「結婚、おめでとう」

まさかこの言葉をこんなにも早く、送る日が来るなんて、思ってなかった。
私の1年半後に産まれた弟は、未熟児で、母が医師から流産の可能性があるとまで言われた程の難産だったらしい。
保育園から中学までを一緒に過ごし、高校は離れたものの、弟の入学式と私の卒業式の日は2人で自転車を並べて登校した。
カップル、従兄弟…姉弟と見られたことは、一度もなかった。

「こいつより馬鹿って存在するのか…」

そう思わせるくらいには、頭が悪い。骨折した足で、「折れてねぇ!」って言い切って体育祭のリレーを走った時は、本当に救いようが無いと痛感した。(やっぱり折れてた)
ずっと馬鹿だとしか思っていなかった弟が、親の反対を押し切ってでも、幼い頃からの夢を叶えた時、初めて心から尊敬した。

存在の大きさを痛感したのは、私が大学に在籍している頃だった。
長い時間を付き合っていた彼氏と別れ、終わり方も最悪だった私の話を、朝まで聞いてくれた。電話越しに、久しぶりに弟に向かって大泣きしたことは、いつまでも忘れられないだろう。


「辛い」と言うと、
「辛いことは、楽しいことと一緒やろ。気づいたら過ぎてる」
「選択が正解やったかわからん」と言うと、
「好きに生きて何か悪いことやらない」

「おまえは、小さい、米粒くらいの幸せをいっぱい見つけて、それを抱えて、いつかでけー幸せになればいい」


漫画かよ…とか、綺麗事やん…とか、言いたいことはたくさんあったけど、結局一番欲しい言葉をくれるのは、弟だった。

ただの馬鹿って思っててごめんね。←


そんな弟からの結婚報告。バイトの休憩中に、思わず叫んだよね。
嬉しいと同時に、寂しかったのを覚えてる。
苗字も変わらないし、関係性も変わらないのに、どこか遠くに感じてしまった。


だけどそれでも、言わなきゃいけないんだよね。
「お姉ちゃん」と呼ばれた記憶は殆ど無いけど、お姉ちゃんだから。


「結婚、おめでとう」


去年のクリスマスを目の前にしたあの日、小さな女の子を抱いた姿を見た時、涙が止まらなかったよ。
おまえそっくりの、目のくりくりとした女の子。
おまえも知ってる友だちと、おまえの好きな長渕剛の「乾杯」を、泣きながら歌ったよ。


これはまた今度、教えてあげるとしよう。


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