【読書感想】流浪の月

明るく読みやすい文体と暗澹とした社会問題のテーマのコントラストが終始引き立ち、一貫していた。

生きていて辛いことは数多くある。

第三者が見える形だけを切り取り騒ぎ立て、本人達の言い分を聞かず心無い数多くの言葉を浴びせる。

少女更紗と青年文はある日公園で出会い、共に過ごすようになる。
共に暮らした期間はお互いにとって幸福であり、気を許し会えるかけがえのない時間だった。

その幸福を引き裂いたのは社会だ。

更紗は共に暮らす叔母の家でその息子からの性被害に逢い社会そのものを憎んでいた。

文もまた、自分の性的志向と向き合う事に心苦しむ日々を送っていた。

社会は更紗を誘拐事件被害者として扱い、文は加害者として裁かれた。

事実としてそのようなことは何一つなく、社会全体がそう決めつけた。

実名が報道された更紗は大人になって新しく人生を歩んでいても誘拐事件被害者として扱われた。

その世間からの扱いに彼女は常に苦しむ。自分がそう扱われる度、文に無実の罪が課せられていくような気がしたからだ。

先入観とは時として人を傷つける凶器になりうる。

メディアの報道による情報は適切にに俯瞰させられるべきである。

情報どのように扱い、どんな言葉を発するか。我々は今一度自らに問うべきだと感じた。

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