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【FGO EpLW アルビオン】第十節 Blackout

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(前回のあらすじ:末法電脳都市LAにて、ついに集結したカルデアの一行。 この地を支配するアサシン・マスカレードを滅ぼすため、反抗者オークの力を得て電脳空間へ侵攻!)

アサシン・マスカレード……『ガイ・フォークス』とて無敵ではない。電脳都市とはいえ都市ひとつだけの特異点、リソースは有限だ。攻撃は銃撃、火薬、そしてハッキング。市民をアノニマス化することで数は増やせるが、身体能力は大したことはない。まして今、外界ではアーチャー・カラシニカヴァの軍勢が攻め込んで来ている。手駒となる市民を皆殺しにされれば、ガイ・フォークスは外界へ干渉できぬ。

そして、まさかのこれだ。この電脳空間でアノニマスが全滅すれば、それは英霊としての消滅を意味する。市民はなにしろ数百万、アーチャーたちでも皆殺すには時間はかかろう。それまでに侵入者をクラックする!

「させないよ!」

突如アサシン・イシュタムが二人に分裂! 四人、八人、十六人、三十二人、まだ増える!
「ちょいとこのへんのデータをいじるとね、幾らでも増やせるのさァ!」
オークの力と情報を借り、電脳戦に適応! イシュタムの群れは背からコウモリめいた翼を伸ばし、無数のアノニマスの群れへ突撃!

「「『Flaming(炎上)』!」」
「「『Blocking(遮断)』!」」

必死に電子呪文を唱えるアノニマス! 何騎か撃ち落とすが、どれも本物ではない!

「ならば……美しき/時をとどめむ/『Freezing(凍結)』!

かかった! イシュタムたちの動きが空中で停止!
「やったッ!」
否! 止まっているのはイシュタムではない! 彼女らの表面が01分解し、サングラスの女たちに変化!

「来やがれ、機関銃女ども!」

イシュタムが叫ぶや、周囲の01が再構築され、多数のアーチャー・カラシニカヴァが出現! 周囲のデータに喰った魂の情報を叩き込み、自らの手駒として召喚したのだ! カラシニカヴァたちが指先の銃口を向ける!

BRATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATA!!!
BRATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATA!!!
BRATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATA!!!

「AARRGGHH!」「OH!NO!」「F■CK!」「BASTARD!」「Daughters of a bitch!」「God damn it!」「AARRGGHH!」

縄を通してIPアドレスを抜き取ったイシュタムは、偽装IPを次々と破壊! ファイアウォールを破壊! 計測不能なタイピング速度で瞬間移動し、大蛇のごとく敵の喉元に食らいつく!

「『天国』へ逝きな、ガイ」

イシュタムの縄が、掌が、この場を指揮する『ガイ・フォークス』代表者を掌握!
「馬鹿め!」「私を倒しても、次の私が」「私に中核などいない」「全てが私だ!」「貴様ごときに」
騒ぎ立てるアノニマスたち。イシュタムは耳を貸さず、用意しておいた『ウイルス』を叩き込む!

「な……!」「ん……!」「だ……!」「と……!?」

それは……!

【ヒヒ。オレ様の宝具……『空鬼の呼び声(ウェンディゴ・サイコシス)』さ。 あんたら一体一体は、大した強さじゃない。効くぜ、こいつが】

ライダー・ウェンディゴが嗤う! 猛烈な飢餓感と食欲の減衰が同時にアノニマスたちを襲う! 痙攣し、うずくまる! 集中が乱れ、アノニマスたち自身を01ノイズが攻撃!

「「「「「AAAAARRRRRGGHHHHHHHHHHHHHHH!!!!」」」」」

ネットワークを経由してウイルスが感染! 一行を覆っていた01ノイズも消滅していく!

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同時刻! ロス・アルビオンの高層マンションで、下層住宅街で、戦場で、企業オフィスで、路上で、車内で! 携帯端末やラップトップ、デスクトップの前にいる、顔なき名なき老若男女が、頭を抱えて蹲る!

「「「「「アバババババアアーーーーーーーッ!!!!」」」」」

痙攣! 目、鼻、耳、口から出血! 急速にやせ細り、頭に血管が浮かび上がる! モニタ画面からイシュタムの縄が飛び出し、首に絡みつき、取り憑いていたアノニマスたちを引っ剥がして引きずり込む! 歴史上のガイ・フォークスの死因は……絞首刑(デス・バイ・ハンギング)!

「「「「「ペケロッパ!!!!!」」」」」

ナムアミダブツ! 並列直結していた無数のアノニマスたちが一斉に爆発四散! インガオホー!

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メガデモめいた電脳空間は、アノニマスと共に消滅した。一行は再び現実空間、ロス・アルビオンの森林地に立つ。ガイ・フォークスを失えば、この街はアーチャーどもに攻め滅ぼされるだろう。その前に虚数空間へ消え去るか。

「ハァーッ……ハァーッ……! 殺ったよ、全員。あー疲れた」

イシュタムが膝をつき、あぐらをかく。やや離れた場所で、アイアンサイドと勾践も立ち上がり、駆け寄る。マシュが展開していたシールドのおかげで、さしたる被害はない。楽勝か、と思われた、その時。

ドボッ。

「え」

イシュタムの胸のど真ん中を、背後から、が貫いた。

「やれやれ。お見事だったが、そろそろ快進撃にも歯止めをかけてやろう」

イシュタムの背後に、いつの間にか、何者かが立っている。イシュタムが口の端から血を流し、振り返る。

アノニマスではない。背の高い、金髪の男だ。黄金の瞳。金色の甲冑と緋色のマント。頭の後ろに光輪。無表情で無感情な声。

「余にも、アノニマスどもを始末するのは骨が折れたのでな。代わりにやってくれて助かった」
「ア……? てめェ……はッ?! なんだ!? いつの間に!?」

霊核を。貫かれた。一瞬。気配も殺気も感じさせなかった。アノニマスどもとは動きが違う。格が違う。

マスターたちも唖然呆然と立ち尽くす。なんだ。何が起きた。
「そして、『貰うぞ』。アサシン・イシュタム。貴様の霊核をな」
槍が引き抜かれる。あっけなく、あまりにあっけなく、イシュタムは消滅する。

KPAM!

