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夕遊の本棚

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ひと仕事終わって、おいしい珈琲や紅茶を片手に読みたい本。仕事で読む本。とにかく、たくさん読みたい、楽しみたい私の本棚をご紹介します。
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2021年10月の記事一覧

中国古代の兼愛・非攻の思想。『墨攻』酒見賢一

アンディ主演の映画『墨攻』を見て、とてもおもしろかったので、早速原作チェックしました。当…

夕遊
2年前
18

スタジオジブリの現場はいつもハード。『仕事道楽』鈴木敏夫

宮崎駿と高畑勲。2人のモンスターのような天才たちを相手に、ジブリのプロデューサー鈴木さん…

夕遊
2年前
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「政治の国」の俳優群像。『京劇』加藤徹

一般的に日本人が「京劇」という言葉から連想するものとは全く違う、中国の歴史と政治と俳優像…

夕遊
2年前
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沁み入るような静かな世界。『猫を抱いて象と泳ぐ』小川洋子

小川洋子さんの作品は、『博士の愛した数式』以来です。とてもすばらしい作品で、しかもちょう…

夕遊
2年前
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ニンゲンの根源的欲求からみる隣国。『性と欲望の中国』安田峰俊

安田峰俊さんはBlog時代からのファン。書かれた本はだいたい読んでいます。その中でも、他の中…

夕遊
2年前
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『住友の歴史』住友史料館編集・朝尾直弘監修

企業としての住友は、鉱山業とその関連産業を軸として成立・展開してきた財閥で、歴史はおよそ…

夕遊
2年前
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ロックでなければ宗教じゃない!?『前衛仏教論』町田宗鳳

著者の町田宗鳳先生は宗教学が専門。先生によれば、「宗教の思想とは、もともと危ない前衛的もの。また、そうでなければ意味がない」のだそうです。つまり、ロックでないと意味がない!? 町田先生は、唐の時代の臨済というお坊さんが言った「仏を殺せ!親を殺せ!」「経典は糞書きべラ」に始まり、聖徳太子、最澄、空海、法然、親鸞などなど、それまでの社会的仏教的常識を覆そうとした仏教者たちのエピソードを本書で教えてくれます。 そして、現在の「仏教=葬式」という静(あるいは停滞)のイメージを覆し

残された子供と養母の絆。『あの戦争から遠く離れて』城戸久枝

第7回 黒田清JCJ新人賞、第30回 講談社ノンフィクション賞、第39回 大宅壮一ノンフィクション…

夕遊
2年前
8

バカロレアの国 フランスの教育事情『哲学する子どもたち』中島さおり

著者の中島さんは、フランス人と結婚して、慣れない異国で子育てに奮闘。そんな日常を紹介して…

夕遊
2年前
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オタクも中国語も楽しい。『オタク的中国学入門』明木茂夫

中国古典文学・中国語学専門の教授による、オタク的な中国ワールド。 とにかく濃く、そしてお…

夕遊
2年前
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児童文学の名作は結構ラディカル。『挑発する少女小説』斎藤美奈子

久しぶりに斎藤さんの新刊をネットで見かけました。しかも、少女小説!これは読まないわけには…

夕遊
2年前
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中国社会の荒波を勝ち上がった人たち。『現代中国経営者列伝』高口康太

キャッチコピーは「明治維新+高度成長=改革開放!?」 レノボの柳傅志、ハイアールの張瑞敏…

夕遊
2年前
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数奇な運命を歩んだ、幸運な才能。『エリック・ホッファー自伝』

エリック・ホッファー(1902-1983)は、アメリカの社会哲学者で、もと港湾労働者。NYのブロ…

夕遊
2年前
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ユダヤ教の文化とミステリーの組み合わせがうまい。『水の戒律』フェイ・ケラーマン

本書の事件は、アメリカの閉鎖的なユダヤ教正統派のコミュニティで起こります。 私はこの本を読んだ当時、宗教にはさっぱり詳しくなくて、キリスト教については、ちょっと知っている程度。そして、ユダヤ教にもいくつか宗派があるぐらいの知識はありましたが、実際にどうなのかは、この本を読んで初めて知りました。 事件背景としても、アメリカのユダヤ教の文化の話としてもよくわかって、とてもおもしろかったです。本編のミステリーより、ユダヤ教のディテールがいちいちおもしろく感じる部分もあるくらい。