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初めて『Air/まごころを、君に』を劇場で観たよ。

オタクには二種類いる。

『Air/まごころを、君に』を観た者と、そうでない者だ。
もう僕は『Air/まごころを、君に』を観る前の自分には戻れない。

『Air/まごころを、君に』を劇場で観るのは初めてだ。
最近劇場で観たことない名作映画をちゃんと劇場で観るということの素晴らしさに改めて気付く。もともと劇場で掛けるために作られているものをTVでしか観ていないのだから当たり前なのだが。
映像の色彩や解像度、音響なども勿論そうなのだけれど、そういうソフト面の部分というよりも映画館という空間の力が作るハード面の効果の方が大きい。

家で観るとスマホが気になったり飲み物を取りに行ったりどうしても映画を観る以外のことに気をとられてしまうが、映画館の「真っ暗な空間」「巨大なスクリーン」「巨大な音」「それ以外の行動を大きく制限される状況」という環境が人の感情に大きい影響はもたらす。
実際戦争のプロパガンダにも企業の新人教育にも使われるくらい映像の持つ洗脳力は侮れないのだ。
そう考えると映画好きという人種は自ら洗脳されにいってる催眠ジャンキーなのかもしれない。


閑話の休題。


『Air/まごころを、君に』の話だ。ずっと語れるくらいとても良かった。

・まず冒頭から最高。駄々っ子シンちゃん。昏睡状態のアスカに縋ってちゃぷちゃぷという点滴袋が揺れる音。心電図の音。シンジくんのオナニー。真っ白い(二重の意味で)画面で「最低だ、俺って」。暗転してタイトル「第25話 Air」。最高。

・戦略自衛隊シーン。容赦ない殺人シーン。序盤からボディブローのように心を削りに来る。最近観たから思うのかもしれないけど宮崎駿の『On Your Mark』の冒頭に似ていると思った。

・アスカ覚醒。「死ぬのはイヤ…死ぬのはイヤ…死ぬのはイヤ…」のシーンもそうだけど自宅のテレビだとぼそぼそ言ってて聴こえづらい台詞がちゃんと劇場だと聴こえる!!
この映画で唯一テンションが上がるシーン。ここまでのジメジメした空気を解放させてくれる爽快な大破壊。実際嬉しくて小さくガッツポーズしてた。パッヘルベルのカノンが気持ちいい。作画的にはこの映画の見せ所だ。時代劇の剣戟シーンみたいでハチャメチャかっこいい。
アスカの表情の作画がとにかく良い。「ラストおおおおおお!」のところ。アニメ史上二大美少女のほうれい線。(もう一個はハルヒのライブシーン)
宮村さんの演技も凄すぎる。

ミサトさんとの別れシーン。劇場で泣いてしまったシーン。
「今の自分が絶対じゃないわ。あとで間違いに気付き後悔する。私はその繰り返しだった…。ぬか喜びと自己嫌悪を重ねるだけ。でもそのたび前に進めた気がする。」この台詞。三石さんの演技も凄すごすぎる。

・人類補完計画シーンの全て。これが見たいがためにこの映画を観ている。
庵野秀明という映像作家の最高傑作。これ以上に心の内面の奥の奥に抉り込んだ狂気の映像を僕は見たことがない。
「Komm, süsser Tod」で狂気が最高潮に達する。映画館で観て本当に全身に鳥肌立った。完全な静寂からの首絞めから前奏でぞわって。本当に何度も見てるのに。これは言葉で説明出来ない。あとここ、ステレオで四方八方から声がして映像も相まって本当にトランス状態に陥ってしまいそうな気持ち悪さがある。映し出される劇場。「気持ち、いいの?」
これだ!俺はこれを浴びに映画館に観に来たんだ!!!という気持ち!!
「それは夢の終わりよ。」
自然と涙が出ていた。劇場で泣いてしまったシーン②。

・「気持ち悪い。」この映画の全て。
「終劇」の文字が見えた次の瞬間には劇場に明かりが入る。
「もう帰って下さいね。現実へ。エヴァは終わったんで。」というようなメッセージを感じる演出。余韻にすら浸らせてくれないこの突き放し感。
最っっっっ高。


本当に気持ち良かった。
あの当時のオタクもこんな気持ちで映画館を後にしたのか……というその気持ちの追体験を出来たことにとても感動した。
鑑賞後のメンタルのジェットコースターに乗せられた虚脱感からくる体調の悪さも心地良かった。

今はとにかくシン・エヴァが楽しみだな。
また現実に戻れとオタクに説教してくれるのを楽しみに待つとしよう。「Komm, süsser Tod」と「カノン」を聴きながら。

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