忍殺TRPGリプレイ【レッド:バースマーク】04
前回のあらすじ:メイライ社COO"ゴットリーブ"を暗殺するため、地下秘密施設に潜入したニンジャたち。数々の困難を乗り越え、ついに標的のいるプレジデントルームへ突入!だがゴットリーブことニンジャ・ブラックソーサラーのフーリンカザンを組み合わせた強力なジツが発動し……。
◆
01010101……ブラックソーサラーは何らかの強力なジツを発動した。部屋に飾られていた工芸品は犬の頭になっていた。犬。目がこちらを追う。赤黒い液体が部屋に満ちる。『アガト、アガト、アガト、アガト、アガト』
三人は恐るべき光景に圧倒され、がくりと膝をつく。これは。『アガト・ゲン・ジツ。ここは私のフーリンカザンだ。この劇場に足を踏み入れた時、すでに諸君の敗北は決定していた』ナムサン。視界が揺らぎ、うねり、歪んで溶け合っていく。異常な吐き気と快楽が脳内に満ちる。麻薬。薬物か。
ざああああ……天井から重金属酸性雨が降り始めた。屋内で、地下深くだというのに。それは流れ込む血液、襲い来るオイラン、果ては劇場そのものを、絵の具を流し溶かすように崩し……全てを洗い流していく。『ハハハハハハハハハ……!』ブラックソーサラーの哄笑が響き渡る。視界が、闇に。
???
暗黒の中を落ちていく。落ちていく。落ちていく。
……ひどい耳鳴りと、体が燃えるような感覚。デッドリーパーは重金属酸性雨が降り注ぐ中、 泥水に倒れ伏した状態で意識を取り戻した。ここは何処か? ゴットリーブの地下拠点"エイトボール"。ここは何処か? 重金属酸性雨降り注ぐネオサイタマの廃工場。ここは何処か? ここは何処か?
そうだ、この日は重金属酸性雨が降っていた。いつもよりも酷く激しく、横殴りに打ち付けるそれに苛立ちを覚えるほどに。『これほど早く辿り着く者が居るとは』視界が途切れた。立ち上がれ。カラテを構えろ。重金属酸性雨汚染で崩れ落ちた廃工場。目に刺さる劇場シートの朱。記憶の混濁。
『終わりか。お前のカラテは』そのニンジャは重金属酸性雨に打たれながら空を見上げていた。『見せてみろ。お前のニンジャソウルの輝きを』大粒の雨が破れた屋根から吹き込む。泥が跳ね上がり、デッドリーパーと彼の装束にモザイク状の小さな模様を描く。周囲には幾つかの倒れ伏した影。
彼は、アシッドウルフは、カラテを構えた。
「ゴボッ……!」デッドリーパーは血反吐を吐いた。内臓が燃え盛り、無数の蛇がうごめいているような感覚。脳は鈍重な銅のようで、全身から鉛が溶け出すように身体が重い。サイバネアイもテッコも、シャットダウンしている。かつての弱い自分。あるいは、ブラックソーサラーのジツの効果か。
◆デッドリーパー(種別:ニンジャ)
カラテ 6 体力 9>6
ニューロン 6 精神力 7>6
ワザマエ 12>4 脚力 6>3/N
ジツ 3>0 万札 4+23>0
DKK 0 名声 8>1
攻撃/射撃/機先/電脳 6/ 4/ 6/ 6
回避/精密/側転/発動 6/ 4/ 4/ 0
即応ダイス:3 緊急回避ダイス:2
◇装備や所持品
◆チャカガン×2:二挺拳銃、射撃難易度H、連射2、マルチ・時間差可、側転難易度+1
射撃スタイル:ダブルターゲット 最大2体までの敵を標的にできる
◇ジツやスキル
○生い立ち:キラーマシーン教育
◉知識:セキュリティ 記憶
『●燃え盛る内臓』:それは君の五臓六腑に染み渡る。
体力にダメージを受けた時、さらに回避不能の「回避ダイスダメージ1」を受ける。
『●銅製の脳』:君の脳は鈍重な塊となり、欠落を生じる。
生い立ちによる取得スキルや自動取得スキルを除き、全てのスキルを失う。
『●溶け出す鉛』:君の全身から鉛が溶け出している。
全てのサイバネがシャットダウンし、その効果を失う。
『●腹の中の蛇』:君の臓腑で無数の蛇が蠢いている。
成長の壁を突破している能力値を強制的に2/3(端数切捨て)にする。
