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【AZアーカイブ】使い魔くん千年王国 幕間 蛙男の夢

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場面は現代の日本。東京・渋谷の道玄坂にある、ガウディが設計したかのような奇怪なビル。そこの20階に、高級マンションのような一室があった…。

煉瓦造りの壁をした薄暗い室内には観葉植物も置かれているが、さまざまな骸骨や剥製や不気味な置物が飾られ、本棚には無数のオカルト書が並び、重厚な木製のアンティーク家具の上には髑髏に乗った蝋燭の火が輝いている。

そこに座っているのは、ローブに身を包み丸眼鏡をかけた、灰色の髪の壮年の男。だが彼の肌は生臭くぬるぬるしており、顔はあばた面で口が異様に大きく、腹はぽっこりと不健康に膨らみ、まるでヒキガエルを連想させた。

彼は午後の居眠りをしているらしい。いや、今彼は異世界に『霊夢』を送り、長年待ち続けていた人物を探し当てようとしているのだ……。

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あれ? ここはどこ? ……ああ、夢の中ね。こんな変な建物見たことないもの。そうか、私は広場でおぞましい光景を見て精神が耐えられなくなり、失神したのね。まったくマツシタの奴、あんな大騒動起こすなんて思わなかったわ!強いのは分かったけど、後でちゃんとお仕置きしてやらなきゃ。

『ああ、やっとつながった。はじめまして、きみはルイズだね?』
「っキャアア! なっ何よあんた、かかか、蛙みたいな顔して!!」
突然目の前に変な男が現れた。また蛙だ。こんな悪夢を見るなんて、私の正気はどれぐらい残っているのかしら?

『そうだ、私は「蛙男」だからな。今は毛呂山(けろやま)と名乗っている。魔法使いであり、オカルト作家のはしくれだ』
「こ、こないでよ見るからに変態! 化け物!」
『ああ…無知な者に説明するのは疲れる。せっかく通信がつながったというのに』

『ケロヤマ』と名乗る怪奇・蛙男はため息をつくと、一方的に喋り出した。

簡潔に説明しよう。ミス・ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。

私はきみの召喚した子供、松下一郎こと『悪魔くん』の使徒、つまり高等な従僕だ。体はもともと人間だが、魂は古代の魔法使い『蛙男』のものでね、『悪魔くん』が朽ち果てた古い肉体の代わりに、新しい肉体を授けてくれたのだ。

彼は悪徳と不浄に満ちた現代の世界を粉砕し、偉大なる革命を起こすため、この世に生まれた。差別も偏見も、貧乏も退屈も、戦争も国境もない幸福な世界、『千年王国』を地上に築くべき『メシヤ(救世主)』なのだ。そして私たち『使徒』は彼に仕え、共に戦うよう定められていた。

やがて彼は予言にあるとおり、信じていた味方に裏切られ、凶弾に斃れた。
こちら側の暦でいうと、前回のメシヤ『ナザレのイエス』が誕生してから、およそ1964年目のことだった……。

だがメシヤは死後七年経つと甦り、再び地上に降臨して権威を増し、ついに千年王国を樹立するとも予言されていた……。

そこで私は七年待った。だが彼は来なかった。『1+6』は『7』だから十六年後かと思い直したが、やはり来なかった。二十五年、三十四年と待ったが復活の気配はなく、世界の混迷は深まるばかりだった。生き残っていた使徒の残党も死んで行き、私一人になってしまった……。

こちら側での今年(2007年)は、彼が亡くなってからほぼ四十三年目に当たる。そこで私は持てる魔力を振り絞り、築き上げた情報網を最大限に活用して、遂にメシアが『ハルケギニア』という異世界にいるという情報を掴んだのだ!!

そして、霊的にもっとも異次元とつながり易いように魔法の眠りにつき、霊夢の中できみに語りかけているというわけだよ。少しきみの記憶も覗かせてもらっているがね。

そういうわけで、きみがメシアをそちらに召喚してしまったため、こちら側の世界――地球というのだが―――は、未だに悪魔の支配する、不浄で、猥雑で、暴力的で、金銭至上主義で、貧富の差が大きく、階層制度が厳しい軍事国家ばかりが乱立する地上の地獄のままだ。世紀末から何年も経つというのにな……。

まあ、今年がだめなら五十二年目、六十一年目、七十年目、一百六年目…といつまでも待つさ。ファウスト博士などは、メシアの出現を四百年も待ち続けていたのだしな。彼がそちらの世界で力を蓄えておられるようで、私も嬉しい。ことによると、そちらで千年王国を建設されてから、こちらに戻ってこられるのかもな。

これから私は『悪魔くん』の夢の中にも行き、彼と再会することにしよう。
ああ、なんと懐かしいことだろうか……。

では、また会おう。ミス・ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。

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