あの日の麦わら帽子

夏、焼け付くような日差しが容赦なく照りつける
この音、この匂い、この風

秘密基地、そういえばこの辺だった
いつぶりだろうか

木のトンネル、大きい神社、少し狭い路
砂利道、全部あの頃のままだ

昔はもっと大きく見えていたはずなのにな
それでも変わらず大きく大きくそこにあった

風に揺れるスカートを
リボンのついた麦わら帽子を
見たような気がした。

祖母の家で過ごしたあの時だけ
一緒に過ごしたあの子は
元気にしてるだろうか、
突然思い出したのはあの人に似ていたからだろうか

繰り返しの日常、運ばれるだけの規則的な音
誰もが下を向いて運ばれて
それぞれの場所へ向かっていく

呼吸も浅く、その他大勢に埋もれた日常。
"また会おうね"

聞こえた声に振り返る
あの時のような揺れるスカートに目を惹かれて
誰かを探した。

突然帰りたくなったこの場所で
深呼吸をして、何も変わらないこの場所で
その頃から変わらないものを見つけたようだ。

どうやら揺れるスカートに弱いらしい。
どうやら君に弱いらしい。
どうやら君に一途だったらしい。
名前しか知らなかった君との数日間。
離れたくなくて泣いたっけ、僕のことを忘れないでって呟いた僕に君が言った言葉。

…何年ぶりだろう、懐かしい声だった。

時々、ここに戻ってこよう。
次はまた君とこの場所で。
忙しさに埋もれて忘れていた約束。
"また会おうね"
一夏の思い出。眩しくて温かい思い出。

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