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【絶鬼パロ】隠し砦の三悪人

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「う……」

顔に水をかけられた感覚。意識を取り戻し、目をしばたたく。ここはどこか、家屋の中のようだ。顔面がヒリヒリと痛い。鼻血が出ている。歯は無事だ。何が……起きた。記憶をたぐる。

そうだ。突然この奇妙な島に転移させられ、「鬼ごっこをしろ」とか命令されたのだ。確実に『存在X』のせいだろう。クソッタレめ。しばらくして、河島龍之介リュウと名乗ったヤクザの男と出会い……情報交換を行った直後、『鬼』に襲撃されたのだ。反撃を行おうとしたが、その鬼の背からもう一体の鬼が出現した。目の前が真っ暗になり……それから、どうなったか。

気絶から回復した時、そうだ、路上に投げ出されていた。鬼が捨てていってくれたとも思えないが、では、リュウが救出してくれたのか。あたりを見回しても、リュウも鬼も姿が見えなかった。リュウは、どうなった。捕まったか、死んだか。鬼は。

とにかく、路上に倒れていてもしょうがない。さっきの鬼や新たな鬼に見つかってはおしまいだ。リュウは……生きていれば、会えるかも知れない。死んでいればそれまでだ。ふらつく頭を抑え、民家へ近づく。身を隠さねば。視野が狭まり、足元がおぼつかない。あの鬼の攻撃は何だったのか。気分が悪い。そんな状態でうろついていたから――――この有様だ。

目の前でペットボトルの水を呷っているアホそうな男が、こちらの覚醒に気づいた。黒髪だが、顔つきは西洋人のようだ。腰には長剣。と、妙な鉄球。

「…………」
「……おはよう、ございます」

顔を歪めて苦笑し、男に小声で挨拶する。こいつが鬼ということか。こちらは、椅子にロープで縛られている。殺されずに済んだと考えれば最悪ではないが、何をされるか。男は眉根を寄せ、鼻を鳴らし、首を巡らして、奥へ呼びかける。

「ガキが目を覚ましました!」
おう

のそり、と白髭の男がソファから身をもたげ、近寄ってくる。
そいつの顔は紫色で、ジジイのくせに筋骨隆々。アホそうな黒髪の男よりは明らかに賢く、強い。明らかに子ではない。親か、鬼か。その手には携帯端末と杖。杖は、こっちの顔面を殴った鈍器か。思い出して来た。

「小娘。ワシは『Dr.ヘル』じゃ。名を名乗れ」
「……『ターニャ・デグレチャフ』……です」

「そうか。ワシは役目上は『鬼』じゃが、お前を殺す気は『いまのところ』ない。ラッキーと思え。ありがたいと思えい」
「あっ、はい。感謝いたします」
作り笑顔を浮かべ、追従を述べる。生殺与奪を握られている以上、仕方あるまい。彼は続けて、こう告げた。

「お前をこれから、このゲームの『本部』へ連れて行ってやる。子は殺さずともよいそうでな。そこで内部の情報を集め、ワシに報告せよ。手段は問わん。お前が考えよ」

……なるほど。この私を戦略的・戦術的に活用してくれる、ありがたい上司というわけか。しかし、おめでたい奴だ。私が彼の、いわば裏切りを『本部』とやらへ告げ口したらどうなる。この会話が盗聴されていればどうする。もし『本部』へ送られた私が、その場で殺されたら……まあ、それはこいつには関係ないか。別の『子』を送ればいいだけだ。

ともあれ私が帰還出来るか否かは、この作戦にかかっている。いいだろう、乗ってやる。嬲り殺されるよりは遥かにマシだ。ならば、猫を被って幼女のフリをする必要もあまりない。有用な人材であることをアピールせねば。

「その……いくつか、質問と要求、よろしいですか」
「ある程度は許可する。作戦には信頼関係が必要じゃからの」
「感謝します。まず……子である私は、詳しくこのゲームのルールを知りません。あなたが知っている限りのことを教えて頂きたい。無論、こちらからも知っている限りの情報を出します」
「もっともじゃな。なかなか聡明じゃぞ。手駒としては良い奴よ。ワシは有能な奴は好きでな」

Dr.ヘルとやらが、ニタリと笑う。そうだ、当たりを引いたと思うがいい。こちらもそっちを値踏みさせてもらおう。黒髪の男はヘルに無言で促され、慌てて私の束縛を解いた。

黒髪の男―――『ウェカピポの妹の夫』は、手持ち無沙汰気味にペットボトルの水を呷る。

デイパックの中身は確認し、ヘルとターニャにも公開した。アメリカ製の拳銃、コルトSAA「ピースメーカー」が二挺と、見慣れない擲弾が一つ。内ポケットには親のルールも書いてあった。護身用に拳銃と擲弾をターニャが欲しがり、ヘルも許可したのでくれてやった。彼女が庇護者であるオレたちを殺す理由はあるまい。逆らえば殺す。これでひとまず、愛も信頼もない、恐怖と打算で結びついたチームが出来た。

