忍殺TRPGリプレイ【レッツゴー・シー・ア・ニュー・ライト】01
ドーモ、三宅つのです。これはぺりかん=サンのAOSニチョームキャンペイグン第8話「モーレツ・スタンピード・サラリマン・ブルース」、および原作小説「アンダー・ザ・ブラック・サン」などをもとにして、つの次元のAoS世界で起きたことをリプレイ小説化したものです。ネタバレにご注意下さい。
ネオサイタマにおける中立地帯「ニチョーム」に集うニンジャたちを主人公とし、迫り来る敵を撃退するキャンペイグンの第8話なのですが、今回は大枠を借りて大幅に改変します。では、始めます。
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序
ネオサイタマ南東部、ヤマ山地。新たなドラゴン・ドージョーはその奥、ラマですら到達できぬ切り立った崖を越えた先にある。ニンジャか、それに相当する超人的な身体能力を持ったモータルにしか辿り着けない場所だ。
平安時代以前から、ヤマ山地は異界へ繋がる強力な霊場として畏れられている。日本語「ヤマ」は「山」そのものを指すとともに、ブディズムにおけるジゴクの支配者エンマ(ヤマ)の呼び名でもある。ドラゴン・ドージョーのあるじ、ドラゴン・ニンジャは、瞑想と探索の末にそれを思い起こした。
すなわち、ここは現世にありながらアノヨに、オヒガンに近い場所だ。8月中旬のオールド・オーボンから1ヶ月余りが経過し、時あたかも9月下旬、秋分の日……「秋のオヒガン」であった。ドラゴン・ニンジャは新たな弟子イエローフィストとともに、静かにドージョーでアグラ瞑想していた。
ドラゴン・ニンジャ……ユカノは何事かを察知し、北へと意識を向けた。魔都ネオサイタマの上空には常に重金属酸性雲が垂れ込め、その上には罪罰罪罰罪罰黒い渦罪罰罪罰がある。エーリアスはそう告げた。彼女……彼のようなコトダマ適性の高い者だけが、それを認識できる。罪罰罪罰罪罰罪罰
罪罰罪罰罪罰キョジツテンカンホー・ジツ。ロード罪罰罪罰が、ソガ・ニンジャが用いた、人々の認識を転換する恐るべきジツ。その残滓が今、ネオサイタマの上空に在る。罪罰罪罰キョート城罪罰罪罰を守るため。それは次第に弱まりつつある。この距離ならば、集中すれば振り払えるほどには。
ザイバツがネオサイタマ各地に仕込んだ、ジツを増幅する魔術的ビーコンを相当数破壊したためだ。ガイオンほどに歴史的景観が残されていない混沌の都ネオサイタマにおいては、ジツの効力は制限される。だがジツが弱まれば、また別の問題が生じる。キンカク・テンプルが再び接近しかねない。
あの後ユカノは仲間たちと調査や議論を重ね、再びキョート城に潜入する方法を模索した。弟子の一人バンブーエルフが城内におり、彼女を奪還せねばならないし、キョート城やキンカクが接近している現状は、現世に対して悪影響を及ぼしている。ニンジャソウルのディセンションも増えた。
ニンジャスレイヤーの力の源泉であるギンカクも、ジツの影響によるのか力を失っている。これらを解決するには、オヒガンと現世の狭間に浮かぶキョート城に赴いてジツの発散を抑え、キンカクごと彼方へ遠ざけたのち、現世へ帰還するしかない。可能なのか。やるしかない。方法は見つかった。
「「スゥーッ……ハァーッ……」」ユカノとイエローフィストは向かい合い、アグラ瞑想とチャドー呼吸を継続する。2人はこの地の霊脈に接続0101010
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???
