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香港慕情 エピソード2      (2023:8/30-31)

チェックイン&ゴー

 酔った勢いでエアチケットは各自で取ったが宿はどうしよう?
 昨今、香港のホテル代が高騰していることは承知している。そこに重なる超円安。そして同行の夫は宿代を出来るだけ節約したい民……導かれた結論が安宿密集地帯の美麗都大廈である。なぜ同じ安宿の多い重慶大廈でないか?エレベーターの台数が多いことと、夫が単独行の時の定宿がこちらだから。値段と立地で口を差し挟む余地はなく、決定した。
 チェックインは13階、夫がすでに待っているというのでエレベーターで上がり、合流する。チェックイン開始時間の15時にはエアコンの利かない廊下(巨大扇風機は回ってた)に行列ができていた。老若男女、同性同士もいれば男女ペアもいる。日本人はこの時は他にいなかった。
 年若い小姐が一人でチェックインと部屋への案内を切りまわしているので、(お掃除などのスタッフは別にいた)小1時間ほど待たされる。
 あてがわれた部屋は6階。案内してくれたお兄ちゃんに「中国から来たのか?」と聞かれたので「NO、やっぷん」と答えると「おお、コニチワー」とお愛想を頂く。

 夏の香港はオフシーズンなのでツインで1泊5000円ちょっとであれば文句は言えません。それでもなんとかもうちょっとマシな宿に泊まれないものかとあちこち検索したけれど、本当に香港のホテル高いですね????
 ちなみに一か月経った現在は同じ宿が1泊10000円近いですよ。その値段じゃ泊まらないけども!
 中年女性一人でうろついても身の危険を感じることはなかったけども(若い女性だったらわかりませんよ)、宿についてはもう、ちょっと、コメントしづらいのでアレです。もし一人で香港に行くとしたら泊まらないです、ええ。
 シャワーの湯量も温度も十分で、浴室の水はけに問題がなくて洗濯もしやすかったのはよかった。でも、夏の香港なのだから飲み物や果物を冷やす冷蔵庫は欲しかったよ…13階にウォータータンクがあるのでお水とお湯はもらえたけれど、部屋でお湯沸かしてお茶飲みたかったよ…?全て円安が悪い。以前のようにエアとホテルだけのツアーでお気軽にマンダリンに泊まれたり……しないんだろうなぁ……
 荷物を下ろし、シャワーを浴びて一休みする。初香港くんと夕飯どうする?とやり取りをすると海鮮料理が食べたいというので、18時に、と約束をする。
 陽が落ちた香港は東京よりは過ごしやすい気がした。尖沙咀から佐敦(ジョーダン)まで歩いてもうっすら汗をかく程度。海鮮料理の前に裕華国貨に立ち寄り、漢方薬から食材、お茶に家具に仏像まであるラインナップを初香港くんに紹介する。裕華、今はここにしかないのかな、と思ったら郊外に数店舗ある模様。以前は華潤百貨と大陸系デパートの二大巨頭でしたよね?
 

https://www.yuehwa.com/zh-hk

 その頃の衣料品はいかにもお土産物っぽかったり野暮ったくてデザインはいまいちだったけれど、紹興酒をお湯で温められる酒器とか食器類をしこたま買った記憶が有る。ここ数年は衣料品のデザインが向上して、夫は旧正月前の大バーゲンで購入したラム革のチャイナジャケットを愛用している。
 どう見ても安っぽいお土産臭がただようぺらっぺらな化繊生地のドラゴン模様のガウンやチャイナドレスもまだ売っているけれど、ネルやデニム生地、リネンやコットンの普段使いできそうな(家で洗濯が可能な)さりげないシノワズリ―アパレルが豊富で、一度は立ち寄ってしまう(買い物をするとは言っていない)。使ったことはないけど服地を選んでオーダーで仕立ててもらうこともできるようだし。(多分これからも用はない)そして何よりいつ行っても空いている……一番混雑している地下の食料品売り場に以前は生きたスッポンなどが籠に入って売られていたと記憶しているけど、今はなくなっていた。介護用品やスポーツ用品のコーナーが以前よりも充実していて、今はそれが需要なんだなぁ、と売り場の変遷で香港の「今」をなんとなく察することが出来た気になってしまう。
 エアコンですっかり汗も引いたので佐敦道から呉松街に入り、路上にテーブルを並べて客引きをする海鮮レストランを目指す。二度目の香港の時から我が家で海鮮と言えばここなのである。浮流山に行ったりもしますけど、廟街に近いここの雰囲気が好きでねぇ……なんて言いながら角を曲がると、店はある、けどテーブルはスカスカ、海鮮が並ぶ台の上もスカスカ。瞬時にこれはちょっと違うな、と判断し店の前を素通りする。
 さらに角を曲がって廟街に入っても屋台が歯抜け。人もまばら、というか明らかに店番の方が多い。時間的に早すぎるということはないはずなんだけど、今はこんな状況なのか、と愕然とした。
 なんというか全体的に活気のない夜店を冷やかし、占いテントと広東オペラ(すっかりただのカラオケスポットになってる?)を横目に、油麻地方向まで歩き、結局 興記菜館で牡蠣の天ぷら、清炒芥蘭、煲仔飯2種とビールの夕餉とした。