これに伴い自動取得系のスキルも失われる。
『●ハートの開放』:君が今、曝け出さなければならないもの。
体力や精神力へのダメージを任意の値だけ相互変換できる。
代わりに"特定の敵"から受ける「サツバツ!」の効果が必ず出目6の「即死」効果となる。
能力値合計:30>16
戦闘開始
1ターン目
『イヤーッ!』BLAMBLAMBLAM!BLAMBLAMBLAM!アシッドウルフは銃弾をばらまき、その反動を利用してカラテを繰り出す!ミリタリーカラテの奥義「ピストルカラテ」だ!「い、イヤーッ!」デッドリーパーはかろうじて躱し、距離をとって二挺拳銃を構える。視界がぼやけ、指先が震える。
BLAMBLAMBLAMBLAM!四発撃った銃弾のうち、三発は明後日の方向へ飛んでいった。残り一発をアシッドウルフは指先でつまみ取り、液体に変えた。彼のジツで腐蝕させ、溶かしたのだ。そうだ、あの時も、こうだった。『筋はいい。だが、訓練されていないな。お前にはセンセイが必要だ』
2ターン目
アシッドウルフの輪郭がぼやけ、にじむ。瞬時に懐に入られた!『イヤーッ!』BLALALALALALAM!嵐のようなピストルカラテ!SMAASH!「ンアアアアーッ!」サツバツ!デッドリーパーは全身に銃弾とカラテを食らい、空中高く弾き飛ばされ、重金属酸性雨の水たまりの中に落下した。勝負あり!
どくん。心臓が強く脈打ち、肋骨が開く。気力が僅かに湧き、肉体を衝き動かす!「イヤーッ!」デッドリーパーは立ち上がり、距離をとって二挺拳銃を連射!BLALALALAM!『イヤーッ!』アシッドウルフは難なく躱した。このままでは敵わない。何かを、思い出さなくては……010101010101
???
……重金属酸性雨が打ち付ける泥の大地が、絵の具を溶かすように崩れ始める。剥き出しになるアスファルト。新たなテクスチュアだ。『まったく。湿気たカラテだね。腰抜けは泥にまみれて、まみれて、何も成せずに野垂れ死ぬのが関の山だ。それが嫌なら、拳握って立ち上がんな』
波の音が聞こえる。重油の臭いがする。デッドリーパーは濡れたアスファルトに手を付き、起き上がる。クレイニアムがナックルダスターをはめた手で手招きした。『かかってきなよ。デッドリーフィンガー=サン』
3ターン目
『イヤーッ!』クレイニアムは色付きの風と化し、デッドリーフィンガーの懐へ飛び込む!嵐のようなボックス・カラテ!『シューシュシュシュ!』BOBOBO!SMASH!「ンアアーッ!」二発命中!痛烈!「TAKE THIS!」BLAMBLAM!デッドリーフィンガーは距離をとって二挺拳銃を撃つ!
『フッ!』クレイニアムは難なく銃弾をつまみ取る。『無駄だって言っただろーが。銃に頼ンじゃねェ、カラテしろ!』彼女は苛立ち、デッドリーフィンガーを叱責する。『まあ、ピストルカラテってのもあるか。湾岸警備隊のミリタリーカラテの中にはよォ。アタシは知らねぇが、アンタ向きかもな』
ピストル、カラテ。そうだ。思い出した。ニューロンが再び動き始め、内臓の燃え盛る感覚が消えていく。『油断すんな!シューシュシュシュ!』BOBOBO……SMASH!「ンアアーッ!」ナムアミダブツ!デッドリーフィンガーは顔面に痛烈なパンチをもらい、仰向けに倒れた!『ハイ、終わり』
「い、イヤーッ!」デッドリーフィンガーは気力を振り絞って立ち上がり、嵐のようなピストルカラテを繰り出す!BLAMBLAMBLAM!「おっと!イヤーッ!」クレイニアムは難なく躱し迎撃!BOBOBO!SMASH!「ンアアーッ!」無慈悲!だがデッドリーフィンガーは気力を振り絞って耐える!
「おいおい、意外とやるじゃねえか。ピストルカラテなんかどこで習った?湾岸警備隊か?それともニンジャソウルからか?」クレイニアムは眉根を寄せる。デッドリーフィンガーは……デッドリーパーは、頷く。この時、自分はピストルカラテを使えなかったはずだ。これを習った相手は……!
