見出し画像

明日の熱気球 飛びますか?(2023佐久の事例から)

 佐久バルーンフェスティバル2023は、5/3~5/5まで開催されました。競技フライトは5/3・4日は午前と午後の2回、最終日の5日は午前のみの計5回予定されていましたが、3、4日ともに午後のフライトは風が強いことから中止となってしまいました。
 熱気球の大会では風の影響で午後のフライトが中止になることはよくあることで、むしろ午後のフライトを見られたら運がいいくらいです。
 フライトが行われるかどうかは当日の風次第、また競技本部の判断次第なので、当日になってみなければ分からないのですが、今回は大会当日の天気予報、また観測データをもとに飛んだ時の気象条件、飛ばなかったときの気象条件を振り返ってみたいと思います。
 ここでは天気予報・観測データはウェザーニュースのアプリやtenki.jpを使っていきます。

熱気球競技とは?

 熱気球が飛んでいるのを見たことがあるという人にも、競技があることはあまり知られていません。主に、地上に設置されたターゲットと呼ばれる的に上空からマーカーと呼ばれる砂袋を投下し、ターゲットにいかに近づけられるかを競います。種目は約20種類あり、当日の風に合わせて1種目、もしくは複数を組み合わせて行われます。

青空に浮かぶ熱気球たち。

せっかく行ったのに見られない…

 テレビや、インターネット、ポスターなどで見かけた熱気球イベント。カラフルな熱気球が無数に青空に浮かぶ写真に魅せられて、時間とお金をかけて現地入りしたはいいものの、「今日のフライトはキャンセル(中止)になりました」と言われ、熱気球を見られずに終わる・・・・・・。残念な流れですが、これは熱気球大会ではよくあることです。
 風まかせで飛行する熱気球は、風向きや風の強さがとても重要です。地上の風は弱くても、上空の風が強いことを理由にキャンセルになることもあります。
 競技キャンセルは飛行者と観客の安全第一で判断された結果ですが、天気予報の風予報を事前に確認することで、飛ばない可能性についてある程度把握することが可能です。今回は熱気球大会前の天気予報の見方について、佐久バルーンフェスティバルを事例に見ていきましょう。

佐久バルーンフェスティバルとは?

 長野県佐久市の千曲川スポーツ交流広場を会場に行われる熱気球大会です。大手自動車メーカーのホンダが協賛している「熱気球ホンダグランプリ」の第1戦として開催され、約30機の熱気球が佐久の空を彩ります。今年2023年で30周年を迎える、ゴールデンウィークでは長野県最大の催事です。
 天気予報との関係を見る前に、今年の大会の実績を見ておきましょう。

#1~#9は実施されたタスク名を示す。

 朝の部は3日とも熱気球の飛行を見ることができました。しかし、午後の部は風が出てきたため1度も飛びませんでした。2日目の夜の花火は風が強いと球皮を外してのバーナーバーションとなる場合があるのですが、風が落ち着いたようで球皮付きの完全版で実施されました。

天気予報と観測データ事例

 大会は5月3日~5日まで開催されましたが、ここでは、3日と4日について取り上げます。

1日目(5月3日)の朝

 初日は、晴れ予報で朝は風も弱い予報が出ていました(スクショ忘れてしまいました)。結果、会場からの一斉離陸形式で競技フライトが行われました。
 では、その時間帯の風の状況はどうだったのでしょうか。

 風向は明け方から6時前まで北風、6時から南、南西の風となったようです。風速は1m/s以下の弱い風でした。

1日目(5月3日)の午後

 初日午後の天気予報画面をスクショしました。競技フライトが行われる午後3時~5時頃に注目してください。

 天気は晴れで問題ありません。風は午前中時点では15時~17時まで風速2m/sの東風予報でしたが、終了時刻を過ぎた18時40分時点では16時、17時が1m/sに変わっていました。

 観測データを見てみると、15時は約2mの南東の風、16時と17時は1.5m/s程度の東寄りの風だったようです。

 熱気球運営機構(通称:AirB(エアビー))のホームページでは熱気球の飛行条件について「風速4~5m/s以上で競技飛行不可」と書かれています。
 この日の風速は、インターネット上で確認できる風速予報・観測データでこの基準を下回る約2m/sの風でしたが、飛行は行われませんでした。

2日目(5月4日)の朝

 2日目朝の競技は各チームが決めた離陸地点から離陸して会場方面に飛んでくる方式で行われました。それでは、その朝の天気予報はどのように出ていたのでしょうか。

 朝の競技が行われる6時~9時頃までに注目すると、当日朝時点の予報では、天気は晴れで問題なし、風も0m/s予報で飛びそうだと予想できました。
 昼過ぎに予報を振り返ってみると、8時台に1m/sの西寄りの風の表記が加わっていますが、おおむね変化はなさそうでした(6~7時の風向マークは実測が反映されている? 仕様がよくわかっていません)。

 続いて実測データを確認してみましょう。

 風速は朝6時~7時頃は0.5m/s前後、以降は0.5m/s~1m/sの風だったようです。風向は南、東、西と変わっています。予報の段階では0m/s予想でしたので風向までは示されていませんでしたが、実際には弱い風が吹いていたようです。

 この日の朝についてはtenki.jpの予報も確認していました。

 朝5:20の時点でスクショしたものですが、競技の時間帯は風速1m/s、風向は南西から西に変わっていく予報でした。
 実際の競技は、会場の西の方から離陸し、会場の東の方へ飛んでいきましたので、実際に西からの風がメインだったようです。

天気予報から推測するときの留意事項

 大会では競技本部がパイロットバルーンという観測用の風船を上げてフライト前に実際に現地の風向風速等を観測し、得られたデータと予報を考慮してフライト実施の可否、種目等を決めています。

右上に浮かぶ黒い風船が「パイバル」だ。競技本部以外に各チームでパイバルを使い風の状況を把握する。

 今回、フライトが行われなかった5/3の午後の回のインターネット上の予報では競技飛行が不可とされる4m/sを下回っていたにもかかわらず、フライトが中止になっています。それを伝えるツイッター投稿がこちら。

 予報上は弱い風でも実際の現地の風は予報を上回る、いわば予報と実際の誤差が生じていたといえます。
 もっとも、今回ウェザーニュースアプリでは会場の千曲川スポーツ交流広場の住所から「佐久市鳴瀬」を指定して見ていますので、飛行する可能性のある隣接の地区では風が強い予報となっていた可能性も考えられます。
 フライトの有無を推測するために天気予報を利用する際は、このような可能性を踏まえ、予報と現地の実測には誤差があることに留意することが必要です。一般的な天気予報でも、雨が降るタイミングが予報よりも早かったり降ったり遅かったりということがありますが、自然が相手ですので、風予報も例外ではないのです。
(なお、ここではウェザーニュース等の予報精度は問題としていません。)

最後に

 難しい話を書いてしまいましたが、皆さんが熱気球大会に行った際に熱気球を見る際の参考になれば幸いです。

※本記事をもとに行動した結果、熱気球が見られなかったとしても、筆者は責任は負いません。自己責任でご利用ください。また、説明資料として利用した天気予報の予報会社とは無関係です。

着陸した熱気球(ホンダ モモンゴー)。

 最後までお読みいただきありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?