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NPBで4割打者は誕生するのか①

私はずっと不思議に思っていた。

なぜNPBおいて、4割打者が生まれないのか。だってそうではないだろうか?シーズン途中までは4割をキープしていたのに、気がついたら.350とかに落ち着いてしまう。なぜ打率4割がこれほどにも遠く、近年では大きく近づく者も生まれないのか。

陸上競技や競泳などは他者を介さない、いわば己の能力次第で成績が決まる。もちろん間接的な影響は受けるが。

その反対に野球は他者との相互作用で成績が決まる。なにか長年日本の陸上界が越えられなかった100メートル9秒台のように、見えない壁にずっと阻まれ続けているのがNPBでの打率4割なのである。

ひと昔前ならMLB、近年なら台湾リーグなどで4割打者は生まれている。

と、ここまで前置きはしておいてはなんだが、実は規定打席到達時に、打率4割をクリアしていた選手は過去に1人だけいたのだ。

以下引用

2リーグ制となった1950年以降で、シーズンの規定打席到達時に打率4割をマークしたのは1989年のW.クロマティ(巨人)選手しかいません。規定打席403(130試合制)に到達した8月20日終了時に96試合404打席349打数140安打、打率.401。(8月24日対ヤクルト20回戦(神宮)の第3打席まで、シーズン411打席で打率4割をマーク)ここで残りの試合を欠場すれば「4割打者」だったのですが、チームが優勝を争っていたこともあり、当然のごとくそのまま試合に出場し続けて、最終的には打率.378で首位打者となりました。

しかし、最終打率は.378。当然これほどの高打率を残す選手は主力選手であり、ある程度シーズン終盤まで試合に出ないといけない。そして試合を重ねていくとやはり打率4割から遠ざかる。この偉業を達成するのには何が必要なのか。2回の記事に分け、色々なデータをみて、主観も織り交ぜつつ考えていきたい。

今回は、高打率を残した72人の選手たちのその年の成績をピックアップして、様々な傾向を見ていきたいと思う。

なお、今回は戦前の記録は外してある。理由は試合数が極端に少ない為である。そして、もう一つ注意して欲しいのは、プロ野球全体の傾向ではなく、あくまで一流の選手の傾向をみていくということだ。

まずは集計した結果を搭載する

最高打率順



三振率順


四死球率順


本塁打率順  


インプレー安打順「解説は後ほど」


それぞれの平均、標準偏差、共分散、相関


 


*打率とC5の相関のC5は、最高打率と平均打率の差のことであり、あまり気にしなくてよい。

インプレー安打率とは

フェアゾーンとんだ打球がどれくらいの割合で安打になったかを指す
計算式は
【安打数ーホームラン数/打席ー(三振数+ホームラン数+四死球数+犠打)】×100

なお、インプレー安打率について注意点が3つあるある。

・まず、ホームランが極端に多いとこの指標は低くなりがちなところである。今回のサンプルのなかで1番インプレー安打率が低かったのは、王貞治選手であった。1973年に打率.355を達成したときのインプレー安打率は、29.71%で今回のサンプルの中で1番低い。なお、本塁打率は9.11%と落合博満選手の9.58%に次いで2番目であった。9%を超えたのはこの二人だけであるのでかなり異次元である。
*平均ホームラン率が4%、標準偏差が2.24%である。
ホームラン率とインプレー安打率の相関は-0.48である。

・次に考慮しないといけないのは、三振率が高いとインプレー安打率が高くなりやすいということである。
インプレー安打率のトップ2人は2020年に打率.340近藤選手と2015年に打率.363を記録した柳田選手である。それぞれ、40.47%と40.22%である。しかしそれぞれ三振率も高いのである。近藤選手が15.42%であり、柳田選手が16.69%だ。

平均三振率は、9.24%で標準偏差は3.56%である。三振率とインプレー安打率の相関は0.53である。

・そして最後に、インプレー安打率が打率と大きく相関があるわけではないということである
その相関は0.25であり、かなり弱い相関である。

インプレー安打率だけではなく、打率とほかの指標の相関をとってみても、大体は±0.2前後である。一つの指標で打率が決まるわけではないため、複雑なのである。

打率の年度間相関を見てみても、0.33である。本塁打率やISOの年度間相関が0.8前後であるのと比べると安定しない指標である。

今回は三振、四死球、ホームラン率、インプレー安打率を見てきた。高打率で内野安打のイメージが強いイチロー選手でもインプレー安打率が40%に届かなかったことを考えると、フェアゾーンに飛んだ打球がヒットになる確率は、高くても40%を少し上回るくらいなのではないかと感じてしまうものだ。

ちなみにイチロー選手が打率387を記録した年に、もし5本内野安打が多かったなら、打率4割クリアし、インプレー安打率は41.36%になっていた。

次回は高打率サンプル群の中でも特に優れた成績の打者をピックアップして傾向をみていきたい。

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