考えさせられるVRドラマ『Kristine Is Not Well』:XR映画ガイド第15回
今回紹介するのはBeyond the Frame Festival 2023でノミネートした作品『Kristine is Not Well』です。この作品は発表されて以降、様々な映画祭に取り上げられ多くの議論を呼んでいます。一見、近い将来開発されそうな楽しいVRソーシャルメディアを擬似的に体験させる作品に見えます。実際、体験者は架空のソーシャルメディアプラットフォームOwletに接続され、トナカイが漫才のようなことをしながら語学を教えてくれるチャンネルや筋肉質の犬のキャラクターによるトレーニングチャンネルなど色々なチャンネルのコンテンツを体験します。しかし、この作品の伝えたいことはそこではありません。人気インフルエンサーのクリスティンが突然、失踪してしまい、少しづつ作品の雰囲気がサスペンス調に変わっていき、その真実について様々な憶測が飛び交う中、プラットフォームの監視システムによって不用意な発言が次々と削除されていきます。クリスティンが失踪してしまった原因は何なのか、最後まで目が話せない内容になっています。
見所:考えさせられるVRドラマ
この作品のストーリーは、ディレクターSeeyam氏が日常で感じていることを元に作られています。中国では徹底的なデジタルメディアの監視が行われています。アメリカの学校では電子書籍の共有をQRコードにすることで管理、監視が進んでいます。ロシアがウクライナに侵攻し、プーチンがウクライナ戦争への抗議デモを弾圧するとソーシャルメディアが抗議デモの代わりとなっています。Seeyam氏はこの作品を通して、人類がアルゴリズムに支配される中、自分の置かれている状況に反発する人たちの創造性を讃えたいとコメントしています。
作品データ