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帰郷──寒空の騒がしき夜

 あと3ヶ月で就職する友人らとの新年会を終え駅に着いたとき、上りホームの蛍光灯は完全に消え、自動販売機の灯りだけがホームのアスファルトを照らしていた。時計を見やると0時を回ろうかとしていた頃だった。

 ホームに降りたのは10人を少し超えるくらいだろう。駅の規模にしてはえらく閑散としているこの時間が一番好きだ。社会も、街も眠りにつこうとする静かな時間に、私は家路に着く。
 駅を出るとすぐのところにあるコンビニに立ち寄る。大体夏は暑さを、冬は寒さを凌ぐついでに夜食を買うコンビニに、今日はいつもいる夜勤の外国人店員の姿はなかった。まあそういう日もあるだろう。
 しかしそれにしても、異国の地で接客業をする苦労、そしてそれが可能な語学力とそれに至るまでの努力は相当なものだろうと思いを馳せる。そう言えば、この時期の北京はとてもじゃないが夜に出歩くなどとんでもない寒さだったな。あの頃は寒さの中に暖かい楽しみを見出していた。むしろ春先、外が暖かくなるにつれ人の寒さを見たように感じるのだ。

 コンビニを後にして酔い覚ましながら人のいない街を歩く。普段は気にしていなかったが、今日はやけに街の音が耳に入る。やはり1人だとそういうのが余計に気になるのだ。マンホールからは水の音、公園の木々の葉ずれさやけき、3円のレジ袋が擦れる音。どれも雅やかではないが、社会が生きている音なのだろう。
 当然自分の音も耳に入る。重い足音に、コートの擦れる音。普段は全く聞こえもしない音が聞こえると、1人であることを嫌でも実感する。

 もう少しで帰宅する。この時期の湯船は10分くらいお湯が貯まるのに時間がかかるなとどうでもいいことを考える。けど今日は無性にそういうことを考えないと、自分が1人であるという事実を寂しく感じてしまうと思ったのだ。

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