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忍殺TRPGリプレイ小説【サルサ・テキーラ】

邦題:テキーラ・ソース(Salsa Tequila)

これは、ニンジャスレイヤーTRPGのオリジナルソロシナリオ、海中劣=サン作「ニンジャの飲み歩き」を元にしたリプレイ小説です。おおむね元シナリオの通りですので、ネタバレにご注意下さい。

ニンジャ総合目次

挑むのは、つの製ニンジャでもっとも酒を飲んでいそうな彼女です。去年の10月以来の出番ですね。今回は左に寄り過ぎた災難に巻き込まれます。時系列的には前回の冒険から数週間後、8月か9月頃だと思います。

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◆マーダーシュトロム(種別:ニンジャ)
カラテ       5    体力        7
ニューロン     7    精神力       7
ワザマエ      5    脚力        3
ジツ        3>4  万札       45>15
DKK       3    名声        8

◇装備や特記事項
●時間差、マルチターゲット
☆ミナヅキ・ジツ:カトン扱い、範囲内の液体を蒸発させる 機械には無効
★ミナヅキ・ジツ・マスタリー:精神力消費なしでジツを発動
▶戦闘用バイオサイバネ(片腕、毒手):ダメージ2、体力+1
◆トロ粉末:精神力2回復(使い捨て)
◆TNスーツ:体力+1
○堕落マッポ:シナリオ開始時に万札1を消費してトロ粉末を購入可

能力値合計:22>24 バイオサイバネ数:2 回避ダイス:7
前回の冒険で余暇4日を得たので、万札30を消費して修行の旅に出る。彼女のソウルのルーツたる地がどこなのかは不明だが、とりあえず出目は[6]で成功し、ジツ値が4に上昇した。つのバースのPCでは初の、修行によってジツが4以上になったニンジャである(ホワイトリキッドは潜在アーチ級)。いずれ修行の様子が語られるだろう。ミナヅキ・ジツの拡張データが特にないため、公式のカトン・ジツに倣って「マスタリー」をとり、精神力消費なしでジツを使用できる(消費すれば二連発)ことにする。3x3マスの中央にいる敵1体はD6ダメージを受け、さらに回避難易度HARDとなる。

大衆居酒屋「ここにする」

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ソウカイヤの女ニンジャ、マーダーシュトロム。彼女はネオサイタマの大衆居酒屋で、一人晩酌を行っていた。忙しい日々の疲れを癒やすため、たまにはこういう時間があってもいいだろう。なにしろ美女なので頻繁に酔客から絡まれるが、冷たい眼光とニンジャアトモスフィアで退けていく。

彼女に決まった相棒はおらず、所属するチームもない。スカウトしたライトウォッチャーは中国地方へ送られたし、ファイアシーフは研修中だ。強いて言えばディマカエルスか。しかし積極的に関わりたい相手でもない。彼にはモータルの相方がいるというし、自分もそうしてみるか……。

「オットット!」盃を傾けつつ物思いに耽る彼女の椅子に、酔客のひとりがよろけて軽くぶつかった。酒をこぼすことはないが、不愉快に思った彼女はそちらを睨む。「ア、ス、スミマセン」見ると男ではなく、アイマスクをつけた女だ。彼女のバストは平坦だった。そして。「……ニンジャか」

うまくニンジャアトモスフィアを抑え込んでいるが、同類の感覚はごまかせない。「ゴメンナサイ。ええと、あなたもニンジャ?ドーモ、私はブラインドです」女ニンジャはアイサツした。「ドーモ、マーダーシュトロムです」アイサツを返す。ブラインドはフラフラしながら隣の席に座った。

彼女は海中劣=サンのバースに登場する、無軌道で怠惰な女ニンジャです。オリジンはこの記事を参照下さい。つのバースにも存在していますが、彼女たちが関わった事件のうち、つのバースでリプレイしたものは体験していません。あるいは酒の力で別のバースに転移したのかもしれません。

