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自社開発? それともSaaS? メディアがサブスクリプションを導入する方法とは

こんにちは、株式会社キメラです。私たちは出版社・新聞社や放送局といったパブリッシャーに対し、メディアビジネスをグロースするための課題解決やデジタル化を支援している会社です。

パブリッシャーが広告掲載収益だけに頼るビジネスモデルからの転換を迫られる中で、デジタルメディアのサブスクリプション化(=サブスクリプション:有料購読課金化)を検討しているパブリッシャーの方々も増えてきたのではないでしょうか。今まで、弊社ではメディアのサブスクリプションの類型や特徴を紹介してきました。

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今回のnoteでは、実際にサブスクリプションを導入するための手段について解説します。

サブスクリプションの始め方は「自社開発」「SaaS」「プラットフォーム」

デジタルメディアにサブスクリプションモデルを導入する方法としては「自社開発」「SaaSを導入する」「プラットフォームを利用する」の3パターンがあります。
この記事では、それぞれ以下のように定義して説明します。

自社開発
サブスクリプションに必要な機能を自社のリソースで「設計→実装→改修」を実施すること

SaaS
サブスクリプションに必要な機能をインターネット上で提供している外部サービスのこと

プラットフォーム
定額読み放題サービスやブログサービスなど、コンテンツ配信に加え、サブスクリプション機能の提供を行う外部サービスのこと

これらの手段には、どんな特徴があるのでしょうか。サブスクリプションモデルを導入・検討しているパブリッシャーの声をもとに、以下の表で比較してみました。

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具体的なメリット・デメリットと導入例についても見ていきましょう。

自社開発のメリット・デメリット

自社開発は、これまでサブスクリプションを導入する場合の一般的な選択肢でした。強みは、自社で仕様を決めるため実現したい機能を盛り込めることです。一方で、開発が完了するまでサブスクリプションのサービスが提供できないことや、ローンチ後に仕様にないサービスを提供するには改修が必要であることが弱みといえます。開発リソースが潤沢かつ機動力のある企業に向いた手段といえるでしょう。

メリット:自社が実現したい機能でサービスを提供できる、社内にノウハウやデータが蓄積する、社内人員ならば意思疎通が図りやすい
デメリット:多くの開発エンジニアが必要で人員コストがかかる、サービス提供まで時間を要する、ローンチ後の改修や機能追加に時間がかかる可能性がある、「車輪の再発明」状態になる恐れがある
国内の導入例:日経経済新聞社、朝日新聞社など

SaaSのメリット・デメリット

SaaSの最大の強みは、自社開発に比べて導入にかかる時間やコストを抑えながら、柔軟にサブスクリプションを運用できることです。日本でサブスクリプション管理SaaSの導入ノウハウはこれから蓄積する段階ですが、海外ではすでに多くのデジタルメディアがSaaSを利用しています。

読者の行動が多様化する昨今、マーケティングプランに沿って柔軟な課金プランや割引クーポンを提供したり、イベントなど記事コンテンツに縛らず課金対象を広げたりするならば、SaaSは有効な選択肢です。

メリット:柔軟な設計ができるツールもある、自社開発に比べてエンジニアの開発負荷が低い、社内にノウハウやデータが蓄積する、機能を改修・追加する開発コストが自社開発に比べてかからない、ツール提供会社のサポート体制がある
デメリット:ツールによっては自社システムとの接続で開発コストがかかる、SaaS利用料が継続的なコスト負担となる、希望する機能が存在しない・追加できない可能性がある
国内の導入例:毎日新聞社、コンデナスト・ジャパン、ダイヤモンド社など

プラットフォームのメリット・デメリット

定額読み放題サービスやブログサービスにコンテンツを提供し、コンテンツ課金機能を利用する方法です。自社開発やSaaSと比べて導入コストが非常に低いことや、コンテンツへの集客まで委託できる点で手軽にサブスクリプションを始めやすい手段です。

一方で、プラットフォーム自体のブランドやプラットフォーム共通のUI/UXが印象に残るため、自社メディアのブランドとして読者ロイヤルティを育てにくい、プラットフォーム運営者の都合によって仕様やサービス提供内容が変化する、などのリスクが存在します。サブスクリプション導入を試験的に、もしくは限られたリソースで行いたい場合に有効な選択肢といえます。

メリット:導入費用が抑えられる、すぐ始められる、運用の手間がない
デメリット:読者へ自社メディアのブランド認知やロイヤルティを育てにくい、カスタマイズ性が低い、ノウハウやデータが蓄積しにくい、サービス提供中止・仕様変更のリスクがある
国内の導入例:文藝春秋社(note)など

このように、近年はサブスクリプション導入の手段が多様化しています。自社開発以外にも選択肢があることを踏まえ、自社のリソースや目指すサブスクリプションビジネスのあり方に合う手段を検討してみてはいかがでしょうか。

