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KGIとKPIはこれでOK。サブスクリプション事業計画ことはじめ【後編】

こんにちは、株式会社キメラです。

私たちは出版社・新聞社・放送局などのパブリッシャーに対し、メディアビジネスをグロースするための課題解決やデジタル化の支援を提供しているスタートアップです。2019年1月に活動を始めて以来、国内50を超えるメディアにサービスをご提供しています。

こちらでは、サブスクリプションモデルのデジタルメディアで避けて通れない事業計画の作り方について、前後編でお送りしています。

▼前編
まず「登山計画」から。サブスクリプション事業計画ことはじめ【前編】

事業計画づくりの前に知っておきたい考え方を登山に例えて説明した前編につづき、後編となる今回は、実際に事業計画を立てるときに必要な指標について解説します。

KGI=目標、KPI=戦略

まずは、よく耳にする「KGI」と「KPI」の違いをおさえましょう。両者は混同されがちですが、それぞれ異なる役割を担っています。

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KGI(=Key Goal Indicator、 重要目標達成指標)は、組織や事業が達成すべき定量的な目標のことです。サブスクリプション事業においては、売上高や有料購読者数がこれにあたります。

対するKPI(=Key Performance Indicator、重要業績指標)は、KGIを達成するために、業務プロセスが適切に行われているかを定量的に管理・評価する指標です。サブスクリプション事業においては、有料購読者数や収益性の根拠となるいくつかの指標がこれにあたります。詳しくは後述します。

両者の関係性を事業計画づくりの手順にあてはめると、以下のようになります。

事業の方向性を定める(詳しくは前編をご覧ください)
 ↓
方向性に沿った事業目標(=KGI)を設定する
 ↓
KGI達成のために注力する指標(=KPI)を設定する

この段落でお話したKGIとKPIについて噛み砕いて知りたい方は、この解説動画をご覧ください。

KGIとKPIの定義や諸説は、徳崎 進氏の論文「マネジメントにおけるKPIの意義を再考する : 文献研究を基礎として(2015)」に詳しいです。

ここから先は、KGIとKPIの具体的な設定方法をご紹介していきます。

事業目標(KGI)は4つの変数コントロールがポイント

まずKGIの設定方法です。

はじめにサブスクリプション事業で達成したいゴール=KGIを設定しましょう。基本の指標は「UU数」「有料購読者数」「売上」「利益」です。

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これらのそれぞれに達成したい目標を具体的な期間(月次をおすすめします)ごとに定めれば、事業計画のできあがりです。

……とは簡単に言うものの、有料購読者数の目標設定に多くの方が悩むのではないでしょうか。妥当性のある計画づくりに役立つのが、以下4つのベンチマークです。

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まず、1ヶ月あたりの有料購読者数を算出するための数式

有料購読者数=前月の購読者+新規購読者数 - 解約者数

に、以下のように「ロイヤル率」「転換率」「解約率」を変数として組み込みます。

新規購読者数=前月比の純増UU数(当月UU-前月UU)×「ロイヤル率」×「転換率」
解約者数=前月の有料購読者数 ×「解約率」

それぞれの変数には、ベンチマークに沿って無理のない数字を設定しましょう。

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「ロイヤル率」「転換率」「解約率」を設定できたら、仕上げとして積み上げた有料購読者数(ボリューム)が妥当かどうかを検証します。

事業計画の最終月に設定している有料購読者の総数を全UU数で割った数字=「課金率」が、ベンチマークの範囲内に収まっているかを確かめましょう。

積み上げ式で目標設定をすると「全UUの半分が有料購読者」などと非現実的な事業計画になりがちです。全読者のうち有料購読者が占める割合は、日本国内のサブスクリプション成功例である日経新聞でわずか1%、世界的に成功を収めているNew York Times紙でも3%にとどまることに留意しましょう。

このように、4つの変数を蛇口のように調節しながら、妥当性のあるKGIを設定することが大切です。

ここまで説明したKGIと事業計画づくりを体験できるフォーマットを提供しています。コピーしてご利用ください。

KPIは日々の戦略指標

KGIを設定できたら、その達成のために追うべきKPIを設定しましょう。

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サブスクリプション事業のKPIで重要なのは、メディアに訪れた「一見さん」が有料購読者になるまでの成長を可視化できる指標を設定することです。

日々の運用においては、読者の行動フェーズごとに以下の指標をKPIにするとよいでしょう。

新規獲得(認知〜訪問)フェーズ
①PV数
②UU数

育成(再訪問〜ロイヤル)フェーズ
③訪問頻度
④1UUあたりのPV数(≒回遊率)

有料転換(ロイヤル〜購読)フェーズ
⑤CVR(コンバージョンレート

購読継続フェーズ
⑥退会率(↔継続率)

大切なのは、KPIを「設定して終わり」「眺めて終わり」にしないことです。

データは日次で取得し、毎日、少なくとも週次でKPIの進捗状況をもとに次のアクションを決めましょう。

KPIは日々の業務プロセスを評価するための指標ですから、現場が次に何をすればいいのかが明確になることが大切です。測定・管理しやすいシンプルな指標を設定しましょう。

1ユーザーあたりの採算性で事業の収益性を測る

あわせて知っておきたいのがユーザー1人あたりの採算性です。SaaS(Software as a Service)ビジネスでよく使われる指標で「ユニットエコノミクス」とも呼ばれます。

低い平均単価でユーザー数を積み上げていくビジネスモデルで収益性を評価するための有用な考え方で、サブスクリプション事業のKPIとしても大いに活用できます。

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ユニットエコノミクスの構成要素は「LTV(顧客生涯価値)」と「CAC(顧客獲得コスト)」です。

LTV(顧客生涯価値):1人の顧客がサービス利用中に生み出してくれる売上高のこと
CAC(顧客獲得コスト):1人の顧客を獲得するためにかかるコストのこと。広告宣伝費など

LTVからCACを差し引いた「LTV利益」が、顧客1人あたりから得られる収益です。LTV利益が低く収益性が悪い状態を放置していると、いくら有料購読者が増えても利益につながらない赤字事業になるおそれがあります。

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具体的には、上のようなユニットエコノミクスが理想的です。CACはLTVの1/3以下に抑えたうえで、1年でCACを回収できるコスト構造になります。

LTVの向上に寄与するのは「平均単価を上げること」と「平均継続期間を延ばすこと」です。つまり、有料購読者の満足度を上げ、解約率を低く抑えているかどうかが分かるKPI=解約率、継続率と連動します。

CACを抑えるには、少ない広告予算でより多くの有料購読者を獲得することが必要です。広告運用を効率化したり、クチコミや自社のメルマガなど広告費用のかからないチャネルでの広報を強化するとよいでしょう。

ユニットエコノミクスの解説は馬田 隆明氏の「スタートアップのお金と指標入門講座:ユニットエコノミクス (Unit Economics) 」に詳しいです。

事業計画の数字は変わるもの

サブスクリプション事業に限らず、事業計画は外部環境や目標の変化にあわせて定期的な見直しが必要です。しかし、事業運営に必要な指標をおさえておけば、細かな変化を恐れることはありません。

さまざまなKGIやKPIを一朝一夕で理解することはなかなか難しいものです。繰り返し試行錯誤しながら理解を深めていきましょう。

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