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埼玉西武ライオンズ2022ドラフトのしおり

まえがき

2022年、埼玉西武ライオンズは勝率.514(72-68-3)の3位という成績で終了した。
前年最下位から貯金を作りCS進出を果たしたが、その1stステージでは福岡ソフトバンクホークスに圧倒的地力の差を見せつけられ2連敗。
6年指揮を執った辻監督が勇退し、新体制となるライオンズ。
新しい時代を創るため、どんな選手をドラフトするのか。
ライオンズファンの筆者による、どのドラフト記事よりもライオンズ目線で、どの媒体よりもライオンズファンがドラフト会議を楽しめるようになる記事を――。


1.戦力構成から見る

■山賊打線の終焉、投手王国の復権

18年、19年リーグ連覇を果たした圧倒的破壊力の山賊打線は、完全に鳴りを潜めた。
チーム打率.22912球団中最下位、唯一の2割2分台という苦渋をなめる結果に。平均得点3.24も日本ハムと並んでリーグ最下位だ。
チーム盗塁60リーグ最下位で、連覇した時から半減してしまった(18年132、19年134)。
打つこともできず、出塁してもプレッシャーをかけることもできない。相手投手にとって優しいヘルパー打線になってしまった。

一方の投手陣は、リーグトップチーム防御率2.75を記録。
リーグ最下位のチーム防御率で連覇した時とは見違える成績を収めた(18年4.24、19年4.35)。
序盤は鉄壁のリリーフ陣が支え、中盤以降は先発投手の頑張りもあって、少ない得点を守り切りながら勝ち星を積み上げることができた。
かねてから渡辺GMが投手王国を作りたいと話している通り、投手中心のドラフトで根気よく育成を行った成果が一つ出たと言えるだろう。

序盤のリリーフ陣は本当に異次元だった。

今季の結果を踏まえ、ドラフトでどのようなポジションを補強していくのか。ポジション別に考察していく。
ライオンズの支配下登録選手は下図のようになっている。

2022/10/17時点

 ▢投手 -Pitcher-

内海十亀武隈と3人のベテランが現役引退。
投手力で躍進したものの、そもそもの投手人数が少ない。
各チーム戦力外の発表がまだ残っている可能性もあり変動することもあるが、パリーグだけで見ても最小人数である。

まず、先発の駒は増やせるに越したことはない。
高橋光松本今井の3本柱は計算が立つ。
初めてローテーションに定着し10勝を上げた與座、新外国人のエンスを残留させることができれば5人は確保できる。
先発中継ぎでフル回転する平井、1勝10敗と苦しんだものの片鱗は見せた隅田。さらに佐藤隼も控える。
今季は渡邉勇が不振に終わったものの、内海の一番弟子として来季は再び1軍の先発争いに加わりたい。
ここまで名前を上げた投手以外に1軍で先発ができそうな投手がいないのも事実。

リリーフ即戦力を加え、厚みを持たせる必要がある。
序盤は鉄壁だった水上平良増田も夏場以降は打ち込まれる試合も。
平良は2年連続で60試合以上登板し、水上も初めて60試合以上登板を経験。
ベテランの増田も50試合登板を超えており、来季同じように投げられるのかは不透明で、勝ちパのセカンドユニットが重要になってくる。
その候補となるのは今季リリーフで覚醒した本田圭佑、怪我から復活の森脇に若い助っ人のボー・タカハシだ。また、途中からリリーフに回り力強いボールを投げていたスミスも、残留するのであればセットアッパー候補として考えたい。
左腕では佐々木が火消し役を担い、終盤は公文が仕事人ぶりを見せた。
一方で宮川は不安定な投球内容が目立ち、最後まで変わらなかったこともあり、来季への不安を残した。
田村佐野に殆ど出番が回ってこなかったことが勿体ないレベルで、現役ドラフトの候補になる可能性もありそう。

