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攻殻機動隊『笑い男事件』に出てくる英文を見つめて、解釈してみる。

これを読んでくださってる人たちは、攻殻機動隊シリーズをご存知でしょうか?

1989年に講談社から出たSF漫画が原作の、Production I. G. というアニメーション会社が制作を手掛けたアニメシリーズです。
時世としてはドイツのベルリンの壁が崩壊して西と東がゴタゴタしたという時期(当時のシュタージたちは、この作品を見たとしたら、何を思うだろうか)。
観測天文では冥王星がその公転周期の中で、最も地球に近づいた年(正確には、冥王星と地球の距離は1989年9月が最も近くなり、それからは年々遠ざかっている)。
そんな時世柄で世紀末感があったからか、SFにしてはインフレな雰囲気でなく、むしろデフレ感がある作品です。

その中に笑い男事件という、企業テロが起こるお話があります。作中で、次々と起こるハッキング事件、模倣犯的な、私が笑い男だよ〜って騒ぐような人も現れたりてんやわんや。それらの、最初の事件が2023年の2月3日に起こるということでnote開いて、それに因んだトピックを書いてみようと思いました。
この笑い男のお話、見ているとなんとなく、(真相はこうじゃないかな…?)という伏線が至る所に散りばめられているので、ミステリー要素をはらんだ事件です。台詞回しは洋画の言い回しがたくさん出てくるので、スゴい映画を見ている気分にさせられます。最近の流行りに見られる"頭の中の文章"が出てくることはないんですね。

"笑い男"は作中に出てくる企業テロリストの呼称で、
中でもサリンジャー『ライ麦畑でつかまえて』という実在する作品から引用されるセリフ、しかも、笑い男(模倣でなく、最初の事件を起こした本物の)自身が少し書き加えるセリフがあるんです。その部分に僕はめちゃくちゃ感動したよ、という話をしたいと思います。その英文を少しのぞいてみます👀

ライ麦畑でつかまえて、を一言で説明すると…
この作品は、決められた道からドロップアウトの世界へ片足を突っ込んでいる若者のお話です。それを踏まえて以下のセリフ☆を見つめます👀

☆I thought what I’d do was, I’d pretend I was one of those deaf-mutes or should I ?
(訳: 僕は耳と目を閉じ、口をつぐんだ人間になろうと考えた。そうならざるべきか?)

英文がちょっと難しいかもしれないですね。省略された単語を付け足すと(省略された単語には⚫︎をつけた)
i thought what i'd do was, ⚫︎that i'd pretend ⚫︎that I was one of those deaf-mutes or should I?
となり
I thought
私は〜という考えに至った
what以下
私がするべきことは、私が聴覚障害者の1人のふりをすること。
が一つの文になって
僕は耳と目を閉じ、口をつぐんだ人間になろうと考えた。
という訳になります

そして笑い男が書き加えるOr should I?
ならざるべきか?
と訳された部分。

〜Shouldが表す気持ち〜
答えから言うと、Shouldというのは何かしらの目的地や正しさに対して疑問を抱いている感覚がある、ということですね。shouldはその"疑念の気持ち"を表しています
試しにshouldを辞書で引いてみると(Oxford Dictionary)
1. used to show what is right, appropriate, etc., especially when criticizing somebody’s actions
2. used to say that something is the best thing or the right thing to do

とあります。つまりShouldとは、
(何が正しい? 何が適切で、どうするのが最も最善手なんだ)
という本音を選びきれない疑念の気持ち(=今思っている方向の逆が正解だったりするんじゃないだろうか=ならざるべきか、という訳)がありありと表現されています。
だから、作中で捜査官は直感できるんですね。これは本物の笑い男だ、と。

〜shouldの疑念の気持ちを踏まえて英文を見つめる〜
☆I thought what I’d do was, I’d pretend I was one of those deaf-mutes or should I ?
僕は耳と目を閉じ、口をつぐんだ人間になろうと考えた。そうならざるべきか?

or should i?これがあるだけで、ライ麦畑でつかまえて、とは全く異なった世界の見え方が立ち上がるんですね。これはオマージュであるといえると思います。今、さまざまなところで沢山のパクリ疑惑だとか改変がどうとかが騒がれすぎている気がしてます。
話が逸れました。僕はただただこのオマージュに感動したという話でした。

皆さんは感動するような詩や作品はありますか?

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