ただ、このターニャとかいうガキは……どうも、不気味だ。気味の悪い笑顔といい漂う殺気といい、Dr.ヘルの同類だ。マジで『子』なのか? 『鬼』じゃあないのか? いや、鬼か子かは『本部』とやらで判別出来るだろう。オレとしては、こいつらを仲間として生き残ればいい。話を聞く限り、鬼が親を殺すメリットはあまりないらしい。Dr.ヘルの気まぐれが続く限り、オレの身は安全というわけだ。少々屈辱的だが……。

Dr.ヘルは白鬚をしごき、ターニャの提言に耳を傾ける。
骨子はこうだ。作戦計画には賛同するが、自分を今、なんの準備もなしに本部へ連れて行くのは得策ではない。中で何をされるか分からないし、連絡できるとも限らない。リスクが、不確実性が大きすぎる。それよりも、もっと情報と手駒を集めるべきだ。この計画に賛同する子を、親を、さらには鬼を。このゲームの盤面をひっくり返すというからには、それぐらいせねばならない。

「……ふむ。まあ、そうじゃな。……おまえを襲ったその鬼は、この近くにおるかな?」
「生きていれば、おそらく。話が通じるとは思えませんが……」
「そのヤクザ者も気になるな。鬼を殺すか、撃退したのであれば……この『お守り』を使ったのかも知れぬが」

Dr.ヘルが、ターニャから奪った『お守り』を掌で弄ぶ。ターニャは小銃ともども、支給品を彼に預けることにした。敵対的な鬼に立ち向かう場合、彼が持っていた方が確実に鬼に命中させられるだろう。『子』が使用せねば駄目とは説明書に書いていない。要は、この鬼に自分を守らせるのだ。いざとなればこの拳銃と、スタングレネードがある。

また、ヘルの持つ『スマートフォン』を用いれば、1時から他の鬼と連絡が取れるらしい。もうすぐだ。作戦に賛同する鬼が多いとも思えないが、鬼たちが何という名で、どこにいるかを知るのも重要だろう。

「そのスマートフォンで他の鬼を確認し次第、襲撃された現場へご案内いたします」
「よかろう」

【チーム・ヘルインザ地獄】
【C-05/00時55分】
【ターニャ・デグレチャフ@幼女戦記】
[役]:子
[状態]:健康、顔面負傷
[装備]:コルトSAAピースメーカー@現実、M84スタングレネード@現実
[道具]:
[思考・行動]
基本方針:このゲームから早期の脱出を目指す。
1:ヘルの対主催作戦に乗る。そのために準備を整える。
2:ヘルのスマートフォンで他の鬼を確認する。
2:自分が襲われた場所へ行き、何が起きたか調べる。
※その他
Dr.ヘル、ウェカピポの妹の夫と情報を共有し、鬼と親の持つ情報をある程度獲得。
【ウェカピポの妹の夫@ジョジョの奇妙な冒険 第7部 SBR】
[役]:親
[状態]:健康
[装備]:鉄球、剣、コルトSAAピースメーカー@現実
[道具]:デイパック
[思考・行動]
基本方針:決闘を汚した主催者に責任をとらせる(女なら殴りながら犯す)。
1:逆らえば殺されそうなので、Dr.ヘルについて行く。
※その他
Dr.ヘル及びターニャと情報を共有。
【Dr.ヘル@真マジンガーZERO】
[役]:鬼
[状態]:超健康
[装備]:バードスの杖(ただし現在は機能が停止しているため実質は頑丈な棍棒程度、本人はまだ気がついていない)
[道具]:四次元っぽい紙袋、『スマートフォン(鬼)』、不明支給品2つ(確認済み)、島の地図2枚、『お守り』(ターニャから説明書ごと奪取)、モンドラゴンM1908(小銃。ターニャから奪取)
[思考・行動]
基本方針:戦いに勝利し、この企画の主催にいるであろう兜十蔵をぶち殺す。その後に改めて世界征服に乗り出す。
1:従来のルール以外にゲームをクリアする方法があれば、兜十蔵の鼻を明かす為にもそちらを優先したい。
2:自分の対主催計画に他の参加者を巻き込み、情報と手駒を集める。敵対者は打倒する。
3:スマートフォンで他の鬼を確認する。
4:ターニャが襲われた場所へ行き、何が起きたか調べる。
※その他
ウェカピポの妹の夫及びターニャと情報を共有。

チーム・ヘルインザ地獄の続きだ。ターニャがヘルに殴られるまでの流れをこれまでのあらすじとして振り返り、悪党同士で組ませてみた。リュウとはなんかテレビドラマに出たヤクザで、おれ以外の書き手がターニャ登場話を書いた時に鬼の犠牲になったらしい。おれは全然知らない。そんなやつらばかりなので話を動かすのも一苦労だ。

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