忍殺TRPGリプレイ【スーパーヒューマン・ファイター】01
ドーモ、三宅つのです。これはぺりかん=サンのAOSニチョームキャンペイグン第7話A「サプライズ・アタック・クリティカル・ダメージ」を元にしたリプレイ小説です。ネタバレにご注意下さい。
ネオサイタマにおける中立地帯「ニチョーム」に集うニンジャたちを主人公とし、迫り来る敵を撃退するキャンペイグンの第7話です。6話と7話Bは前に類似したシナリオをやっていますので飛ばします。
◆ドミネイター(種別:ニンジャ)
カラテ 6>7 体力 6>7
ニューロン 6 精神力 7
ワザマエ 11 脚力 6/N
ジツ 1 万札 16>1
DKK 0 名声 9>10
攻撃/射撃/機先/電脳 7/11/ 8/ 7
回避/精密/側転/発動 11/11/13/ 7
即応ダイス:5 緊急回避ダイス:4
◇装備や所持品
◆ストリートニンジャ装束一式:緊急回避+4、脚力ダメージ軽減1
◇ジツやスキル
☆ハッカー系ソウルLV1:精神力・電脳・機先+1
☆◉超自然的IRC接続:生体LAN端子なしでハッキング可能
◉エコノミック・カラテ:側転後のハッキング判定へのペナルティなし
移動の代わりにハッキングを行えるが、続く攻撃フェイズでは近接攻撃のみ可能
◉kill-9
◉魅了
◉トライアングル・リープ
◉電光石火:機先+1、側転+2
◉◉タツジン:ボックスカラテ:連続攻撃+1、攻撃出目6で痛打+1
●戦闘スタイル:精密ジャブ連打 ワザマエで1体に近接攻撃、連続攻撃+2
1発ダメージ1固定(痛打・殺伐・エンハンスなし)、迎撃不可
●戦闘スタイル:ボックスカラテ連打 精神力1+回避ダイス2を消費し発動
連続攻撃+2、標的1体、殺伐なし 精神力2消費すると連続攻撃+3
ただし戦闘終了まで連続攻撃+の効果使用不可に
●ワザ:ハートブレイカー 出目666で発生
痛打+1、回避H 命中すると残る連続攻撃回避不能(殺伐なし)
●連続攻撃2、連射2
○生い立ち:アーチ級ニンジャソウルの片鱗
◉知識:電子プログラム、オカルト、古代ニンジャ文明、
ニチョーム、旧世紀地下道網 記憶
◉交渉:煽り 記憶
○背景:違和感や外部存在
能力値合計:25>26
◆ファイアランナー(種別:ニンジャ)
カラテ 6>7 体力 6>7
ニューロン 6 精神力 9
ワザマエ 11 脚力 7/N
ジツ 3 万札 18>3
DKK 0 名声 9>10
攻撃/射撃/機先/電脳 7/13/10/ 9
回避/精密/側転/発動 12/12/14/ 9
即応ダイス:3 緊急回避ダイス:0
◇装備や所持品
▶ヒキャクLV1:脚力と回避+1
▶サイバネアイLV1:ワザマエ+1、射撃時さらに+1
◆チャカガン×2
◆サイバーサングラス:射撃+1
◇ジツやスキル
☆ハッカー系ソウルLV3:精神力・ニューロン判定・イニシアチブ+3
☆◉超自然的IRC接続
◉kill-9
◉◉タツジン:ミリタリーカラテ
◉トライアングルリープ
◉電光石火
●連続攻撃2、連射2
○生い立ち:元ハッカーカルト
◉知識:犯罪、電子ウイルス、ニチョーム、旧世紀地下道網、ストリートの流儀 記憶
◉交渉:共感(記憶)、理路整然
○背景:秘密や陰謀
能力値合計:29>30
◆ドゥームキラー(種別:ニンジャ)
カラテ 6>7 体力 6>7
ニューロン 6 精神力 6
ワザマエ 11 脚力 6/N
ジツ 0 万札 15>0
DKK 0 名声 9>10
攻撃/射撃/機先/電脳 8/11/ 8/ 8
回避/精密/側転/発動 12/11/13/ 0
即応ダイス:4 緊急回避ダイス:0
◇装備や所持品
▶生体LAN端子LV1:ニューロン+2、イニシアチブ+1
▶テッコLV1:カラテと回避+1
◆カタナ
◆トロ粉末
◆タカハシ・マスターツールキット
◇ジツやスキル
◉◉タツジン:イアイドー
◉kill-9
