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【絶鬼パロ】Last Man Standing

<前回

「そうそう、ここだった。『無学寺』。上から見つけやすいように、でかい建物のある場所へ落っことしたんだぜ……」

主催者側の始末屋『牛頭鬼』が、金棒とバズーカを担いで山門を潜る。狙いは、レギュレーション違反者『マジェント・マジェント』。そこそこ強力な超能力を持つ男。能力の詳細は、『構えをとってじっとしてれば絶対防御』というものだ。

ならば要は、意識の外から不意をうてばいい。膂力や反応速度や敏捷さは、所詮は人間、鬼に敵うわけはない。こちらが気づかれないよう見つけ出し、このバズーカ『ハルコンネン』をブチ込んで、始末する。あるいはビビらせて絶対防御姿勢を取ったところを、ワイヤーロープかなんかで縛り上げちまえばいい。通信機で馬頭鬼との連絡もできる。他の参加者の位置情報は、これで聞けばいい。仕事が終わったら回収してもらう。

と……彼は物音に気づく。バキバキ、バリバリ、という……何かが砕けるような音。標的の出した音か?いや……なんだ、あれは? 寺の裏山から降りてくる、赤い影は?

「クソッタレ……! あの変態ヤロー、どこへ消えやがった!? ……グスッ。消えるだけならまだしも、オレの金塊とか持って行きやがって! ムカつくぜ……! 絶対ブッ殺してやる!」

無学寺の中。全裸の変態筋肉男・源元気(げんげん)を見失ったマジェント・マジェントは、苛立ちを募らせ過ぎてブチ切れていた。外だ。外に違いない。こうなりゃ隠れ潜んでても仕方ない。外へ出て、あいつを殺しに行こう。子でも親でも知ったことか。腹いせに金目のものを適当に漁り、そこらへんにあった肩掛けカバンに投げ込んでいく。

そうこうするうち、寺の裏から、何かが砕けるような音が近づいてきた。大きい。

「ん? なんか騒がしいな……あいつか?」

いや、裏は確か山だ。……土砂崩れか? 雨も降ってねえのに? スタンドを纏えば防御出来るが、ああーっと、土砂に埋もれて出られねーってのは困るぜ。いかにオレでも、川底にハマっちまったことで学習はしてる。ここは普通に逃げとくか。

マジェントは冷静で的確な判断力を見せ、寺の外へ逃げ出した。そして、音のした方を振り返った。

「おい、馬頭鬼! なんだありゃあ! あの赤い影は!」
『ザザッ……あー、鬼の中じゃ一番やべえヤツだな。「ギーグ」。話が通じない、攻撃が通じない、無差別殺戮しか能のないやつだ。撤退しろ。あいつに巻き込まれたら鬼でも死ぬ。自然災害みてえなもんだ。標的もついでに始末してくれるだろうよ』
「そ、そうか! じゃ、じゃあ逃げる!」

牛頭鬼は慌てて、今来た道を逃げていく。鬼で始末屋なのに、子のように逃げ回らねばならないとは。
「なんなんだよ……! クソっ、マジェントはこれで死んでくれるのか!? 馬頭鬼! 他のレギュ違反者はどこだ!?」

「うっ……うっ うおわァあああああああーーーーーッ!?

寺の境内で、マジェントは、見た。それ(IT)を。人間の女性の姿の様であり、あるいは、胎児の様なカタチをした、それを。赤い霧のようなものが、移動し、広がり、近づいてくる。霧、空気、樹木、地面といった概念を破壊しながら。

(なんなんだ……! 『スタンド』かッ!? い……いや デカすぎるッ! それにヤバすぎるッ!

「ネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサン」

それは意味不明な音を発しながら、でたらめに動き、縮み、伸び、転がり、蠢き、寺の屋根にのしかかった。バキバキ、バキバキ、メキ、メリメリメリ……! バターのように屋根瓦が融解し、屋根瓦ではないなにかに変わっていく。

「……だがよォーーーッ、オレは『覚悟』できてるぜ……無敵だ! 『20th Century BOY』!

