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1年前の出産で麻酔合併症になった話

今日は次男が1歳の誕生日。無事、元気に成長してくれたことに感謝しつつ、帝王切開での麻酔合併症を体験したことについてまとめてみようと思う。

①予定帝王切開のはずが。

長男が帝王切開での出産だったため、次男も帝王切開を勧められた。リスク説明の時も一度経験していたので、「はい、はーい」と終わらせていた。

②予定日が近くなったので、映画館へ

予定日が近づくと、現実味帯びてくる2人育児。二人育児は大変になるので、出産前に最後に半日くらい遊んでおこうということで、夫と映画を見に行った。夫も私もミーハーなので、流行りには乗りたいタイプ。

そして、大きなミスを犯してしまった。

たぶん、世の中の妊婦さんはお腹の中に優しい映画を選ぶところ。でも自分たちが楽しみたいことしか考えていなかった私たちが選んだのはコレ。

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あのゾンビ映画。「カメラを止めるな!」

チーーーーーーーーン

話題になっただけあって、とても、とても楽しい!!

が、しかし!!映画の中で聞こえる叫び声。
いつにない爆笑

・・・というか、笑いが止まらない。胎動も激しい。「びっくりしちゃったかなー」なんてお腹をサスサスしながら、それでも退場はしなかった。

その晩、お腹が張る回数がやや多かったので、風邪気味の長男(3歳)と早めに就寝。

③お産のカウントダウンスタート

AM1時半、トイレで目覚める。あれ?破水?と違和感。お腹もよく張るな~

AM3時 気づいたら、お腹が7分おきにはっていた。病院へ電話。タクシーで来てとのこと。

AM3:40 病院到着。破水ではないことを確認。お腹にモニターをつける。

AM4:45 医師より「もうお産が進んでいるので、朝には帝王切開しちゃいましょう」麻酔医が集まり次第、始めるとのこと。

お腹がはる=陣痛の始まりだった!

AM5:50 病室へ「手術が終わったらこの部屋にきますよ~」

AM6:00 歩いて、手術室へ

④とうとう始まった緊急帝王切開

手術なので、本当は家族に立ち会ってもらうのだが、長男発熱のため、立ち合い不可。そんなわけで、お腹のベビポンと私の二人で挑んだ。

予定よりも数日早い帝王切開になったけれど、ベビポンが生まれる日を選んでくれたと思うと、心強かった。

手術台に乗ると、「麻酔をするので、横向きに寝て背中を丸めて下さーい」と言われる。言われた通りにして注射。

麻酔医「冷たいの感じますか?」

私「感じます」

というやり取りを4,5回繰り返す。

やがて、お腹のところで先生がゴニョゴニョ。

産婦人科医「卵膜、破りまーす。今なんじー?」

看護士「6時40分でーす」

産婦人科医「もう頭でたよー」

看護士「おめでとうございます、元気な男の子です」

ベビポン「ほっぎゃーほっぎゃー」

という感動の瞬間。長男の鳴き声が「ギャーーーーーー」だったのに対して、次男は穏やかだった。これはその後の性格と共通しているからおもしろい。

そんな感じで、赤ちゃんをキレイにしたり、私のお腹を閉じたりして、無事手術が終わったようだった。

⑤のんびり過ごせた出産当日

背中の麻酔でお腹の痛みもあまり感じず、のんびり過ごす。2回目の出産なので、授乳も比較的スムーズに始まった。

⑥激痛が始まった産後1日目

この日に担当した助産師はスパルタおばちゃんだった。「なるべく歩け」「なるべく立て」「なるべくベッドを起こせ」とやかましく言うおばちゃんだった。

心配されなくても、落ち着きのない私である。

言われる前から、何度もベッドを起こしていた私は、ベッドを起こすと気持ち悪くなるのを繰り返していた。吐き気と貧血のような立ちくらみと痛みがあったけど、あちこち痛すぎて何が痛いのか分からなかった。

私「立ったり座ったりするとしんどいんです」

ス「それでも、まずは座ってみよう」

私「はい」

ス「ほら、座れたでしょ、次、立つわよ」

私「気持ち悪いです。休みます」

ス「あら、血圧測るわね。血圧計を持ってくるわ」

その時顔面蒼白だったらしく、血圧の上が70台だった。

ス「低血圧なのね、ちょっと休んでてね」

と言って、スパルタ助産師は出ていった。それでもその日の夕方

ス「麻酔、抜いてみない?麻酔が血圧を下げているかもしれないから」

私「痛みはどうやってコントロールするんですか?」

ス「内服でできるから大丈夫」

私「麻酔と同じくらい効くんですか?」

ス「効くわ」

私「じゃぁ、お願いします」

その後、医師とスパルタ助産師が来て、麻酔を抜く。

医師「血栓予防のためには、歩くのが一番ですからね」

***

その日の夜担当の看護士さんが挨拶に来てくれた時には、痛みがひどくなっていた。

助「こんばんは、担当します。よろしくお願いします」

私「あのー痛みがひどくて、座ることもできないんですけど」

助「そうですか。それでも一緒に立ちましょう。血栓予防で立たないといけませんから」

私「いえ、だから、座ることもできないくらい痛いんですよ」

助「私が助けますんで、がんばりましょう。みんな、がんばっていますから!!」

私(ガーン💦、、、私そんなにサボッっている認識なのか・・?)