 ▢捕手 -Catcher-

正捕手として欠かせなくなったFA行使検討中
退団となれば、柘植古賀が正捕手を争うことになる。支配下登録された中熊も持ち前の打力でアピールできれば、1軍争いに入ってきそうだ。
牧野が怪我により育成再契約見込みであることから、22歳以下の捕手が少ない。
時間が掛かるポジションということも踏まえ、高校生捕手で良い選手がいれば欲しいところだ。
すぐに1軍で使う可能性まで考えるなら、昨年の古賀に続き大学生の即戦力捕手獲得があってもおかしくない。
ただし25歳以上世代の獲得はないと見る。柘植・中熊らと被る上、下の世代が薄くなってしまうため。

ベテラン岡田がいるが、7月に左ひざ手術をし実践復帰まで3か月と来季もどの程度プレーできるかわからない。
他に経験豊富な選手がいないことから、森が移籍するのであれば、他球団から自由契約になった捕手もしくはトレードを行う可能性もありそうだ。

 ▢内野手 -Infielder-

外崎FA権取得。来年は山川源田もFA権を取得見込みだ。
外崎が移籍した場合の二塁手はが濃厚か。打率は物足りないが、選球眼の良さは素晴らしく、栗山のような見送り方を見せることも。数字以上に活躍している印象が残る選手で、来季も期待できる。
山田遥は序盤、勝負強いところ見せることもあったが安定した成績は残せず。上積みはほぼないと考えられるので、控え野手の域を出られない。
おかわりさん中村が88試合出場と未だに頼っている状況であり、三塁手の後継者といえる存在はいない。
平沼が終盤、渋い活躍を見せた。ユーティリティとして来季も活躍を期待できるようになったことは嬉しい要素。

育成ルーキーの滝澤は予想以上のスピードで出世したが、来季戦力として計算するのはまだ時期尚早。
長谷川は平石打撃コーチ(来季はヘッド格濃厚)が期待している有望株。
2軍でも順調に成長しており、来季は1軍での出番が増えることが見込める。
足の速さだけでなく、走塁センスも高いところを見せており、個人的にはかなり戦力として期待している。
ただし本職外野ということもあり、内野として出るのかはわからない。

ただでさえ全体的に攻撃力低下しており、次代を担う打力ある選手を獲得が優先事項。
加えて、二遊間も獲得していかなければならない。

 ▢外野手 -Outfielder-

栗山は89試合に出場し打率.264を残すなど健在ぶりを見せた。
とはいえ基本的に指名打者としての出場で、ほぼ守備に就くことはない。
また、後継者も不在で中村同様に依存度が高くなってしまっている。

期待された鈴木将は開幕直後の大不振で2軍落ち。時間をかけてやり直し、再昇格後はしっかりと1軍で結果を残した。来季戦力としての見込みが立ったことは最低限の収穫。
愛斗は2年連続して一定の結果を残し、外野の戦力として考えることができる。しかし安定感に欠けるため、絶対的なレギュラー定着とまでは至っていない。
金子侑は怪我による離脱があったものの、復帰後は守備も含めて活躍を見せた。来年は武器の盗塁をもう一度、増やすことができるかどうか。なんだかんだで最も外野レギュラーに近い存在だ。
川越は金子や鈴木不在の時、1番やセンターなどで頑張ってくれた。レギュラーというよりは調子の良い時に要所で使われるタイプだろう。
若林は昨年の大怪我から復帰。2軍でのプレーは怪我の影響は殆ど問題ないかのように見えたが、1軍復帰後はまだ本来の若林ではないように見える。来季は本来の状態を取り戻し、外野のレギュラー争いに入ってこれるか。
助っ人のオグレディは序盤こそ活躍を見せたが、徐々に失速。スタメン機会も減り、終わって見れば打率.213で15本塁打という結果に。来季去就はなんともいえないが、チームにも馴染んでおりもう1年見てみたい気もするが果たして…。