4ターン目
「だが、甘い!シューシュシュシュ!」BOBOBO!クレイニアムの火を噴くようなボックス・カラテ連打!SMAASH!「ンアアーッ!」躱しきれず一発を食らう!今度こそ気力も尽き果て、デッドリーパーは仰向けに倒れた。「ちょっとばかり手こずらせてくれたな。安心しな、命は取らねえ010101
???
……アシッド0101010はミ01リタ0101デモンめいたカラテの構えをとった。重金属酸性雨が逆さに降り始める。その頭部もまた、空へと吸い込まれる渦巻く塵で出来ていた。『イクサとは単なる力比べではない。直感と状況判断能力、そしてタクティクス。先を読め』声が聞こえる。腕が熱を持つ。
5ターン目
『010101イヤーッ!』アシッドウルフめいた存在がシャウトすると、デッドリーパーの足元の地面が液状化し、黒い腕が突き出して掴みかかった!「イヤーッ!」跳躍回避!サイバネアイと、テッコ……「鷲の翼」がいつものように動く!『イヤーッ!』アシッドウルフめいた存在が飛びかかる!
ピストルカラテではなく、ジュー・ジツめいた構えだ。デッドリーパーは腹の中で蛇がうごめく感覚を味わいながら側転回避!「イヤーッ!」そのまま距離をとって二挺拳銃を撃つ!BLAMBLAM!『イヤーッ!』アシッドウルフめいた存在は難なく回避!彼にピストルカラテを挑めば迎撃される!
『イヤ010101ーッ!』再びデッドリーパーの足元が揺れ動き、黒い腕が足首を掴む!「ンアーッ!」『イヤーッ!』アシッドウルフめいた存在が飛びかかり、凄まじい連続攻撃を繰り出す!SMASH!「ンアアーッ!」ナムアミダブツ!デッドリーパーのみぞおちに痛烈なパンチが命中!内臓が破裂!
「イヤーッ!」血反吐を吐きながら側転で距離をとり銃撃!BLAMBLAM!『イヤーッ!』難なく回避!なんたる圧倒的な強さ!このままでは010101
???
『『もうへたばったのか?』』『決してここに010101の手が届くことはない』「奇妙だ。何か、プロテクトが……」01のノイズが走り、ブッダデーモンめいた影が現れる。現れる。現れる現れる現れる現れる。010101010101「「「「「BWAHAHAHAHAHAHAHAHA!!!!!」」」」」
アシッドウルフの姿が崩れて剥がれ落ち、悪夢めいた、ブッダデーモンめいた怪物が無数に現れた。これは……ブラックソーサラー、だ。彼女は直感した。『カラテを鍛えりゃあ、テメェらは何者にだってなれる』『お前はまだ何も成し遂げていない。さあ、起きろ!』二つの声が頭に響き渡った。
腹の中の燃えたぎる蛇は、血肉に吸収されて消えていく。脳がクリアになり、サイバネが駆動し、肉体にカラテがみなぎる。ニューロンをかき乱す不浄のノイズを、二人のニンジャのインストラクションが洗い流す!……『二人』? それは、一体"誰"だ? 一体"いつ"のインストラクションだ?
◆ブラックソーサラー?(種別:ニンジャ?)×???
カラテ 12 体力 1
ニューロン 12 精神力 1
ワザマエ 12 脚力 7
ジツ 0 万札 0
攻撃/射撃/機先/電脳 12/12/12/12
◇装備や特記事項
●回避・側転不可
●連続攻撃2、連射2、時間差
●鉤爪:ダメージ2、出目55以上で殺伐(「ハートの開放」を持つ者には即死固定)
●ハチモク:ターン開始時にニューロン判定H、イニシアチブ1に低下
そのターンには判定ダイスの成功数+1体(上限8)までが同時に行動可能
能力値合計:36
6ターン目
「「「BWAHAHAHAHAHA!」」」ブラックソーサラーたちは狂ったように笑い続け動かない!こちらを見失ったかのように!「スキアリ!イイイ……イイイヤァアアアーーーッ!」デッドリーパーは二挺拳銃を構え、嵐のように回転しながらピストルカラテを叩き込む!BLALALALALALALAM!
「「「アババババーッ!」」」「「「アババババーッ!」」」ゴウランガ!六体のブラックソーサラーが薙ぎ払われ消滅!だが見渡す限りの空間に満ちたブラックソーサラーの数はほとんど無限に近い!