バッカス=サンって知ってる?ニンジャなんだけど」「いや、知らんな」「お酒飲んでると会えるんだよ!でもブレードブレイカー君もチキンハート君も信じてくんなくて」「知らん」「そうだ!せっかくだし探すの手伝ってくれない!?一緒に飲もうよ!」ブラインドは一方的に話しかけ続ける。

既に相当酔っ払っているらしい。マーダーシュトロムは適当に相槌をうち、あしらう。酔っぱらいの戯言につきあってもおれないが、突っぱねて暴れても面倒だ。「私にビールをおごれ」「ヨロコンデー!」ブラインドは言われるままにビールを大ジョッキで注文する。このまま酔い潰してしまおう。

「やあオネエチャンたち、飲んでるなァ?俺にもお酌してくれよ!」ナムサン、酩酊サラリマンだ。マーダーシュトロムは睨みつけるが、薬物もやっているのか効果がない。ぶちのめすと後々面倒だ。ブラインドは酔っ払って役に立ちそうにない。となると……酒場の流儀でご退場願おう。

「私にお酌して欲しければ、飲み比べ勝負を受けて貰おうか。負けたらここの代金を払って貰おう。否とはいうまいな」マーダーシュトロムは堂々と宣言した。これを逃げれば男がすたる!「よ、よぉし!やったらぁ!」酩酊サラリマンは勝負を受けた!ニンジャとモータルのイクサが始まる!

ルール:先行後攻を決めた後、先攻側が何杯飲むか宣言する。これはカラテ+ニューロンの合計値までが上限となる。後攻が先攻より多く飲むと宣言した場合、先攻側はニューロン判定NORMALで成功した時に限り、飲む量を後攻と同じ数まで増やせる。そしてカラテ+ニューロンの合計値に等しい個数のダイスを用意し、宣言した杯数に等しい回数の「連続攻撃」を行うようにダイスを分割する。判定は難易度EASYで、出目6が出たらポイントが加算される。どちらかが判定に失敗したら終わりだ。詳しくは元シナリオを参照。精神力による消費自動成功は、今回は使用しない。

戦闘開始

酩酊サラリマンのカラテは2、ニューロン2。合計4。マーダーシュトロムは5+7=12で、彼の3倍飲むことが可能だ。

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「ヨロコンデー!ご注文の大です!」笑顔の店員が目の前に大ジョッキ入りのビールをドンと置いた。「先にどうぞ」「ありがてえ!今日も接待、明日も接待!こんなに飲まされて、飲まなきゃあやってられねえよ!」グッ、グッ、グッ……!酩酊サラリマンはいい飲みっぷりでジョッキを干す。

サラリマンは大ジョッキのビールを2杯飲む。[23][56]=成功。

さらにもう一杯を干した。「プハーッ!さあ、そっちの番だ!」「では、飲ませて貰おうか。私に大ジョッキを四杯頼む」「大ジョッキ四杯!ハイヨロコンデー!」店員が笑顔で復唱し、ギャラリーがざわつく。「四杯!?」

3D6を4つで難易度EASY。[126][145][135][146]=成功。

グッ、グッ、グッ……!マーダーシュトロムはなみなみと注がれた大ジョッキを、次々と飲み干していく!「フーッ……まだやるか」彼女は平然とした顔だ。頬を赤くしてすらいない。恐るべきニンジャ耐久力とニューロンの制御により、相当なアルコールを飲んでも酔い乱れることはないのだ。

そしてビールの水分は、彼女のミナヅキ・ジツによって乾かされてしまう。「ウップ……オミソレ・シマシタ!」サラリマンはハンズアップし、マーダーシュトロムとブラインドの分の勘定を支払って退散した。

戦闘終了

「さて、店を変えるか」マーダーシュトロムはブラインドを立ち上がらせ、外へ出た。「あー、いい店知ってるよ。サケ・ボムがうまいの」ブラインドが目を覚まし、笑う。「この調子でハシゴしてたら、バッカス=サンに会えるよォ!」彼女はマーダーシュトロムを引っ張り、夜の歓楽街を歩く。

