【朗読用台本】音連れ(おとづれ)ー夏ー

音連れ(おとづれ)ー夏ー


雨の音と共に、梅雨が訪れました。
 
しとしと

ざぁざぁ
 
今年は例年より二十日ほど早く訪れた梅雨に、大慌てで衣装を合わせた紫陽花が、少し肩で息をしながら華麗な立ち姿を見せています。
 
どんよりと曇ったモノクロの空に、ピンクや青、紫の鮮やかな色。
 
そこに落ちる雨の音。
 
しとしと
 
ざぁざぁ
 
トントンと、車の屋根に雨粒が落ちて響く音。
 
バシャリ、と水たまりを自転車がはねていく音。
 
パラパラと、ビニール傘の中で聞こえる音。
 
雨の音を聞くと、あぁ、梅雨だなぁって感じますよね。
 


じきに、今度は夏が来ます。

ジー、ミーンミーン、と、早朝から元気な、蝉の音。
 
チリリン、と風が吹くと耳に涼しい、風鈴の音。
 
ゴロゴロ、ザァーっと、突然降ってくる夕立の音。

シュワー、カラン、と汗をかいたグラスに、ソーダと氷の音。
 
ザッ、カキーン、と土煙が舞う、高校野球の音。
 
シャクシャク、とみずみずしい甘さが口いっぱいに広がる、スイカの音

ちゅるるん、とのどごし爽やかな、そうめんの音

ヒュー、ドーン、とお腹に響いてくる、打ち上げ花火の音。

パチパチ、パチパチーーーポトン、と切なさを感じる、線香花火の音。
 
夏は、夏の音を連れて、今年も訪れてきます。
 
今年最初に聞く夏の音は、何になるのでしょうか。
 
 
 
音は、色々な時間を連れてきます。
 
私の声は、私の音は、あなたにどのような時間を連れてきているのでしょうか。

願わくば、ひとときの安らぎを、穏やかな時間を連れてこられていたら良いなと思いながら。
 
あなたに、幸せな時間が音連れ(おとづれ)ますように。


※声劇アプリ「ボイコネ」にRaia名義で同じ台本が投稿されています。中の人は同じです。

※どなたでもご自由にお使いください。