◉トライアングル・リープ
◉電光石火
●連続攻撃2、連射2
○生い立ち:エンジニア崩れ
◉知識:ファッション、オイランドロイド、ニチョーム、旧世紀地下道網、
ストリートの流儀 記憶
◉交渉:卑屈(記憶)、共感、威圧
○背景:心酔や従順
能力値合計:23>24
では、始めます。
◆◆◆
序
ネオサイタマ、ニチョーム・ストリートに聳えるヤグラ337ビル。「貢物はこれだけか?私に逆らうことは国家権力への反逆だぞ?ンンーッ?」テーブルに両足を投げ出し、尊大にふんぞり返ってニチョーム自治会員を睨め回すのは、剣呑なスキンヘッドにサイバー・ガスマスクメンポのニンジャだ。
彼の名はディクテイター(独裁官)。恐るべき古代ローマカラテの高段者にして、ネオサイタマ市役所から派遣されてきた監視者である。
「ドーモ、スミマセン」自治会役員らは深々とオジギし、歯を喰いしばる。高級御影石製の床には「第四帝国」の金文字がミンチョ体で描かれていた。全てニチョームの金で作られたものだ。「気がきかんな!今すぐ最高級オイランをデリバリーしろ!スシとオハギもだ!貴様らは臭いから帰れ!」
ナムアミダブツ!植民地総督めいた横暴!だが、ディクテイターを排除することはできない。新たに締結された不平等条約により、ニチョームは自治権を失い、オナタカミ……否、ハイデッカーを中核とする公的治安維持組織「アマクダリ・セクト」のテリトリーに組み込まれてしまったからだ。
彼はこのビルを接収してオフィスに作り替え、様々な「規則」を発布し始めた。法的拘束力はないという建前だが、ニチョームに駐留するハイデッカー部隊があちこちで目を光らせ、破れば難癖をつけてくる。彼らの背後には国家権力がついており、逆らえば囲んで電磁警棒で殴られ懲罰施設行きだ。
ハイデッカーがニチョームに駐留するようになってから、流入する難民は確かに激減し、恐怖によって治安も大幅に改善したが、観光客も激減した。ハイデッカーのガサ入れで掠奪され、閉店に追い込まれる店舗さえも出てきている。非常事態下だとはいえ、このままではニチョームはオシマイだ。
「ハァ……」ニチョーム・ニンジャ自警団の長、ネザークイーンことザクロは自治会員らとともにビルから立ち去り、大きくため息をついた。いつまでこの横暴に耐えればよいのか。カネで済むなら話は早いが、法律と国家権力を持ち出されてはたまらない。ソウカイヤの方がまだしもマシだった。
足取り重く『絵馴染』への帰路を進むザクロの眼の前を、蛇が横切った。ふと目で追うと、それは路地裏の前で犬……否、コヨーテに変身し、オジギした。ザクロがそちらへ歩み寄ると、コヨーテは痩せた青年の姿になる。彼はアイサツした。「ドーモ、お久しぶり。フィルギアです。大変だね」
ダンゴウ
ザクロはフィルギアに誘われ、地下下水道のアジトで自警団や自治会の主要メンバーとともに密談することになった。アマクダリへの反乱計画だ。
フィルギアは「サークル・シマナガシ」というストリートニンジャ愚連隊を率いている。正確にはアナイアレイターという強力なニンジャを長とし、彼は軍師めいた役割だ。他の所属者はルイナー、デリヴァラー、スーサイド。全員がお尋ね者で、地下下水道からニチョームへ逃げ込んできた。
「ソウカイヤも邪悪だが、まだしも話がわかる連中ではあった。それが突然こうなるなんてね。ショッギョ・ムッジョ」「まあ、騒ぎはなるべく起こして欲しくないけど」ザクロは腕組みをする。「座ったままセプクの時を待つのもイヤよ。ニチョームを潰そうっていうのなら、抵抗するしかないわ」
ザクロは頭を下げる。「どうか力を貸して」「そうだな。俺たちもあいつらとは因縁がある。必死で抵抗してやるさ」とはいえ、相手は国家権力だ。下手に逆らえばニチョームは圧倒的な戦力で叩き潰されて更地になり、再教育センターにでも変えられてしまうだろう。となると……どうすべきか?