助「立ってみましょう」

私「は、はい」と言って立つ⇒「無理です、頭痛い、倒れそう」

助「それでも血栓を予防するには、動くしかないんです」

私「そういわれても、本当に痛いし、しんどいんです。ベッドで30度起こすだけなら大丈夫だけど、45度超えると痛い、90度なんて無理無理」

助「それでも、血栓を予防するには・・・」

私「すみませんが、本当に無理です!!
座ると倒れそうなんです。
血栓予防が大事なのであれば、ベッドの上にいながら血栓を予防する方法が全くないか、医師から説明を聞きたいんですけど」

と、少し強硬に言ってしまった。
助産師はあからさまにムッとしていた。入院中に助産師を敵にまわすようなことは本当にしたくなかったけど、どうしようもない激痛だったので、背に腹はかえられない。

その後、医師二人と担当助産師が来た。
どうやらベッドの上でも血栓予防はできるらしく、座れ~立て~歩け~のひと悶着は落ち着いた。

この間、授乳はずっと続けてきたけど、ベッドを30度起こしたくらいでやっていた。
当然新生児室に行けず、助産師さんの手をたくさん借りていた。助産師さんには感謝の方が多いのだけど、私の症状をわかってもらえない孤独感は強かった。

この日は、私も希望で洗面を室内でしたけど、頭を高く上げると痛いので、頭を下げたまま洗面所まで移動し、なんとか洗面を済ませた。

洗面が終わる頃には、頭が割れそうな激痛に襲われて、ベッドに倒れるようにして横になった。

⑦髄液漏れという疑惑が生まれた産後2日目

午前中は、例のスパルタ助産師。
2回ほど立たされたけど、やはり立つと具合が悪くなる。
今度は血圧の上が120台と正常。

ス「調子はどうですか?立ってみましょう」

私「はい」「あ、無理です」

ス「血圧測ってみますね~うーん。血圧は120あるんだけどね~」

と言いながら部屋退出。

えっ!?目の前に気持ち悪くなっている患者を置いていくの!?
と思いつつも、変に目立ちたくない私はだんまり。ベッドで横になる。

看護士「食事です、え、具合悪いんですか?誰か呼びます?」

私「い、いいです」

というやりとりがあったくらいにして、助産師からは相変わらず「がんばれない井水さん」と思われていたんだろうか。
看護師とか助産師って、もっと目の前の人を助けたいナイチンゲールを想像していたよ。と、少し毒づいてみる。

息子の発熱が38度を超えインフルエンザ疑惑があったので、夫とも長男とも会えない私はストレスのピークに達していた。

その日の夕方も、

ス「調子はどうですか、立ってみましょうか」

私「はい・・・・無理です、倒れそう」

さすがに医師にもなにか伝わったのだろうか、ここにきてようやく医師の問診が入る。

医「どこが一番痛いですか?」

私「お腹も痛いですけど、立つ時に痛いのは頭です」

このころは、麻酔が完全に抜けて頭もクリアになっていた。それなのに立つ時だけ猛烈に痛かったのだ。

医「どんな時にいたいですか?」

私「ベッドでまっすぐ寝ている時は痛くないです。ベッドを45度上げると、1分後に痛くなります。60度だと10秒後くらい、90度だと数秒で痛くなります。

医「起立性頭痛ですね。もしかしたら麻酔の時に髄液漏れがあったかもしれません。」

私「ずいえきもれ?」

医「はい。背中の所に髄液というのがあって、上は頭の骨の周りまでいっています。普段は脳が髄液に支えられている状態なんです。今回、麻酔の時に髄液がもれてしまって、立つと髄液がもれるという状態になっているんだと思います。」

ナニーーーーーーーーーーーーー!!!これだけ人をサボリ扱いしておいて、麻酔の合併症だったのか!!!

それでも、原因がわかり、私のサボリではないと認められたことで、まずはストレスが1/10くらいになった気がする。

医「しばらくはベッド上安静ですね。
カフェインが効くので、自分でコーヒー買って飲んでみてください。」

私「授乳中なんですけど、大丈夫ですか?」

医「授乳婦でも1日1杯くらいなら大丈夫なので、飲んでみてください」

その時の私は、ひとまず自分がサボリじゃないとわかってもらえて、看護が良くなるかなーと思いきや、ある助産師には目も合わせてもらえない。
どうやら医師の意見を聞きたいと希望を出したのが、気に障ったようだ。

かわいそうなのがベビポンだ。
私は新生児室に行けないので、助産師に連れてきてもらうわけだけど、感じの悪い助産師に連れてこられて、かわいそうな世界である。
新生児室でもどんな扱いを受けているのか・・・等と考えると胸が張り裂けそうだった。