グッ、と歯を食いしばると、マジェントは物陰に隠れ、その場にしゃがみ、スタンドを身に纏う。災害めいてるが、土砂崩れや洪水ではない。スタンドでもない。あいつは『鬼(IT)』だ。少なくとも、動き回る怪物だ。闇雲な動き。盲目か。こっちに気づいている様子はない。なら、防げる。あいつに呑み込まれても、通り過ぎてくれる。そう信じる。スタンドは意志の力だ。立ち向かう力だ! 防いでやるッ!

「チガウ…チガウ…チガウ」

こうげきの しょうたいが つかめない!

ZZZZZZT!! 落雷にも似た強烈な電流が周囲を焼き払う!

「…カエレ…」「アーアーアー」「イタイイタイ…」

こうげきの しょうたいが つかめない! つかめない! つかめない!

命中すれば、その攻撃は目から涙を溢れさせ、体を麻痺させ、凍結し、頭を混乱させていたはずだ。だが……通用しないッ! マジェントの意志の力が、怒りが、ムカつきが、恐るべき『ギーグ』の攻撃を防いでいるッ! 黄金の精神も、漆黒の意思も持ち合わせぬ、たかが下っ端のクソ野郎が! 恐怖のラスボスの攻撃を無効化しているッ!

これは人間賛歌なのか!? それとも……!? ギーグの闇雲な攻撃は、なおも続く! 防ぎきれるのかッ!?

ギーグはそのまま寺を侵蝕し、歪め、壊し、通り過ぎていく。竜巻が通り過ぎたように、寺はバラバラになり、見る影もなくなった。ギーグの姿もない。どこへ消えたのか? 地下、空中……あるいは海中か。その破壊の痕跡は、寺の外へ続いている……。

……何分が過ぎたのか。
マジェントは……生きている。スタンドをゆっくり解除し、抜け目なく目を周囲に走らせ、安全を確認する。彼にとって幸運にも、牛頭鬼はどこかへ去っていた。すっ、と立ち上がる。彼の目には―――確かな自信。

「良ォーーしッ!」

【マジェント・マジェント……生存】
【ギーグ……生存、行方不明】
【源元気(げんげん)……(マジェントの支給品を使い)消滅】
【牛頭鬼……生存、他のレギュレーション違反者のもとへ】

To Be Continued…⇒

【F-08(無学寺跡)/00時55分】
【マジェント・マジェント@ジョジョの奇妙な冒険 SBR】
[役]:親
[状態]:健康(戦闘で左目を失っており、偏頭痛やよだれ・鼻水を垂れ流す後遺症がある)
[装備]:スタンド『20th Century BOY』(動かなければ絶対防御)、レミントン・ダブルデリンジャー@現実
[道具]:頭陀袋(無学寺から調達、金目のものが適当に詰め込まれている)
[思考・行動]
基本方針:鬼ごっこで優勝する。とりあえず『子』を守れば良いのかぁ?任せろ!
1:子や親を探す。
2:あの変態野郎(げんげん)を見つけ出して殺す。
3:災害(ギーグ)を無傷で乗り切ったことで自信がついた。
※その他
各役の人数・各役の勝利条件・会場の地図・制限時間は全て未把握。
レギュレーション違反に気づいた主催者から追手がかかっている。優先順位は比較的高い。
デイパックと支給品二つ(シザースのデッキ@仮面ライダー龍騎、金塊@Gengen Channel)はミラーワールド内に放置されています。消滅するか、また既にしているかは不明です。
【???/???】
【ギーグ@MOTHER2】
[役]:鬼
[状態]:健康
[装備]:無し
[道具]:無し(支給品は全て破壊済み)
[思考・行動]
基本方針:皆殺し(ギーグがそう思っているわけではなく結果的にそうなるのである)

通りすがりのラスボスと巻き込まれた変なやつによる世紀の一戦だ。防御力にかけては絶対というスタンドのルールを尊重してこうなった。こうでなきゃあなるまい。音楽はゆうめいなやつで気に入っている。なお、げんげんはおれが書く前にマジェントの支給品を勝手に使いミラーワールドに転移して消滅した。そういうものらしい。このパロロワは仮面ライダー龍騎のなんかに基づいて経営されていたらしいが、おれは実際詳しくないので手探りだ。

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