010101ネオサイタマの東、オムラ本社要塞と物理的に癒着したソウカイヤ仮本部。IRCコトダマ空間で必死の電子防衛を行う電脳部門筆頭・ダイダロスとその部下ナウクラテーの前に、彼女は突然現れた。
『ドーモ、お久しぶり。YCNANです』
『ドーモ、ダイダロスです』『ナウクラテーです。アンタも火事場泥棒に来たってわけ?』ナウクラテーは気色ばむ。YCNAN……ナンシー・リーは電子肩をすくめた。『さあね。そっちは大変みたいね』『ええ、とても。残念ですが貴女とダンスをする余裕もありません。どうしたものでしょうねえ』
ダイダロスは電子防壁に穿たれた穴を即座に修復し、サイバー攻撃をKICKしつつ対話に入った。2人がかりなら倒せない相手ではないが、他の防衛が手薄になる。何か重要な話があるようだ。『オナタカミからの降伏勧告は受け取った?』『ええ、先ほどチバ=サンとヨルジ=サンから届きました』
ダイダロスは電子肩をすくめた。『やぶさかではありませんが、ならば攻撃をやめて欲しいですね』ナンシーは頷く。『あなたたちが戦っても降伏しても、オムラ本社要塞はオシマイ。そしてたぶん、ここにもハイデッカーたちのガサ入れが入る。ラオモトとの関係を掴むためにもね』『やれやれ』
『その前に、ここをオムラ本社要塞から切り離して』ナンシーは人差し指を上に向けた。『いつぞやのように上空へ脱出しろ、と。ニンジャスレイヤー=サンの仲間で、ソウカイヤの敵である貴女に言われると、罠を疑うところですが……』ダイダロスは状況判断する。『それしかなさそうですね』
ゴゴゴゴゴゴ……! ダイダロスのハッキングにより、ソウカイヤ仮本部は再び天守閣を載せた憤怒の形相の黄金鬼瓦ツェッペリン形態に変形していく!『貴女はオナタカミに思うところでも?』『情報を掴んだの。オナタカミは日本国政府や市役所・市議会と結託して、世界征服を企んでいるって』
ナンシーは電子情報を投げ渡した。『ついさっき国会と市議会で承認されたけど、彼らは「アマクダリ・セクト」という治安維持機関を設立したわ。オナタカミとハイデッカー、湾岸警備隊を中核として、ネオサイタマおよび日本国の統一と法的秩序を取り戻すとかどうとか』『迷惑な話ですね』
『正直、迷惑度合いじゃソウカイヤとかラオモト・カンと同程度だけど……オムラはともかく、ソウカイヤがこのままアマクダリに取り込まれるのは捨て置けないわ。強力過ぎて潰せなくなっちゃうから』『結局潰す気ですか』『共倒れして欲しいってところね。とにかく、今は味方になってあげる』
『でも、どこへ逃げれば……?』ナウクラテーは眉根を寄せる。『案内するわ』ナンシーはタフに笑い、上を指差す。黄金立方体を覆う黒い渦を。そしてもう一方の手は、下を指差していた。
◇◇◇
現在ネオサイタマと呼ばれる領域は、かつて「関東地方」と呼ばれた領域とおおむね重なる。その中央にカスミガセキ・ジグラット、かつての江戸城があり、マルノウチ・ギンカクがあり、上空にはキョート城とキンカクがある。その周囲には、ヤマ山地をはじめとするいくつかの霊地が存在する。
南西には霊峰フジサン。北西には諏訪湖。北には、徳川エドワード家康の霊廟。そして東には、オムラ・インダストリ本社要塞がある。極めて人工的な重工業地帯と化した99マイルズ・ベイに霊地とは奇妙だが、れっきとした謂れがある。オムラがここに本社要塞を築いたのも決して偶然ではない。
平安時代以前より、ここには雷神を祀るシュラインが存在した。オムラの紋章はまさに雷神をあらわす三つ巴紋である。彼らのルーツは平安時代末に織田信長に仕えた異端の鉄砲鍛冶集団「御村衆」とされるが、さらに古く遡る可能性も……これ以上歴史の闇に触れるのは危険ゆえ、避けるとしよう。
そしてこのシュラインには「要石」と呼ばれる霊石が存在する。地中のドラゴンを抑えて暴れるのを防ぎ、地震を鎮めているとされるが、つまり大地を流れる霊脈、地脈の要所の一つなのだ。徳川エドワード家康もザイバツ・シャドーギルドも、これを利用して結界を作り上げていた。
01010101010101……今、その要石に膨大なエテルの流れが注ぎ込まれつつある。北の日光東照宮から、西の諏訪湖とフジサンから、南のヤマ山地から、霊脈を介して。この5つの霊地を地図上で繋げば……関東地方を覆い江戸城を中心とする、五角形・五芒星形の巨大結界が形作られるのだ!
江戸には多数の結界の網が張り巡らされており、これはその一つをいびつになぞっただけかも知れぬ。しかしそれでも、これだけの有力な霊地を繋ぎ合わせるならば、そこにはコトダマ的な意味が生じる! 遥か宇宙空間からネオサイタマを見下ろすことができる者は見るがいい! 光輝く五芒星を!