7ターン目
「イイイヤァアアアーーーッ!」BLALALALALALAM!デッドリーパーは竜巻めいてブラックソーサラーたちを薙ぎ払う!「「「アババババーッ!」」」三体が薙ぎ払われ消滅!だが五体のブラックソーサラーたちが動く!悪魔めいた黒い爪がデッドリーパーの心臓を……貫く!「ンア……アアーッ!」
???
肉体が弾け、暗黒が
###お前たちの可能性を###
『さあ、起きろ』
満ちる
銃弾が
血、雨、熱、泥
弾け
ミリタリーブーツが仰向けに倒れ伏した胸を圧迫する
貴様は何者になることができる テメェらは
ソウルの輝きを 何者にも
01010101画質の悪いIRCカメラ映像を観ていた
薄暗い部屋の中央にフードで顔を覆った人物が椅子に縛り上げられ、その目の前に軍服姿の別の人物が立っている
『昔の話だ。秘密工作員だった俺はくだらないミスで掴まり、コンクリートの壁に囲まれて座り心地が最悪な椅子に縛り上げられた』軍服の人物が低い声で話し始めるが、縛られた人物はぐったりとして動かない
『アイツはまず俺の眼を引っこ抜いた』『それから、ビビリあがって心臓が止まっちまわないように、強心剤と鎮痛剤を少しずつ流し込みながら、俺の腕を指先からゆっくりケジメしていった』
どこからか点滴器具が持ち込まれたところで映像は010101
???
BLAM!
……銃声が意識を取り戻させた。周囲の景色は、血肉が撒き散らされた劇場めいた空間……プレジデントルーム。客席では多数のオイランが倒れて死んでいる。全員、喉にドス・ダガーを突き立ててセプクしていた。「え?」訝しみ、起き上がる。アースハンドとサイバーメイヘムも傍らにいる。
「アバッ……バカな……!?」ブラックソーサラーの声。ステージ上でもオイランたちが死んでいる。ただ一人となった彼は、胸から血を流していた。銃で撃たれて。彼を撃った男は、アイサツした。「ようやく夢から醒めたか。タネの割れた手品師め。……ドーモ、アシッドウルフです」
彼が銃でブラックソーサラーを撃ったのだ。自分たちを囮にして。最初からそうする予定だったのだろう。三人は怒らず、むしろ安堵した。三人とも生き残り、計画は成功したのだ。「アバッ……ドーモ、ブラックソーサラーです」瀕死のニンジャはアイサツを返した。「なぜ、効かない……!?」
「俺はこの手の洗脳プログラムに詳しい。逆に利用し、オイランたちに一斉セプクさせ、お前とのコネクトを切った。あとはジツに集中させたところを撃てば、この通り。お前はもはや無力だ」「アバッ……!」アシッドウルフは無慈悲に告げる。「お前は不完全な状態で、実によく働いた。だが……」
「おのれを見失った。くだらないニンジャソウルひとつで。分不相応な願いを持ち、偽りの技術を振りかざした。それでいて"ゴットリーブ"にしがみついた」「私……僕、は……いや、君は……」「お前は、偽者だ」アシッドウルフは宣告した。「ああ、あの家に、帰りたい。森に囲まれた家に……」
ブラックソーサラーは呻いた。アシッドウルフは冷たく告げた。「そこは、お前の居場所ではない」「ああ、そうか……」「もう休むがいい。サラバだ」BLAMN!銃弾がブラックソーサラーの額を撃ち抜いた。「サヨ、ナラ!」KABOOOOOM!ブラックソーサラーは爆発四散した。
戦闘終了
エピローグ
アシッドウルフは銃を納めた。「これでいい。予定通り、メイライ社は俺が接収する。ご苦労だった」「「「アッハイ」」」ズズズズズ……ステージにコンソールがせり上がる。アシッドウルフはそれに顔を向けた。キャバァーン!『ニューロン認証完了。COO権限を移譲しますドスエ』
電子音声が響き、禅譲は成った。今やメイライ社の全権限は、名実ともにアシッドウルフに移ったのだ。"ゴットリーブ"、ブラックソーサラーが何者だったのか。アシッドウルフと彼との問答の意味は。それを三人が問う理由も、動機も、アシッドウルフが答える義務もない。
……デッドリーパーは、先程の記憶を反芻する。ソーマト・リコールめいた、おそらく自分ではない、誰かの古い記憶。あの声は……。
【レッド:バースマーク】終わり
リザルトな
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