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地方で、回復を目指すということ。依存症の地域格差について

こんにちは。性依存症当事者のShiroです。

突然ですが、私は北海道の田舎の街に住んでいます。

性依存症に関する相談をいただくことが多々ある中で、私自身「お近くの自助グループを探してみてください」と案内することが多いのですが、私の街には、自助グループはほとんどありません。

自助グループやAAなどで検索をかけても、「これはいつの情報?」というぐらい、更新されていない不確かな情報がヒットする程度。当然ながら、性依存症の自助グループはありません。

地方から自助グループにつながる「ハンデ」

「札幌に行けば自助グループ、あるでしょ?」

というお言葉もよく頂戴いたします。もちろん、札幌は大きな都市で、様々な自助グループが数多く存在しています。

しかし、私が札幌に行くには、高速バスで5時間弱かかります。
これを東京からの距離で考えると、東京-仙台間の高速バスの所要時間が5時間~5時間半です。つまり、同じ都道府県の圏内といっても、東京から東北まで移動するぐらいの労力がかかるのです。

「中には回復のために何時間もかけて毎週ミーティング通う人もいますし、そういう人は回復していますよ」という言葉をいただくこともありますが、いつでも自助グループに通える方から言われるその一言は、「地方在住者は回復のためにはハンデを負うのは当たり前」と言われているのと同じなのです。

「どうして性依存症を自覚していて、ご自身で制御もできないのに、支援施設や医療機関につながらないのですか?」という言葉も、何度もいただきました。電車を乗り継げば、回復支援施設や専門の医療機関に日帰りできる環境にいれば、そう考えるのが自然でしょう。

でも現実問題、三人の子供を預けて回復施設に通ったり、入所したりするほどのキャパシティはないのです。それを、「本気で回復したいなら、なりふり構わず繋がればいいのに」と片付けられてしまうことに、些細なことながら怒りを感じてしまう私がいます。

「回復したいと願う心さえあれば、回復の道は開ける?」

残念ながら、簡単に首を縦には触れないのが現状であると私は考えています。今の私を支えてくれているのはオンラインミーティングの存在があったおかげなのですが、このオンラインミーティングでさえも、利用できる環境にない人は存在するのです。家にプライベートスペースがなく、分かち合いができない仲間は少なくありません。私自身、ミーティングの間子供を預けることができない時は、匿名性を確保することが困難であることから、ミーティングを見送ることもたくさんあります。

いつでもミーティングに参加できること。少し足を伸ばせば、適切な支援が受けられる環境にあること。その環境に身を置いていると何も感じないかもしれませんが、それだけで途方もなく価値があるものなのです。

これが地方在住者からみた、依存症治療の地域格差です。

私個人としては、オンライン上のピアサポートや、当事者による発信活動が、こうした地域格差を少しでも埋めてくれるのではないかと考えています。こんな田舎から性依存症に関する発信を続けるのも、私なりの格差問題に対する一つのアプローチです。

身近に回復のチャンスがあるならば、ぜひともつかんでほしいし、チャンスがなくても、どうか諦めないでほしい。一緒に回復の手段がないかどうか、考えることぐらいしか私にはできませんが、それでも、何もしないであきらめるよりはずっと回復に近づくはずです。

回復したいという思いを、無駄にしない社会になりますように。



性依存症当事者の目線から、性依存症の専門書を翻訳した情報や、当事者として感じたことを中心に発信しております。 おもしろいな、もっと読みたいなと感じていただけたら サポートをしていただけると嬉しいです。