1軍戦力となる選手はいるものの、確固たるレギュラーが1人もいないという状態。
22歳以下の世代が少なくなってきており、高校生大学生世代の外野手獲得は目指したい。
また世代を問わず、レギュラー争いを活性化できる選手が欲しい。
何より、”ポスト栗山„は今年も懸案事項だ。

10/17、ベテラン熊代の戦力外通告そして引退が発表された。
外野内野捕手となんでもできるムードメーカーが遂に。
主力野手の高齢化も進んでおり、世代交代を推し進めるドラフトになるか。


2.ファームの育成状況から見る

 ▢ファーム投手-Farm Pitcher-

先発は渡邉勇浜屋赤上出井(育成)豆田(育成)ヘレラ(育成)あたりが中心になってくる。
渡邉勇に関しては1軍争いを期待したいが、他の投手はまだまだ育成段階。
浜屋は驚くほど良さがなくなってしまっており、完全に左で投げるだけの投手と化していることが気になる。個人的には浜屋の良さを出すならリリーフが良いと感じる。
出井は相当期待されているのか、先発で長いイニングを投げ切らせることが多い。球数140球超えても完投させるなど、馬力のあるタフな投手。ボール自体も低めに決まった時の変化球は目を見張るものがある。しかしあまりに再現性が低い。そこを改善できれば支配下も見えてくるが…。戦力外通告で公示されたが、育成再契約見込みとの報道なので、4年目の来季は本当に最後の勝負の年となる。
豆田や支配下登録された赤上などは順調に育成が進んでいる。赤上は先発かリリーフかまだ定まっていない印象だが、来年はまず2軍でポジションを確立して結果を残したい。
羽田黒田も、来年は2軍のローテーションに入りたい。
リリーフについては井上松岡大曲らがまだまだ成長過程。

基本的に2軍は安定して先発ローテで回る投手が少ない。
そもそも西武の育成方法が、先発も短いイニングから使うことが多いので、仕方ないのだが。
とはいえ、出井が異様に長いイニング投げることが目立ったのは、投手の絶対数が少ないことも影響しているかもしれない。
育成枠も含めて、2軍で育てていく投手は獲得したい。

 ▢ファーム捕手-Farm Catcher-

中熊齊藤誠の2人が中心。2人とも1軍の3番手として呼ばれることもあるため、次世代の育成を推進したい捕手はルーキーの古市(育成)だ。今季15試合に止まったが来季は2軍の正捕手を争いたい。打率.179とやはり打撃が課題だ。

牧野が怪我で育成再契約見込み、岡田も怪我との闘いになりそう。
の動向に関わらず2軍のこの状況を見ても、捕手は絶対に獲得が必要になってくる。

 ▢ファーム内野手-Farm Infielder-

山村が打率.297とルーキーイヤーの.217から成長。しかし本塁打0は寂しい。
来季は2軍で3割、OPS.800以上を求めたい。ポジションも二遊間を中心に守っているが、最終的には一塁に落ち着く可能性も。
遊撃より二塁守備の方が動きが軽快で、伸びるのは二塁だろうと感じる。

渡部は打率.184と苦しんだ1年になった。ルーキーイヤーの昨年は2軍で19本塁打を放ちパワーは十分見せている。今年もなんとか10本に乗せたが、あまりに寂しい数字。来季は1年目の数字を超えることを目指して、ステップアップしてほしい。

ブランドンは怪我もあり19試合の出場に止まった。それでも打率.345、OPS.992を記録しその片鱗は見せつけた。来季は2軍でレギュラーとして結果を残すことは勿論、1軍でのチャンスも十分に考えられる選手だ。1軍の三塁手は実質空席。1軍首脳陣が代わることも追い風となるか。

追い風という意味では川野にとっても来季は最大のチャンスとなる1年だ。
スイッチヒッターの遊撃手ということで、松井稼頭央2軍監督時代にかなり期待をかけられていた選手。ここまで2軍で派手な数字が残せていないものの、4年目の来季は飛躍の年としたい。