サブスクリプションSaaSの種類と特徴まとめ

「自社開発」「SaaSを導入する」「プラットフォームを利用する」のうち、特にイメージしにくいのがSaaSではないでしょうか。海外のプロダクトが中心なこともあり、デジタルメディア向けにはどんなSaaSがあり、それぞれどんな特徴があるのか、情報収集が難しいのが現状です。以下に、パブリッシャーの利用実績があるSaaSをまとめました。

Zuora(ズオラ):Zuora

製品紹介:米Zuora社が提供。サブスクリプションの管理・課金決済に特化し、幅広い業界や製品を扱えるツール
機能: 商品管理、請求、割引、分析レポート
強み:幅広い導入実績、特定の機能を指定して導入できる、他ツールとの連携性が高い
弱み:基本機能の「CENTRAL PLATFORM」はサブスクリプションのコア機能のみを提供しているため自社システムとの連携で追加の開発コストがかかる、ID管理や決済には外部サービスとの連携が必要
導入媒体:英Financial Times、英Telegraph、ダイヤモンド・オンラインほか

Piano(ピアノ):PIANO SOFTWARE INC

製品紹介:米PIANO SOFTWARE社が提供。パブリッシャー向けに特化したツール
機能: 商品管理、請求、オファー掲出、ペイウォール設置、割引、ID認証・管理、メルマガ配信、分析レポート
強み:ペイウォールのユーザー体験が柔軟に設計できる、サブスクリプション管理だけでなく、メルマガなど読者ロイヤルティも醸成できる
弱み:ユーザー体験設計など特定の機能だけを利用する場合は他のツールとの接続設計や開発が必要になる、機能が多く習得期間がかかる、ユーザー体験やオファー設計のための人員が必要
導入媒体:米Bloomberg、英Economist、WIRED[日本版]ほか

eSuite(イースイート):MPP Global

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製品紹介:英MPP Global社が提供。ペイウォールやオファーの掲出、課金管理、分析まで、サブスクリプションに必要な機能をワンストップに備えたツール
機能: 商品管理、請求、オファー掲出、ペイウォール設置、割引、ID認証・管理、分析レポート
強み:匿名ユーザーにパーソナライズしたオファー掲出が可能、特定の機能を指定して導入できる、紙媒体とデジタル媒体の統合管理に実績あり
弱み:管理画面やサポートが英語中心、機能が多く習得期間がかかる
導入媒体:英Daily Mail、デジタル毎日、読売新聞社「The Japan News」ほか

番外:Stripe(ストライプ)

製品紹介:米Stripe社が提供するオンライン決済サービス。SaaSではないが、決済機能のみならず、サブスクリプション管理にかかわる一通りの機能を提供している
機能: 決済、商品管理、請求、割引、ID認証・管理、分析レポート
強み:サブスクリプション実現に必要な機能をすべてカバーしている
弱み:ユーザー体験や、オファー掲出などマーケティング機能、ロイヤルティ計測機能は持たない
導入媒体:英Guardian、米National Geographicほか

サブスクリプションは、導入前の「ビジネス設計が命」

最後に、デジタルメディアのサブスクリプション化を検討している方にお伝えしたいことがあります。サブスクリプションは、決してコンテンツをすぐに収益化できる「魔法のソリューション」ではありません。

事前のビジネス設計が不十分なままサブスクリプションを導入しても読者離れを加速してしまったり、メディアのブランドを損なったりするリスクがあります。実際に米国の新聞社に対する調査では、電子版を有料課金化したことにより、売上高が24%増加した媒体もあれば12%減少した媒体もあったことが分かっています。

特に流入経路がソーシャルやニュースアプリに依存しているデジタルメディアは注意が必要です。流入した読者がサイト内を回遊せずに離脱してしまい、メディアの認知やブランドを十分に形成できていない可能性があります。

サブスクリプション導入の手段を検討することも大切ですが、その前に
・現状のデジタルメディアのブランドが育っているか
・現状のコンテンツが課金に値するものか
・サブスクリプションモデルを導入したら、どんなユーザーが、どれくらい課金してくれるか

を分析・可視化し、有料課金に見合うコンテンツを生み出す体制づくりが長期的なサブスクリプションに成功には欠かせません。ツールの選定ももちろん大切ですが、その前のビジネス設計が「サブスクリプションの命」であることを心に留めていただけると幸いです。

今回のnoteは以上です!
次回もメディアビジネスに役立つトピックをお送りしていきますので、お楽しみになさってください。

「サブスクリプションの導入を検討している」「サブスクリプションについてもっと知りたい」という企業様は、以下の連絡先からお気軽にお問い合わせください。御社の課題をぜひお聞かせいただけますと幸いです。

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