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20240109 複眼人と南禅寺

図書館へ本を返しに。借りていたのは呉明益の『複眼人』。年内に読み終えてはいたものの、返しにまでは行けていなかった。

今日は休館日なので、入り口の返却ボックスに入れる。すごい勢いで落下していく本。大丈夫なんだろうか、これは。いつも心配になる。

せっかくここまで来たのだし、このまま帰るのはなんだか忍びないような気がする。新春だし、寺にでも参拝して心を清めていくのもアリかもしれない、と半ばムリヤリ発起し、チャリのハンドルを切った。

南禅寺を訪れたのは図書館から近かったのと、ゆっくり見て回ったことがなかったからだ。前に複数人の友達と旅行に来て、有名な水路閣のところで写真を撮った……ような気がするが、それ以外のことは覚えてない。その水路閣は観光シーズンでもない平日の昼間だからか人影もまばらで、スマホをかざすときれいな写真が撮れた。

拝観料を納め、南禅寺の方丈へ入る。趣の異なる一つ一つの部屋も面白いが、どちらかというとその背後にある多彩な庭に心が惹かれた。特に、冷たい廊下を進み、ふと光が射すようにして現れた、小堀遠州作の方丈庭園がよかった。緑の露がその光にきらめき、新春の爽やかさを感じさせてくれた。

坊内をめぐりながら、寒さを感じては日当たりのよい縁側に戻り、再び庭を眺めた。そのときはもう眺めるというよりただの呼吸に近く、実際に目も閉じていた。僕もまた、あの緑の雫たちのように光を浴びて、その輝きを反映する水でありたいものだ。そんな風に思うようになっていた。

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