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ジンジャーエールと背伸びの夜

学生時代、ふとしたきっかけでとあるお兄さんと出会った。
確か7歳くらい年上の社会人で、最初はゆるっとドライブに連れて行ってくれた。

家庭やら何やらでいろいろあって哀しくて寂しくて、どこにも向けようのない怒りとかで自暴自棄になっていた時期で、深入りせず、でも気さくに構ってくれるお兄さんにわたしはなついていたのだと思う。
というか、たぶん、好きだった。

ふたりともオカルトが好きという共通点で、某有名心霊スポットに連れていってもらったりもした。

そんなお兄さんとある日、当時通っていた大学近くのファストフード店で待ち合わせをした。

わたしはそのとき何を頼んだのか覚えてないけど、お兄さんはジンジャーエールを頼んでいた。
わたしは「ジンジャーエールって飲んだことない」と何の気なしに言った。
お兄さんも同じくらいの軽さで「飲んでみる?」と言った。
いいの?と差し出されたコップを受け取り、一口飲む。
勝手に大人の味だと思い込んでいたジンジャーエールは思いのほか甘く、慣れ親しんだ他の炭酸飲料と変わらない飲みやすさだった。
おいしい、とコップを返す。
でしょ、とお兄さんは再びストローに口をつける。

まあね、そうだよね、
小娘相手に何の意識もしてなかったんだろうな~~~~~~~~

その後しばらくしてわたしは一度だけ告白まがいのこともしたが軽く受け流され、結果的にお兄さんとは何事もなく、自然に関係性は消滅した。

いや、一度だけ、わたしが他の方とお付き合いをすることになった頃、気まぐれに連絡が来たことがあった。
あの夜のジンジャーエールを思い出して、一瞬だけ躊躇して、
「彼氏ができたので、またね」
と返した。

実際のところもう顔も思い出せないくらいだけど、それでもジンジャーエールで思い出す、甘くて、シュワッとする思い出。

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