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積文

とおる前に
かなぎり声をきいて、
私は耳を澄ませ、
ひるがえった気色を
慮る

藍色にさせる
刃物がわたしを貫く
一点に貫く
何度も刃先が食い込み、
差し込み、引き抜き、差し込まれる、

臙脂色の夢は
鎖に縛られて
腐りはじめてしまいました
周期が凄い腕力で持ち上げられ
川は大の字にひらけました

夜は長く
男の希釈は薄い
氷の張った湖を
あなたは潜る
溶ける潮のように
船はどこへいった
おまへの無死

保健室の雲行きが怪しくなってきました
私は遠い遠い廊下を
四つん這いになって掌で語っています
蛍光灯の幽霊が
私を貫く

朝は早く、
音がなる、
しなる冬風を切ってよこす
水色の横縞

体育の授業で倒れたあなたが
私を貫く
一点に貫く
差し込み、引き抜き、差し込まれる

死なるものも詩なるものも

縁取る線を
足でかき消す

血を分けぬ父ならぬ父もどきに
濡らされるあなたは
私を貫く
一点に貫く
差し込み、引き抜き、差し込まれる

差し出された一万円は
オマヘノナカノマルヲ
積分シツヅケルダロウ


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