◆◆◆

ガールズバー「透ーイル」

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「「ドーモ!ご注文のサケ・ボムです!」」前髪を伸ばして目を隠した豊満なユーレイゴスの女店員たちが、注文した品をテーブルに置き、二人の隣に座る。この店は注文したメニューの金額が高いほどより過激な服装を店員に着せることが出来るシステムだ。女二人で来てもいいものだろうか。

店員たちはビールのグラスの上に箸を乗せ、その更に上にサケの入ったオチョコを乗せた。「それじゃあ行くよ? サケ・サケ・サケボーム!」店員の掛け声に合わせてオチョコがビールに落ちる。ビールとサケがカクテルされる!「カンパイ!」「イエー!」「ワースゴーイ!」「イッキ!イッキ!」

二人はサケ・ボムをイッキした!テーブルは大盛り上がりだ!……だが、その時!「ザッケンナコラー!」「アイエエエ!」声のした方を振り向くと、酔漢が女性店員に絡んでいる!「マルゲリータピザはクーポン対象だからネコネコカワイイのコスチュームは駄目だと!?スッゾコラー!

これはいただけない。マーダーシュトロムは舌打ちし、騒ぐ男にツカツカと近づく。「他の客の迷惑だ。出ていって貰おうか」「アア?ナンダテメッコラー?……!」その時、両者は互いに理解した。目の前の相手はニンジャであると!迷惑男はアイサツした。「ドーモ、ハイパーボンバーです」

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イメジは「サンシタニンジャメーカー」で昔作ったやつの再利用です。

「ドーモ、マーダーシュトロムです」アイサツを返す。野良ニンジャか。大したカラテも感じないサンシタだ。ぶちのめしてもいいが……カラテの気分でもない。「飲み比べで勝負だ。負けたら我々の代金を支払って、この店を出ていけ」ハイパーボンバーは面食らった顔をした後、笑い出した。

「ガハハハハ!いいだろう!負けたら払ってやるよ!その代わり、テメエが負けたらネコネコカワイイのコスチューム着てお酌しろや!」「えーカワイイ!」「着せたーい!」「ガンバレ酔っぱらい!」店員に混じってブラインドまでハイパーボンバーを応援し始めた。一触即発アトモスフィア!

戦闘開始

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1ターン目

ハイパーボンバーはサケ・ボムを3杯注文した。「俺から先に飲ませて貰うぜ!」「どうぞ。だが3杯でいいのか?私は4杯飲むぞ」マーダーシュトロムは腕を組み、挑発する。「……なにィ?」

[134]=ニューロン判定成功、4杯とした。

苛ついたハイパーボンバーは「俺も4杯だ!」と叫んだ。慌てて店員が8杯のサケ・ボムを持ってくる。周囲の店員や客は興味深げに見守り、トトカルチョを始める者もいる。「じゃあ、行きますよ。サケ・サケ・サケボーム!」

ハイパーボンバーはカラテ3、ニューロン3のサンシタだ。[15][33][3][3]=成功。マーダーシュトロムは[124][564][113][135]=成功。引き分けだが、マーダーシュトロムに出目6がひとつある。飲みっぷりでは勝ちだ。

「プハァ!」「フーッ」二人は同時に4杯目を飲み干した。ハイパーボンバーはかなりふらついているが、マーダーシュトロムはまだ余裕がある。「どうした、辛そうだな。吐いて来るか?」「う、うるへぇッ!次だ!」

2ターン目

ハイパーボンバーは目をどろりと据わらせ、「今度は5杯だ!」と宣言。マーダーシュトロムも無理はせず5杯を頼む。「サケ・サケ・サケボーム!」

ハイパーボンバーは[24][5][1][1][4]=失敗!マーダーシュトロムは[132][255][33][23][55]=成功!

