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お客様はあなたの商品には興味がない「ドリルを買うのは穴が欲しいからである」

マーケティング業界では古くから伝わる格言がいくつかあります。そのひとつが「ドリルを買うのは穴が欲しいからである」というもの。ハーバードビジネススクールの教授であるセオドア・レビット博士が発表した「マーケティング発想法」という本が出典です。1968年の書籍ですのでもう半世紀以上前に書かれたものですが、いまだに通用します。この言葉の意味は、ドリルを買いに来た人はドリルそのものが欲しかった訳ではなくドリルを使ってできる穴が欲しかったのだということです。お客様のニーズとは何なのか、その本質に迫ります。

お客様はその商品のことには興味がない

あなたがホームセンターの店員だったとして、お客様がドリルを買いにお店に来ました。店員であるあなたはドリルの性能や耐久性の高さなどを説明することでしょう。でもちょっと待ってください。お客様は何をしに来たのでしょうか。確かにドリルを買いに来たのですが、ドリルが欲しかったのでしょうか。ドリルは穴を開ける道具です。そうです、お客様は穴を開けたかったのです。ドリルで実現できること、つまり穴に関心があるのでドリルそのものにはあまり関心がないはずです。関心のないドリル自体の説明をしても意味がありませんね。

お客様には何を実現したいのか質問をする

この場合店員はどうしたらよかったのでしょうか。「どのようなドリルをお探しですか?」いえいえ、そんな質問ではありませんね。先ほども述べたようにお客様は別にドリルが欲しいのではありませんし、どんなドリルが良いか分からないかもしれません。「ドリルを使って何がしたいのですか?」これが良い質問です。当然お客様は穴が開けたいと答えますので、どのようなサイズの穴を開けたいのか、どのような材質のものに穴を開けたいのか、日曜大工なのかプロなのかなどを質問するのが良いでしょう。このように根掘り葉掘りお客様に質問を重ねるのは、店員が最適な商品を選ぼうと思ったら候補となる商品を絞る必要があるからです。

お客様はどうやって実現するか方法が分からない

お客様は穴を開けたいという要望があります。でもどうやって穴を開けるか正確に把握していません。なのでどんなドリルが欲しいのかお客様に聞いても仕方がないのです。その質問をするということは、お客様が解決策を知っている前提だからです。お客様に説明するためにお店にいる店員が自分の存在意義を自己否定することになってしまいます。ですから商談の時には基本的にお客様は自分ではどうやって解決したらよいか分からないという前提に立って話を進めます。

お客様はそもそも穴が欲しかったのか

お客様はドリルが欲しいのではなく穴が欲しかった。でもさらに掘り下げて考えてみると、お客様は本当に穴が欲しかったのでしょうか。穴を開けるための背景は色々と質問を重ねて最適なドリルを選び出すことができました。でもその穴はいったい何のために開けるのでしょうか。壁に穴を開けて棚を作りたかったのかもしれません。そうなるとドリルどころか穴が欲しい訳でもなくなってきますね。なんとお客様は棚が欲しかったのです。お客様が実現したいことの目的を掘り下げるとまた違った側面が見えてきます。

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お客様に質問を重ねることで本質が見えてくる

お客様が欲しかったのはドリルではなく穴が欲しかった訳でもありませんでした。壁に取り付けるタイプの棚が欲しかったのでした。でもちょっと待ってください。お客様は何のために棚が欲しいのでしょうか。さらにお客様へ質問を重ねてみます。すると物が多くて部屋が散らかっていること、部屋を片付けたいこと、部屋が狭くて棚が置けないので壁に取り付けるタイプの棚を検討していることが分かりました。ここからお客様が抱えている課題の本質が見えてきました。それは部屋が狭い、物が多い、部屋を片付けたいという3点です。ホームセンターでは提案が難しいかもしれませんが、お客様の本質的な解決策としては、もっと広い部屋に引っ越す、レンタル倉庫を活用して部屋の物を減らす、部屋の片付けや物の処分をする業者を活用する、といったことが考えられます。もともとは「ドリルが欲しい」とお店にやってきたお客様の課題を理解することで本質的な提案を導くことができました。お客様の立場に立ってソリューションを提案するというのはこういうことです。

お客様と商談をする際には、目の前でお客様が求めていることの裏側にはどのような背景があってお客様は何を目的に商品を探しているのか、ぜひお客様に質問を重ねて本質を探ってみてください。商談が始まった時とはまったく違うお客様が本当に解決したい課題がはっきりと見えてくることでしょう。

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