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???
「スゥーッ……ハァーッ……!」ネオサイタマ中心部、マルノウチ・スゴイタカイビルの地下深く。そこに聳え立つオハカめいたギンカク・オベリスク。その前にアグラし、ニンジャスレイヤーはチャドー呼吸を行う。ギンカクと彼の間には、ドラゴン・ニンジャがキョート城から持ち帰った茶碗がある。
ヨウヘン・テンモク。黒い釉薬と炎の奇跡的な反応により、宇宙に輝く星(曜)めいた斑紋と、虹めいた虹彩を兼ね備える。パラゴンやドラゴン・ニンジャはこれを用いてキョート城を操縦した。チャドーの鍛錬や知識にまだ乏しいニンジャスレイヤーだが、この茶器とギンカクがそれを補う。
「スゥーッ……ハァーッ……!」キョート城の地下には、これと類似した銀色のオベリスクが生えており、ニンジャスレイヤーを、ナラク・ニンジャを、ギンカクに眠るモータルの怨念を吸い上げてエネルギー源とした。ならば、ここから逆にキョート城へとアクセスすることも可能だ!繋がりはある!
ズオオオオオ……! 五芒星魔法陣はネオサイタマ各地の霊地・霊脈を結びつけ、無数のモータルの怨念や想念を吸い寄せる! 東の要石に一度集められたそのエネルギーは、一連の紛争で流された血と怨念により増幅され、マルノウチ・ギンカクへと流れ込む!「フユコ……! トチノキ……!」
ニンジャスレイヤー、フジキド・ケンジは、亡き妻子の名を呼んだ。2人の霊魂はニルヴァーナにはおらず、ギンカクに降り、ナラク・ニンジャの薪となって彼のイクサを支えてきた。フジキドとともに、地獄の苦しみを受け続けながら。なんたる悲劇か。なんたる……!『……ググググググ……』
ギンカクから、おのれのニューロンの内から、邪悪な声が鳴り響く。ナラク・ニンジャが復活したのだ!『オハヨ!随分薪をくべてくれたな!よかろう!ソガ・ニンジャの残滓を焼き尽くし、ケイトー・ニンジャとサツガイ・ニンジャを殺し、キンカクのカツ・ワンソーをも殺してくれようぞ!』
「スゥーッ……ハァーッ……!」ニンジャスレイヤー、フジキド・ケンジは、血涙を流しながら深くチャドー呼吸を行い、古代の悪霊に、巨大なる憎悪に飲み込まれるのをこらえる。ナラクに完全に飲まれれば、彼はニンジャのみならずモータルをも躊躇なく殺す邪悪な殺戮者に堕ち、破滅するだろう。
『オヌシの妻子は死んだ。ニンジャが殺したのだ。オヌシ自身も死の淵にあったが、儂が繋ぎ止めた。オヌシに復讐の機会を与えるために!』ナラクの暴威は、フジキドのニューロンに再び憎悪の炎を注ぎ込む。妻子が殺される姿が無限に再生される。『チャドー呼吸をやめて、儂に身を委ねよ!』
「黙れナラク!」『黙らぬぞ!キョート城にいるサツガイ・ニンジャは、オヌシの妻子を殺したダークニンジャに、カツ・ワンソーの影が取り憑いたもの!オヌシにも儂にも因縁がある!』「ヌウッ……!」『ソガのダマシに脳をやられ、あの小娘を置き忘れるウカツ者に、殺せる相手ではないわ!』
「黙れ!」『黙らぬ!しかも今のキョート城には、あの忌々しいケイトー・ニンジャもおるはず!オヌシの惰弱な肉体のせいで何度か不覚をとったが、今度こそくびり殺してやらねばならぬ!』「……奴らは殺す。だが、オヌシに肉体は明け渡さぬ!」『なんたるワガママ!ええい、いずれそうなる!』
ナラクはしびれを切らした。好都合!『キョート城とギンカクの繋がりはできておる!行くぞ!』「ともに!」フジキド・ケンジの肉体に、ナラク・ニンジャの力が再び湧き起こる!ゴウランガ!ゴウランガ!2人は重なってひとつとなり、赤黒い炎と化した!「『イイイヤァアアアーーーーッ!』」
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【続く】
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