ブホッホォ!」ナムアミダブツ!ハイパーボンバーがサケ・ボムを飲みきれず噴き出した!「ゲボーッ!ゴッ!ゴホーッ!」むせ返るハイパーボンバーをよそに、マーダーシュトロムは次々とサケ・ボムを飲み干していく!勝負あり!「勝っちゃったァー!」「アーン残念!」店員が嘆く!

戦闘終了

「ゴ、ゴボボーッ!クッソー!覚えてろよ!」ハイパーボンバーは捨て台詞を残し、マルゲリータピザを一切れ頬張り、約束通り会計を済ませて店から出ていった。律儀なやつだ。「アリガトゴザイマス、お客様。これはホンのお礼で」店長が謝礼として万札数枚と店のクーポンを差し出してきた。

少し目立ちすぎたか。「エへへ!エへへへ!」ブラインドは笑って店員に甘えている。マーダーシュトロムは彼女を引きずって店を出た。流石に足元がフラフラする。「次だ」「エート確か、あいつに出会った時は……」

◆◆◆

メキシカンオスモウ・バー「サルサ・テキーラ」

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今までとは雰囲気の違う、静かな店だ。カウンターには丁寧に磨き上げられたグラスが大量に並んでおり、薄暗い店内の仄かな照明の中で星の海のように光り輝いている。マーダーシュトロムはぐにゃぐにゃになったブラインドを隣の席に座らせ、テキーラ・ベースのカクテルでカンパイする。

右目を飾り気の無いサイバネアイに置換した老スモトリ・マリアッチが、店の端の椅子に向かう。首元の蝶ネクタイを軽く直して椅子に座り、アンティーク・アコーディオンの演奏を始めた。歯切れのよい軽快な音の流れ。初めて聞く筈なのにどこかノスタルジイを感じさせる。ゼンの境地だ。

ふと、異様な気配に横を見る。酒瓶を抱えソンブレロを被った胡乱な中年男と目が合った。「アア!?何だよ!カネなら返さんぞ!」彼はだいぶ酔っぱらっているようだ。「おじさん、ナンデ帽子取らないの?」ブラインドが男の帽子に手をやる。「オイ!バカ!ヤメロ!どうでもいいだろうが!」

男は帽子に手をやって決して取れないようにした。「ムム!そう言われると気になってきた!」ブラインドは男の隙を伺う!「ヤメロ!絶対に取らせんぞ!カネも返さん!」……せっかくの雰囲気がぶち壊しである。ここでも、やるか。ため息と共に言う。「バーテンダー、グラスを用意してくれ」

「おお、飲み比べか?受けるぞ!カネは返さんがな!」ソンブレロ男はマーダーシュトロムの意図を察し、喜んで承諾した。彼からのカネは期待できないが、迷惑な酔漢を追い払えば謝礼ぐらいは出るだろう。手持ちの万札はあるし、出ずともよい。やるだけだ。一触即発アトモスフィア!

戦闘開始

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ソンブレロ男はカラテ2、ニューロン4の常人だが、「うわばみ」のスキルを持ち、判定難易度をマイナス1で飲むことができる。また今回は杯数勝負でなく、どちらかが判定に失敗するまで同数を飲む。互いに3杯ずつだ。強い蒸留酒であるため、判定難易度はマーダーシュトロムがNORMAL、ソンブレロ男がEASY。

それぞれのグラスに、強いテキーラが注がれる。「では、いくぞ」「おう」今までの相手よりは少し格上。しかし、所詮はモータルだ。慈悲はない!「「イヤーッ!」」

ソンブレロ男は2D6を3つで[15][46][35]=成功!マーダーシュトロムは4D6を3つで[1344][2446][1223]=失敗!ナムサン!

ンアーッ!」ゴウランガ!強烈なテキーラのアルコールがニューロンを揺さぶる!マーダーシュトロムが倒れた!勝負あり!「うぐッ……バカな……」「ムッハハハ!ワシの勝ちじゃな!」流石にこれまでの飲酒量が祟ったか。美しい顔が屈辱に歪む!だが……「ウイーッ……ヒック!」

ソンブレロ男はひっくり返り、酔い潰れて眠ってしまった。「グゴーッ!グゴーッ!」なんて苦しい戦いだったのだろうか。ぽん、と肩を叩かれる。見れば先程のアコーディオン奏者だ。「いい飲みっぷりでした。奢らせて下さい」そう言って万札を差し出し、ソンブレロ男を担いで立ち去った。

「……行くぞ」マーダーシュトロムもブラインドを担ぎ、店を出た。

◆◆◆

???

