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夕遊の漫画cafe

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大好きな漫画その他をここにまとめておきます。本当は、ここに書ききれないくらい好きな作品がたくさんあるのですが...
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#読書感想文

耽美をめぐる社会情勢と魅力『BLと中国』周密

以前から興味を持っていた分野なので、すごく読みたかった本ですが、発売前から重版がかかるほどとは。ドラマ『陳情令』の原作『魔道祖師』や『天官賜福』の作者・墨香銅臭さんのインタビューが掲載されていた『すばる』2003年6月号もすごかったですから、当然といえば当然なのかも。 さて、周密さんの『BLと中国』は、日本でいわゆる「BL」とされる物語が、中国では「耽美」(Danmei)と呼ばれている、その語源からたどります。日本が新しいもの=外来語を使って新しさや付加価値つけて表現し、そ

台湾グルメと鉄道の旅と百合。『台湾漫遊鉄道のふたり』楊双子(三浦裕子訳)

予告されたときから、すごく楽しみにしていた本。『台湾漫遊鉄道のふたり』というタイトルもそうですが、表紙のデザインがレトロかわいくてステキ。台北駅がモチーフになっていて、昭和のおしゃれな女性2人が楽しそう。広告のキャッチコピーも「グルメ、鉄道、百合」って情報量多すぎで、わくわくしかありません。 舞台は昭和13年5月、作家の青山千鶴子は台湾の講演旅行に招かれます。妖怪と言われるほど食いしん坊な千鶴子は、台湾の珍しい食べ物に興味津津で、片っ端からチャレンジしたがります。でも、当然

美しくて、少し悲しい人と小鳥の物語。『ことり』小川洋子

人の言葉は話せないけど、鳥のさえずりが理解できる兄。小鳥が大好きな兄。そして、兄の言葉をわかるのは父でも母でもなく、唯一弟だけ。両親がなくなると、弟は社会生活ができない兄を世話するため、大きな会社のゲストハウスで働くようになります。庭の手入れや接待の準備が彼の仕事。そして、兄弟は、日課のように近所の幼稚園の鳥小屋を見に行き、一年に一度くらい旅行します。 全くの余談ですが、大昔の少女漫画に『白夜のナイチンゲール』という印象深い作品があって、ふとそれを思い出しました。友人に裏切

リアルと漫画はどこが違う?『アイヌ文化で読み解く「ゴールデンカムイ」』中川裕

楽しみに待っていた1冊。わくわくしながら読みました。アイヌ研究の中川先生の文章は、『ゴールデンカムイ』を読み始めたあたりから、結構読んでいましたが、まとめて読めるとは本当に最高です。いろんなところで講演会とかあっても、遠いところはなかなか行けないので。 実際に『ゴールデンカムイ』の漫画に出てくる明治時代のアイヌ文化の概略とか、当時の明治の北海道のようすなんかも詳しくわかるので、とても楽しい内容になっています。 『ゴールデンカムイ』の野田先生はとてもよくアイヌ文化や、明治時

SFかと思ったら寓話のような現実でした。『銃座のウルナ』伊図透

主人公のウルナは孤児で、自分を育ててくれた教会や友達を守るために、志願して兵隊になります。長い間、戦争ばかりしている祖国が、女性ばかりを配属する先は、雪深い島で、敵は口だけの大きな怪物たち。なぜ、彼女たちは化け物と闘わなければいけないのか。読み進めていくと、驚愕の事実がわかってきます。 辺境の部隊にいる女性兵士たちの、悲惨な人生がやさしい筆致で描かれていています。最初の戦場シーンはSFかな(?)と思うような場面が続きます。1930年代と思うような、雪深い、きれいな風景と、対

青春時代の思い出の作品。『なんて素敵にジャパネスク』氷室冴子

とあるウェブメディアで、コバルト文庫の80年代投票やっているようです。私の場合、氷室冴子さん一色だったので、氷室作品全押し以外の選択肢がありません。 ただ、未完で電子化されていなくて、私の中で今のベストの『銀の海 金の大地』は1992年が初版なんですね。せっかくの機会なので、1980年代の氷室作品を連続して思い出してみたいと思います。 『なんて素敵にジャパネスク』は、高校時代、暗記するほど読みました。新刊の発売日には、同じファンの友達と昼休みに高校を抜け出して、本屋まで買