既に1軍戦力にもなっている山野辺は、1軍でのチャンスが少なくもどかしい。2軍ではしっかり結果を出しており、1軍実績もあることから現役ドラフトの筆頭になるかもしれない。

その他の野手たちもまだまだ2軍で研鑽を積む段階だろう。
現状試合に出していきたい若手選手がいることから、さらに先を見据えて高校生内野手の獲得を目指したい。

 ▢ファーム外野手-Farm Outfielder-

高木渉が順調な成長曲線を描いている。
打率.274ながら15本塁打でイースタン本塁打王獲得。OPS.879を記録。
嶋コーチが1軍打撃コーチ濃厚ということもあり、来季かなりチャンスをもらえるはずの選手だと思われる。育成出身の野手として覚醒なるか。

西川は今季1軍で35試合30打席のチャンスを貰ったものの、無安打無出塁という結果に終わった。昨季も27打席無安打と2年連続打率.000という結果に。2軍では打率.273でOPS.845と打っているだけに、1軍での結果がなんとしてでも欲しい。来季は高木などにチャンスが多くなると想像されるので、崖っぷちだ。

仲三河コドラド(育成)らはまだ時間をかけて育成することになりそう。
特に仲三河は、本塁打こそ9本とパワーを発揮したが、打率.188と確実性に欠ける。なんとかアベレージをあげて、2軍で主軸の座を掴みたい。

飽和状態だった外野手も多くが20代中盤になってくる。
22歳以下の世代が空白になりつつあるため、2軍で育てる外野手を獲得し層を厚くすることは必要になってきそうだ。


3.ドラフト指名戦略

■補強ポイント

ライオンズは蛭間拓哉外野手(早大)の1位指名明言している。
1位は固定として3パターンに分けて検討する。

現段階で戦力外(育成再契約含む)と引退が発表されたのは5選手
ドラフト結果によって追加の発表も考えられるが、ベースはドラフト本指名5人~となる。

【1軍目線】
 1. 内外野問わず攻撃力ある野手(打力・走塁)
 2. 即戦力リリーフ
 3. 森流出を念頭にした準即戦力の捕手(柘植、古賀に続く3番手)
【2軍目線】
 1. 高校~大学生捕手
 2. 実戦で投げられる投手、将来の先発候補
 3. 次世代の内野手、右打ちの外野手

これらを踏まえて、パターン別の例を5位まで挙げてみる。
次回投稿で育成ドラフトも含めた指名候補選手の紹介を行う予定なので、よろしければそちらもどうぞ。

Ⅰ.とにかく攻撃強化!野手重視型

1位 蛭間 拓哉  外野手 早稲田大学
2位 内藤 鵬   内野手 日本航空石川高校
3位 村松 開人  内野手 明治大学
4位 林 優樹   投手  西濃運輸
5位 山浅 龍之介 捕手  聖光学院高校

Ⅱ.センターライン重視!バランス型

1位 蛭間 拓哉  外野手 早稲田大学
2位 野口 泰司  捕手  名城大学
3位 金田 優太  内野手 浦和学院高校
4位 吉野 光樹  投手  トヨタ自動車
5位 齋藤 響介  投手  盛岡中央高校

Ⅲ.投手王国強化!投手重視型

1位 蛭間 拓哉  外野手 早稲田大学
2位 山田 陽翔  投手  近江高校
3位 吉田 賢吾  捕手  桐蔭横浜大学
4位 林 優樹   投手  西濃運輸
5位 青山 美夏人 投手  亜細亜大学

いずれのパターンも候補選手は他にもいるが、一例として名前を挙げてみた。
林や吉野を2位で指名するのもありではと思うところ、吉田は3位指名の順番が横浜の後になることから残ってないのではと思うところ、青山はこんな下位に残るのかなど、考え出すと切りがない。

チームの編成状況と戦力状況から、どのポジションの選手、どのようなタイプの選手が選ばれる可能性があるのか、想像しながらドラフト当日を楽しみにしたい。

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