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世界が巨大な冷凍庫に様変わりしてしまった。 入れ小細工の様に、小さなシェルターの様に、こ…
不意に思い立って、町外れの山奥の古い精神病院へ、叔父へ会いに行くことにした。 何とな…
心臓の奥の奥に、いつからか植え付けられた、小さな不安の種は、白い太陽光の下で不意に芽吹き…
狭い浴槽に溜められた、無色彩のはずの水面が、他の何の色よりも鮮やかで、恐ろしいほどに綺麗…
もう長いこと結晶化したままの心臓から、ある日小さな新緑が芽吹いた。 別段気になる程の変化…
片田舎のバーで、夜毎アルコールをグラスに注いでは、拙い手つきでビルドをし、その夜に顔を合…
記憶を反芻する。記憶を回遊する、生産性の無い作業を、ただ繰り返す日々を送っている。 ベッドサイドのテディベアは薄汚れていて、それが酷く愛らしく思えて、彼を手放せない一因となっていた。此の所記憶が化膿し、ぐずついているのは付き合いの長くなり過ぎた彼のせいでもあった。 見る度に蓋をした物事で、脳が飽和するような、オーバーヒートを起こすような、記憶の断片達の雪崩が起きる。 それらは的確に私の喉元を絞め上げ、窒息させようと、気管支を埋め、肺を侵食する。それから頭の中で途方もない膨
瞬間的な強い痛みと、熱さを感じた。 しまった、やってしまった。 出せない手紙に封をする仕…
とても良い夜。 濃霧で空気もアスファルトもじっとりと湿っていて、お陰で車の周りは外の何も…
さようならを完璧に作り上げるためだけに、関係性を継続していた。 今の今までが、最良の、最…
薬瓶から消毒薬の匂いが、ツンと匂う。それが、彼女の匂いに近付いている証拠であった。 夜し…
先生、もうずっと視界が藍色なんです、先生。 あ、いや、灰色じゃないんです、あの清々しいよ…
彼が彼女を見ていた。 彼女は彼を見ていた。 彼は、彼の目から見た彼女が、確かにそこに在る…
近頃、遂に気がおかしくなったのか 白昼夢を見るようになった。 つい先刻は、自室の戸を開けるとさも当たり前の様にキリンがいた。 いやに小さく、やけに褐色がかったそいつは、ベッドの脇に立って雨が降る外を見つめていた。 よく見れば卓上には、ミニチュアサイズのシマウマが何頭も列をなしている。 ついでに、以前テレビの中でライオンに食われていた、名前も知らない草食動物も本棚の上を飛び回っていた。 画材の上にはシダや蔓植物が茂り、フローリング代わりに砂埃の立つ乾いた大地がそこにあった。