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メモの魔力の「ファクト→抽象化→転用」のフレームが実にデザイン思考的である

40万部を突破したSHOWROOMの社長前田裕二さんの著書「メモの魔力」。この本が私の昨年のクリスマスプレゼントでした。
この本の中でキーとして出てくるのが、メモで活用する「ファクト→抽象化→転用」のフレームワークです。私の言葉でまとめるのは大変恐縮ですが、

 ①気になったファクトを書き留め
 ②その内容を特に「How型」「Why型」で抽象化し
 ③自分の課題に転用する

という流れです。

このフレームワークは本当に何にでも活用できますし、自分の思考に影響を与えてくれました。そして、顧客の心理を例に考えてみると、このフレームは非常にデザイン思考的であるとひしと感じました。
そこで、ファクト→抽象化→転用がデザイン思考的であるという点について、まとめたいと思います。

デザイン思考とは

「まんぷく」に見るイノベーションの起こし方でも書きましたが、デザイン思考は、調べると色々でてきますが、最も有名なのはスタンフォード大学のd.schoolが提唱している5つのプロセスではないでしょうか。

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デザイン思考は、人間中心に問題発見・問題解決に取り組む、イノベーションを実現させる方法論で、重要なのは2点。

1. ユーザーの本質的な隠れた心理(= インサイト)をベースに考えること(Emphasize → Define)
2. 考えたものはすぐにユーザーに見せるプロトタイプ精神 (Prototype → Test)

です。深く理解するには、ペアを見つけて90分、以下のワークショップをやってみると良いと思います。
https://dschool.stanford.edu/resources/a-virtual-crash-course-in-design-thinking

Emphasizeのフェーズは、まさにファクト → 抽象化である

Emphasizeのフェーズでは、ユーザーに共感し、ユーザーの隠れた心理(=インサイト)を見出します。このインサイトが、まさに抽象化により導き出される本質と同じです。共感のために行う方法として、様々ありますが、常套手段なのはインタビュー、観察の2つです。特にエスノグラフィーと言われる観察法は、まさに観察で得られる「事実」の収集と、そこからの「洞察」です。この洞察は、まさに抽象化そのものです。「メモの魔力」でも、SHOWROOMのアーカイブ機能の例で実際にインサイト軸として挙げられていました。

エスノグラフィーだけでなく、インタビューにおいてもインタビュー対象者の発言を事実として、結局言わんとしていることは何か?を見出す「洞察」が必要です。

このデザイン思考で言う洞察(=抽象化)は、メモの魔力で非常にわかりやすく説明されていました。実際に取り組むと、この洞察によるインサイト抽出は、定義があいまいで、結局インサイトって何なの?これはインサイトなの?みたいになりがちですが、それを、メモの魔力では類型として「How型」「Why型」として定義されているところが、すごく革新的です。

抽象化、具体化を操作するラダーリング法では、Howは具体化のための手段のように書かれていますが、特徴としてのHowは、抽象化なんですよね。そして、そういった特徴の集合から、Whyが見出せたりもするわけで、Howによる抽象化も非常に重要な概念だなと感じました。

デザイン思考では、Defineのフェーズで問題定義をしますが、これは得られたインサイトから、課題に対しての問題定義ですので、次の転用につながっています。

Ideationは転用そのもの

Ideationのフェーズでは、定義した問題を解決するソリューションを考えます。これはまさにメモの魔力の転用です。デザイン思考の場合は、共感対象と、解決したい課題の対象が同じことが多いですが、これも広い意味では転用ですし、別の課題に充ててもよいのです。これは、抽象化した概念から新しい具体を考える作業ですので、発想力が問われますが、抽象化により方向が定まっていますので、あとは手段を考えるだけです。複数人で意見を出しながら、多様性を活かしてアイデアを出していくのもありだと思います。如何に良いアイデアを出すかも、ファクト→抽象化→転用を繰り返し行っているか、の経験量がものを言うと思います。

転用からの実際の「行動」がPrototype → Testである

前田さんがさらにすごいのは、「ファクト→抽象化→転用」を行い、さらに「行動」により検証を繰り返している点ではないかと思います。その行動こそが、Prototype → Testであり、その数をこなせばこなすほど、抽象化、転用の精度がどんどん上がっていくと思いますし、イノベーティブな発想があふれてくると思います。デザイン思考で言えば、アイデアを見せて、顧客の反応を見ながら改善を繰り返し、ソリューションの精度が上がるのと同じです。メモの魔力を読んでいると、やはり、繰り返し行うこと、その圧倒的努力にこそ、イノベーションがあるのだと考えさせられました。


以上、"メモの魔力の「ファクト→抽象化→転用」がデザイン思考的である"でした。デザイン思考の5つのステップは、まさにファクト→抽象化→転用(→行動)と合致しているのです。さらに、デザイン思考は、人間中心で起点が顧客であるのに対し、メモの魔力のフレームは、顧客起点以外でも活用でき、あらゆる事象に転用できる点が、デザイン思考をより一般化した考え方で、革新的で、万人に必要な思考法だと思いました。
私も練習あるのみ。繰り返し行動あるのみです。

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