「まずは、反アマクダリ派を抱き込むのが一番だろうな。ソウカイヤ・オムラ連合は分断されて叩かれボロボロだ。やむなくオナタカミやアマクダリに降った連中にしても、心底から忠誠心を抱いてるわけでもないだろ」フィルギアは顎を撫でる。「しかしラオモト・カンの安否情報がないのがなァ」
前総理大臣ラオモトは、ゲイトキーパーやフューネラルともども、カスミガセキ・ジグラットのどこかに幽閉されているらしい。殺せばソウカイヤが完全に敵に回るし、生かしておくのも危険なので、わざとそうしているのだろう。人質にとってソウカイニンジャたちを従わせる、というわけだ。
カスミガセキ・ジグラットに潜入して、ラオモトを救出する……というわけにも行くまい。ラオモトに恩は売れようが、ソウカイニンジャでも相当の手練れでなければそんなことはできない。何より今ニチョームを離れるわけにはいかない。それなら、現実的にできることを少しずつやるしかない。
「そうだな……その監督官の弱みを握って、言う事を聞かせてやれば、少しは圧力も弱まるんじゃないか?」フィルギアは提案した。「と言っても」「そいつのオフィスに忍び込んで、情報を盗んで来るとかさ。もし見つかったら囲んで殴って、少し痛い目に合わせりゃいい。そいつは小物なんだろ」
「そうね、小物よ。痛い目に合わせてやりたいわ!」ドミネイターは好戦的に笑い、拳を打ち合わせた。「マッタ。アタシや自警団が行くわけにもいかないし、フィルギア=サンたちに頼むしかないじゃない」ザクロは焦った。「実は俺たち、UNIX方面は苦手なんだよね」フィルギアは肩をすくめた。
「じゃあ、協力するしかないわね」ファイアランナーは鼻を鳴らす。「ザクロ=サンは怪しまれるから留守番してて」「……仕方ないわねェ。なるべく見つからないでね」ザクロは引き下がらざるを得ない。「結局これで戦争になるかも知れねェが、覚悟の上だ」「ああ」自治会員たちも同意する。
事前調査
作戦は決まった。自治会員たちが簡単な図面を描く。もとは自治会の会議所ゆえ、おおまかな内部構造は把握している。しかし警備はかなり厳重だ。正面にも内部にもハイデッカーが詰めており、監視カメラもある。「ビルは6階建て、オフィスは4階ね。どうやって忍び込んだものかしら……」
ビルの中央部にはエレベーターがあり、1階から6階までを直通で繋いでいるが、当然監視カメラがある。監視カメラの制御UNIXは1階東側にあり、そこへ行くには西側の正面玄関から入り、ハイデッカーの許可を得なければならない。東側には非常階段があり、その1階部分にハイデッカーがいる。
今のニチョームにおいてハイデッカーを殺したり、気絶させたり、負傷させたりするわけにはいかない。明確な反逆行為としてアマクダリから激しく制裁されるだろう。遠隔ハッキングやゼゲン・ジツで言うことを聞かせるぐらいは可能だろうが、サイバーサングラスなどに記録が残っても厄介だ。
「ハイデッカーがいない場所は?」「2階から5階までは、最近まで店舗が入ってたのを追い出したから常時はいないはず。改装してオフィスを拡張するんだろうな」「工事業者に変装していけばよくない?」「外部の者がビルに入るには、IDの提示とボディチェックが必須だ。武器は持ち込めねェ」
「じゃあ、隣のビルから4階の非常階段まで飛び移るか。ニンジャならできるだろ」「周囲のハイデッカーが見過ごしてくれたらね」「うーん……」思ったよりも難攻不落だ。何か妙案はないか。「……地下はどうだ」ドゥームキラーが挙手した。「地下下水道から穴を掘って、地下から潜入する」
「なるほど」「なるべく静かにしなけりゃならんが、そうすると南東の階段から4階まで直通だ。ここには監視カメラもないんだろ」「……今のところはね。ハイデッカーが通ってる様子もないわ」「よし」「オフィスの前の監視カメラは?」「一個ぐらいはハッキングでなんとかなるだろ。たぶん」
「穴掘りなら、俺がやる」フィルギアの背後で黙っていた男、ルイナーが挙手した。「そういうカラテが使えるからな」「じゃあ、よろしく」「まだなんか策は立てられないかしら。全員が光学迷彩ローブを着ていくとか」「いいぜ。ツテを辿れば調達できる」自治会員が頷いた。「じゃ、頼んだ」
かくして、ニチョーム・ストリートではアマクダリ・セクトの支配に対する最初の小さな抵抗が始まろうとしていた。人や集団を抑圧すれば、必ず抵抗運動が生じる。それは善悪や正義ではなく、物理法則にも等しい現象だ。
作戦開始
【続く】
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