【あ?】

続いて、イシュタムの隣にいたライダー・ウェンディゴも。フクロウの死骸の頭蓋骨が槍の一振りで粉砕され、霊核を抜き取られる。

「さて、揃っておるな。行くぞ」

男は首を鳴らし、ゆらりと構え……瞬間、姿を消す! マシュがシールドを展開! 左右から勾践とアイアンサイドが飛びかかる!

『逃げろ!』

◇◆

「かはッ……!」

火花。地面。顔面から地面に叩きつけられ、バウンドし、転がる。血の味。鼻血も出たか。目の前がチカチカし、歪む。

右膝……だ。折られた。右脚が使い物にならない。魔力を凝集して応急処置する。背後に回られ、後頭部に衝撃を食らった上で、右膝をやられた。そのようだ。見えない。奴の、攻撃が。認識できなかった。馬鹿な。確かにわたしは、あくまで防御が主体のサーヴァント。戦闘力はさほどでもない。しかし……!

「ちぇりゃァッ!」「はあァッ!!」

顔をあげる。視界がゆがむ。怒り狂ったセイバーの一撃を、アイアンサイドの突撃を、男は難なく躱し、剣を槍の柄で逸らす。くるり、一閃。穂先がセイバーの首を刎ねる。石突きと掌打がアイアンサイドの鎧を撃つ。浸透勁。アイアンサイドが血を噴き、くずおれる。馬鹿な。

「何者だ……貴様……!」
アイアンサイドの問いかけに、男はこともなげに答える。

「余は『ランサー』だ。聖杯を求めている。そのために、貴様らを皆殺しにする」

ランサーは槍の穂先をアイアンサイドとセイバーの胴体に突き入れ、霊核を奪い取る。両者があっけなく消滅する。馬鹿な。

ブリアレオス・アバター、マスターとエピメテウスは、いない。どうなった。逃げたか。エピメテウスが地面から喚び出していた巨大な掌は、既に避けられていて、砂となって崩れていく。

「……ッッ……ざっけ」

刹那、脇腹。思考が、防御が、間に合わない。宙に浮かされ、連撃をまともに受ける。槍の打撃。

「ッ……はッ」
「どうした。防いでみよ、『シールダー』」

彼は、ランサーは……単純に、ただ純粋に……カラテ(戦闘力)が強い!

「イヤーッ!」
気力を振り絞り、決死の反撃! だが次の瞬間!
「ンアーッ!」
破砕音! 右肘があらぬ方向に曲がる! ランサーは構えを解かず、無表情に、死神めいて宣告する!

「古代ローマカラテは魔技。じきに、そなたは余に哀願する。いっそ殺してくれとな……」

◆◇◆◇◆◇

ZGMMMM…ZMMMMM……

重金属酸性雨が降り注ぐ、烏賊墨めいた曇天。遠雷が轟く。雲の隙間に数十の目が煌めき、触手が這い出す。バーサーカー『ブリアレオス』の本体だ。シティ・オブ・ロンドンを押しつぶし、食い尽くし、ここへ向かって来ている。ロス・アルビオンへ。

「……近づいてきたか。あれを倒すには、やや不足だが……これだけ狩れば、なんとかなろう」

ランサーが虚空を見上げ、呟く。槍は消えている。体内に収納している。足元にはマシュが這いつくばり、ぴくりとも動かない。そこへランサーが近寄り、無造作に彼女の両腕から手甲をもぎ取る。円卓を、十字架を、聖遺物を。ランサーは――――それを、自らの腕に装着した。誂えたように馴染む。

「これは頂くぞ、シールダー。そしてそなた自身も、余には必要だ」
「…………う……」

気絶したマシュを、ランサーが米俵めいて担ぎ上げる。そして、右手を虚空へ向ける。

「『世界継ぎ接ぐ凱旋門(アルクス・コンスタンティーニ)』」

ランサーの眼前に、巨大な凱旋門が出現する。ローマ建築の代表作。2世紀に作られたハドリアヌスの凱旋門をベースに、各時代の彫刻を剥ぎ取ってくっつけ、新たな彫刻も補って急ピッチで完成させたという。そのためもあり、他の部分は写実的で緻密だが、4世紀に付加された当時のものは稚拙で、中世のものに近い。そしてこの門を宝具とするからには、ランサーの真名はおのずと分かる。

真名判明

ランサー・マジェスティ 真名 コンスタンティヌス大帝

別次元への転移は、そうそう多用できる術ではない。標的がなるべく多く、一箇所に集まるのを狙っていた。カルデアのマスターは確保しそこねたが、戦果は上々。ブリアレオスに殺されねば、いずれ彼女を取り戻しに来るだろう。

ランサーはマシュを担いだまま、凱旋門を潜って帰還する。抜けるような青空の輝く、かの地へと。
そして―――門は消えた。

―――アサシン  ガイ・フォークス 消滅
―――アサシン  イシュタム    消滅
―――ライダー  ウェンディゴ   消滅
―――セイバー  勾践       消滅
―――シールダー アイアンサイド  消滅
―――幻霊    オーク      消滅

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