……店を出てしばらくすると、マーダーシュトロムの目の前がぐるぐると回転し始めた。ピンクのゴリラ、ピンクのタコ、ピンクのドラゴン、ピンクのイーグルがマンゲキョめいて回転し……その中央に、何かが映る。煮えたぎる混沌めいた顔面と、超自然のメンポ。それは……アイサツした。

「ドーモ、バッカスです」

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「ドーモ、マーダーシュトロムです」「……ドーモ、ブラインドです」二人も思わずアイサツを返した。ニンジャなのだ。ブラインドが言っていた、酩酊した時にだけ見えるニンジャ!それは実在したのだ!「SHHHHH……ニンジャだと?俺が見えるのか?」幽鬼は歪んだ声を発した。

「そこな小娘は先日も見た……なるほど。俺を捕えに来たか?」バッカスの顔面が揺らぐ。笑っているのだろうか。「俺は影。人の意識がふわりと浮かんだところを気紛れに掬い上げる夢と現の狭間の旅人よ。お前たちも我が掌に抱かれるがよい」奇妙なカラテを構えて、バッカスが迫ってくる!

「イック!エヘヘ!……ウップ!……フゴー……」ナムサン!ブラインドは肩の上で寝始めたではないか!マーダーシュトロムは彼女を投げ捨て、カラテを構える!

カラテ、ザゼン、連続側転のどれかを選び、1D6を振って出目5以上が出れば成功だ。ここはカラテだ!出目は……[1]!失敗!

だが……「オゴーッ!」こみ上げるものを抑えきれず、嘔吐したのだ!サルサめいた吐瀉物が路地裏に飛び散り、テキーラの強い臭いを漂わせた。「オゴーッ!グェッフ!ゴボーッ!」サケ・ボムが、ビールが、ツマミが、渾然一体となって吐き出される!なんたるブザマか!

この状況をソウカイヤの誰かに見られていたら、彼女はセプクも考えたかもしれぬ。しかし、サイオー・ホースではあった!「ヌゥーッ……」バッカスは口惜しそうな声を出し、完全に見えなくなった。嘔吐したことで酩酊状態が解かれたのだ。そして彼女への攻撃は中断された……。

「ゴボッ……!」マーダーシュトロムは吐瀉物をジツで乾かし、同じく吐瀉物の中で倒れ伏し、窒息死しそうになっていたブラインドを助け起こすと、彼女を背負って一目散に夜の街を駆けた。もう充分だ。もう充分だ。

エンディング

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……気が付くと、マーダーシュトロムは自宅アパートの床でうつ伏せに倒れていた。激しい頭痛を感じ、頭を押さえる。昨日の内に脳に蒔かれた痛みの種が萌芽し、激痛の花が満開に咲き乱れている。起き上がろうと体に力を籠めるが……足がもつれ叶わず、再び床に身を投げた。ニンジャでもだめだ。

あの後、どうしたのだったか。まず、どうにかしてブラインドと別れた気がする。ブラインドが横に居ないのだからそうだろう。次にどうにかして自宅に帰った気がする。今、ここに居るのだからそうだろう。財布はある。IRC端末もある。失ったものは……胃袋の内容物だ。腹が減った。喉が渇く。

「しばらく、酒はやめる……」呻きつつ冷蔵庫まで這いずって動き、苦労してミネラルウォーターを取り出し、渇いた喉を潤していく。なんという美味さだ。水とトーフがあればいい。……明け方の空にドクロめいた月は見えなかったが、きっと「インガオホー」と呆れた声で言っている事だろう。

【サルサ・テキーラ】終わり

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