしている友人たち。
ストーリーの展開だけでなく、多様な人物の心理が詳細に描写されていることにも感嘆する。
いるいる、こういう人。
そして私もまた、そういう人になり得る。
ただ一人、気に入らなかったのは、退職して犬を飼いだした腰痛持ちの男性だ。
フンを拾わなかったのは腰痛のせいで、自分はこんなにひどい腰痛になるほど身を粉にして日本の社会のために頑張ったんだと主張する場面がある。
いやいや。
腰痛になったのは仕方ないにしても、ケア全然してないじゃん。
フンも拾うのが難しいなら何か工夫しようよ。
そんな調子じゃ現役の時も大した仕事してないでしょうね。
と彼にだけ妙に厳しい目を向けてしまう私なのでした。
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