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『猫を棄てる 父親について語るとき』村上春樹 を読んで

自分がなぜこの本を買っていたのかわからない。村上春樹さんの本は好きで読んでいるが、毎回発売日に買っているわけではない。なんなら騎士団長殺しもまだ読んでいない。エッセイだから買ったのかというとそういうわけでもなさそうだ。猫と題にあったから気になったのか、それともイラストを含めて本の見た目が気に入ったのかもしれない。
私は気になる本を買ってはそれで満足してしまい詰んでしまうことがよくある。図書館通いが好きだったこともあり、子どものころは本というものは出版されれば永久に残るものだと思い込んでいた。しかし、大人になって欲しかった本が手に入らなく読めないということを何度か繰り返した後に気になる本はとりあえず買うという道を選んできている。事実私の本棚は物理的ににも電子的にもたくさんの本が積み上がっている。これを崩していくことが私の使命なのかもしれない。
この本を読んで思ったことは何はなくとも自分の父親のことだ。今私には父親について語ることを持ち合わせていないんだな、と思い知らされた本だった。幸い私の父はまだ元気であるし、絶縁状態でもない。父と語り合うことは十分に可能な状態だ。でも気恥ずかしくて改まって話をすることはないのではないかと予想される。父と話すことは得意ではないのだ。昔の話を聞こうものなら何かあったのかと勘繰られるきもする。それでも、私は私の持っている記憶を辿って、または父と話をしていつか父のことを語りたいと思っている。そう思わせるような魅力を持った本だった。

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