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まず「登山計画」から。サブスクリプション事業計画ことはじめ【前編】

こんにちは、株式会社キメラと申します。私たちはパブリッシャー(出版社・新聞社・放送局)に対し、メディアビジネスをグロースするための課題解決やデジタル化をご支援しているスタートアップです。2019年1月に活動を始めて以来、国内20社・50メディアにサービスをご提供しています。

今回のnoteでは、パブリッシャーがデジタルメディアのサブスクリプション事業を立ち上げる時にぶつかるの壁のひとつ、「事業計画」について前後編に分けて解説します。

前編では、エクセルとにらめっこしながら売上目標やKPIを立てる前に知っておきたい、事業の方向性づくりに必要な要素を紹介します。

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サブスクリプションの事業設計は「登山」と同じ。見切り発車は遭難まっしぐら

デジタルメディアのサブスクリプションを成功させるためには、地道に施策と改善を繰り返す、まるで山道を登るような事業運営が欠かせません。

サブスクリプションは、少額の購読料を積み上げて長期的に大きな収益を生み出すビジネスモデルです。事業設計が不十分な状態で導入しても、単なる「値上げ」とみなされて読者離れを加速してしまったり、メディアのブランドを損なったりするリスクがあるのです。

会社としても、有料購読に見合うコンテンツやシステム導入に腰を据えて取り組まねばなりません。長期的な投資が必要だからこそ、事業の方向性をしっかりと定めることが必要です。

新たな事業の立ち上げには不確実がつきものですが、見切り発車の施策やツール導入は「遭難」コースなのです。ここからは、サブスクリプションの「登山計画」づくりの3要素について説明します。

登る山:事業目標と提供価値を明らかにする

何よりも先に定めるべきは「登る山」です。実際の登山でも、目的地が決まらないことには出発できません。サブスクリプション事業においては、事業目標とデジタルの提供価値に相当します。

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事業目標とは、「いつまでに、いくらの売上がほしいか」を定量的な数字で定義することです。どのくらいの売上規模を目指す(あるいは、事業存続のために必要か)によって、事業の妥当性・スケジュール・人員・想定コストなどを試算し、無茶な事業計画を未然に防ぐことができます。

ポイントとして、目標を立てるときは既存事業との共存を前提にしましょう。サブスクリプションに限らず、パブリッシャーのデジタル事業は「既存事業に取って代わるもの」「既存事業の損失を埋め合わせるもの」と思われがちです。しかし、事業が安定するまでの時間や投資規模を考えると、既存事業といかに共存するかを念頭に置くべきでしょう。

もう1つの「デジタルの提供価値」とは、「自社のデジタルメディアを通じて、読者に伝えたい価値」を言語化したものです。ここでいう価値とは、社訓や行動指針のような伝える側が主語になっている標語ではありません。デジタルメディアが何のために存在するのか、読者にどんな便益を与えたいのかをシンプルな言葉に落とし込んだ「ビジョン・ミッション」を定義しましょう。

例えば、ニュースメディアひとつとっても「日々の生活を便利にすること」を価値とするか「グローバルな知見を得られること」を価値とするかで、ターゲットやコンテンツの方向性はまったく変わってきます。

「登る山」が決まっていないと、こんな課題に直面するかもしれません。

・漠然とした危機感だけが広がってしまう
・方法論(サブスク、EC等)で検討が止まってしまう
・社内に事業に対しての温度差が生まれてしまう

定量・定性の両面から目指していることを明確にして共有することで、戦略や施策の優先順位を判断するよりどころを持てるのです。

登り方:狙いをもって施策を設定する「戦術」の考え方

目指す山が定まったら、次に考えたいのは「どんなルートで頂上に向かうか」でしょう。「登り方」とは、事業目標の達成に貢献する戦術のことです。

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戦術と聞くと「こんなサービスをやりたい」「あのツールを導入したい」とあれこれとアイデアを膨らませたくなりますが、ぐっとこらえてください。アイデアありきで施策を展開すると、一貫性のない事業になってしまいます。まずは、先ほど紹介した「登る山」に意識を向けましょう。

サブスクリプションの事業目標は購読料からなる売上です。つまり、購読者を増やすことに狙いを定めた施策を打つことが肝要です。メディアに訪れた「一見さん」が有料購読者になるまでの行動は、以下の図のようにフェーズ分けができます。

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行きあたりばったりに施策を量産するのではなく、「何をすれば、読者がひとつ先のフェーズに進んでくれるか?」と仮説を立てながら打ち手を考えていくことが大切です。

「登り方」が決まっていないと、こんな課題に直面するかもしれません。

・アイデアが先行してしまい、本質的な事業成長につながらない
・ツールを導入することがゴールになってしまう
・上層部に提案しても「それで、儲かるの?」と問われて実行に移せない

コンパス:事業や施策を評価する基準・手段・体制

最後に手に入れておきたいのが、道に迷わないための「コンパス」です。事業においては事業や施策を評価する基準と、そのために必要な手段や体制がこれにあたります。

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サブスクリプションの事業運営において把握しておきたいKPIは後編で解説しますが、事業の進捗だけでなく、日々の施策単位でも成功・失敗の要因を振り返り、次の施策へと生かすサイクルを回すことが重要です。そのためにチームの分析体制を整えたり、共通言語として参照する指標やツールを決めておくとよいでしょう。

「コンパス」が決まっていないと、こんな課題に直面するかもしれません。

・取り組みたいことや社内からの依頼が多すぎて優先順位が分からない
・施策の効果検証ができず、やりっぱなしになってしまう
・ページビューや外部配信だけが「よい記事」の基準になり、メディアブランドが低下する

大切なのは、最初にブレない軸を作ること

「壺の中には大きな石から先に入れよう」という格言を聞いたことがあるでしょうか。

壺の中に大きな石・砂粒・水を詰めるとき、大きな石は最初に入れなければならず、砂や水で壺を満たした後では手遅れになってしまいます。物事には優先順位があり、大切なことを決めてから細かなことを決めるべし、という教訓を伝えるたとえ話です。

サブスクリプションの事業設計も同じです。大切なのは、事業環境が変化していく中でもブレない軸を持つことです。この軸を持つために大切なポイントが、今回ご紹介した「登山」の3要素なのです。

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エクセルに打ち込む事業計画の数字は、状況にあわせて柔軟に変化していくものです。まずは大枠にあたる軸を定めた上で、細かな計画づくりや施策の検討に移っていただきたく思います。

私たちキメラは、デジタルメディアのサブスクリプション導入や事業計画づくりをご支援している企業です。「デジタルメディアのマネタイズを検討している」「もっと詳しい話を聞きたい」という企業様は、ぜひお気軽にキメラまでお問い合わせください。

今回のnoteは以上です! 続けて後編を読みたい方は、以下リンクからお進みください。

▼後編
KGIとKPIはこれでOK。サブスクリプション事業計画ことはじめ【後編】

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