熱々サクサクでビールが進む


暑いのに熱々が食べたくなる不思議
カレーは初めて食べた

 カレーを選んだのは初香港くん。面白がってカエルとか頼まないんだなぁ、と思ったり。彼はここで食べた芥蘭にすっかりはまり、後日別の店でもしっかりこれを選んで注文していた。
 店は相変わらず繁盛していて家族連れにカップル、観光客とあらゆる層で賑わっていた。店が賑わうのはいい事である。あの海鮮屋はなんであんなに閑古鳥が鳴いてたかねぇ…?と夫と首を傾げつつ、初香港くんと海鮮を楽しむのはまた別の機会に譲ることにした。

青空飲茶


 翌朝は6時集合。MRTとミニバスで川龍村を目指す。
 目当てはもちろん瑞記茶楼である。

 初香港くんは荃灣駅周辺で早朝から飲食店が開店し、大勢の客を集めていることに驚いている。我々より3日早く香港に到着している初香港くんであるが、一人で飲茶はしていなかったようだ。
 昨日の早朝到着した夫と堅尼地城(ケネディタウン)の新興食家で初飲茶を経験したらしいが初飲茶が新興食家ってそれはどうなの…と思わなくもない。

  私の初飲茶は湾仔で泊まったホテルのレストラン(ホテル名失念)。次が今は亡き龍門大酒楼。美心レストランにもよく行った。新興食家は夫が見つけてきて行きつけになり、瑞記茶楼は私が先に見つけたけれど今はすっかり夫の行きつけになっている。
 BBAの昔語りで恐縮ですが、今ほどインターネットが普及していない頃の話です。最新の香港情報はコミケの旅行サークルが発行する旅行記同人誌から集めていた時期があったんですよ。後、私はバックナンバーを集めるくらいだったけど「香港通信」という超マニアック雑誌や、なぜかマンガアニメ情報誌の「ふぁんろ~ど」が香港台湾などの特集を組むことがあった。(どちらも今は廃刊)
 ゲゲボツアー……懐かしい……(若い読者の方はぜひググってください)一時期ゲゲボツアー友の会さんの旅行同人誌も買ってました。
 で、その旅行記同人誌でここ、瑞記茶楼が紹介されていたのである。

マイカーでやってくるお客も多い
初香港くんが選んだ芥蘭
どれも美味しい

 香港でよく見かけるけどなかなか乗る勇気が出ないミニバス。行先を口頭で告げないといけない、というのがハードルなわけですが、ここに来るのであれば終点まで黙って乗っていればいい。お手軽にミニバス乗車も体験できて、青空の下で鳥の声(鳥籠持参でお客がやってくる)に聞きほれながら点心を味わうことが出来るこのお店は今でこそWEBでも紹介されているけれど、のんびりできる時間がなければなかなか来られない貴重なスポットだと思う。この辺りは水がきれいでバケツから掬って食べる豆腐花も美味しいしい、冬になると店の目の前は一面のクレソン畑で、摘みたてのクレソンを油菜でいただくこともできる。

季節外れなのでクレソンはまだ
ここが一面クレソン畑に
流れるきれいな水

 お茶と点心と美味しい空気(台風が近づいているせいで風が強かった)を楽しみ、初香港くんとはここでお別れ。貴重な旅行中におっさんおばさんに付き合ってくれてありがとう。
 今日はこの後、香港の秋葉原「深水埗(しゃんすいぽ)」に行くのである。
                           (つづく)


 

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