⑧症状が悪化する、産後3日目

この日は、頭痛・肩痛・患部の痛みの他に、耳鳴りがあった。1日3度の飯が何よりも好きな私に、食欲がなくなってしまった。

昨日話した産婦人科医と、麻酔科医が来た。
麻酔科医は、当日オペ室にいた人なので、術中の時の話も合う。
執刀医は海外出張に行ってしまったらしく、ようやくオペ室にいる人に会えて、なぜだかとても懐かしい気持ちになる。

麻「色々症状が出ていますけど、まぁ、髄液漏れは間違いないですね。カフェインの錠剤を出します」

私「昨日も缶コーヒー1杯飲んだんですが」

麻「全然、たりないですね。錠剤で出しますので、それ飲んでください。」

私「あ、はい。」

なんとまぁ、朝令暮改じゃないけど、医師によって言うことが全く違う。

理由を麻酔科医に聞いてみたところ、麻酔医以外のスタッフが麻酔時の合併症を経験する確率が低いため、医者でさえも経験がない人が多いらしい。

⑨ようやく10分座れるようになった産後4日目

今度は麻酔科医のチーフのような人が来た。
とても爽やかな同年代。初めて「麻酔のせいでごめんなさいね」と言われた。

麻「症状はどうですか?カフェインは効きました?」

私「良くなりました。今まで1分も座ってられなかったけど、10分くらいは座れるようになりました。」

麻「うーん。それはあんまりよくなってないですね~」

私「そっかー。ごはんも洗面もちゃんとできるようになったから、生活レベルは良くなったので、つい(笑)」

なんていう話をしつつ、髄液漏れについて詳しく聞いた。

麻酔ヒストリーをひも解くと、昔の手術で髄液漏れは当たり前だったらしい。今はテクノロジーが進化するとともに、麻酔の針が細くなり、それと共に髄液漏れも減ったようだ。

髄液漏れにも程度があり、
*2日程度ですぐに治る人
*カフェインで治る人
*それでも治らない人
などの程度がある。

私のように、それでも治らない人は、ブラッドパッチを行うらしい。
髄液に自己血をいれて、血の凝固作用を生かして、穴をふさぐらしい。

割合でいうと、

*髄液漏れになるのは手術の1/100以下。
*さらに数日で治らないのは1/100くらい。
*そこからブラッドパッチまで行うのは本当に稀。

私は1/10,000以下の確率の合併症に当たったというわけ。

なお、髄液漏れは、正直、麻酔医の腕にもかかわってくるとのこと。
話をした麻酔医は、何年も髄液漏れを起こしていないと言っていた。
ちなみに私の麻酔は早朝だったので、麻酔医は外からかけつけてくれたらしい。
おそらく若い修行中の身であったことは、容易に想像できる。

やはり、緊急のオペはこのようなリスクがあったのね。

髄液漏れをブラッドパッチで治療した場合、治るのが60~70%程度だという。
この数字は、慢性的な髄液漏れ患者も含むとのこと。
今回は急性症状なので、確率はもっと上がりますと言われた。
ただ今回も同じところに針を刺すため、再び髄液漏れを起こすリスクは0ではないとの説明だった。

明日、おそらく痛みが消えていないだろうから、ブラッドパッチ術を行いましょうと提案された。
この先生が自分で担当してくれるとのことだったし、予定では退院前日なので、ぜひとお願いした。

⑩再び手術室へ行った産後5日目

今回はベッドのまま手術室へ連れていかれる。意識はしっかりしているし、寝ていれば頭も痛くないので、普段は見ることができない手術室の景色を観察して楽しむ。

ブラッドパッチが始まった。

オペ室にいる医師は麻酔科。長老のような偉そうなおじいちゃん先生もいて、麻酔科総出で対応してくれたようだ。スタッフ同士の連携が非常に良いのを感じて、頼もしかった。

まず、右手に針を刺して、自己血をとる。輸血が必要になった時のルートにも使うからと、めっちゃ太い針を使用。痛かった。

色んな準備を終えた後、

「横を向いて、背中を丸くしてー」

とのこと。少し緊張するけど、今度の麻酔医はきっと大丈夫、と自分に言い聞かせて背中を出す。X線のモニターには、自己血を入っていくのが見える。医師が慎重に進めてくれているのが間近で見えた。

治療時間は10分程度。そして病室へ戻り、そのまま3時間位だったかな?ベッド上安静で過ごす。

病室へ麻酔医が来てくれた。

麻「そろそろですよねー。座ってみます?」

私「はい。あ、全然違う。これは大丈夫。立ってみようかな・・・立てる!!ありがとうございます!!」

というわけで、髄液漏れから解放された。

頭の中がクリアで、身の回りの世界が鮮やかな感じがした。


というわけで、話題の映画で産気付いた結果が、こんな体験になってしまった。

この世界に生まれてくる時からネタをこしらえるとは、将来が楽しみだぞ。

何はともあれ。

ベビポン、無事1歳になってくれて、ありがとう。

それだけで嬉しいんだっていう気持ち、忘れないようにするね。


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