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JCY女性職員が描く未来【XF CUP 2020/スポンサー応援型サッカーメディア】

■日本クラブユース女子サッカー大会U-18の経緯

1月に群馬県前橋市で開催された『第2回 日本クラブユース女子サッカー大会(U-18)』(XF CUP 2020)を裏方として支えていた女性がいる。

その人物は、一般財団法人日本クラブユースサッカー連盟(以下、JCY)に務めている『江崎亜希子さん』だ。彼女が大会の運営事務局の一人としてさまざまな業務をこなしてくれたおかげで、毎日スムーズに現場が機能できている。

江崎さん抜きに今大会を語ることはできない。

自身も読売ベレーザ(日テレ・ベレーザの前身)、福岡J・アンクラスの選手としてプレーした経験を持つ。2011年からJCYのスタッフとしてクラブチームの活動を支え、主催する大会やイベントの運営業務にあたる傍ら、指導者としても女子サッカーの発展に寄与している。

その江崎さんの目に映る女子サッカーの現状、そして、未来をうかがった。

――まず、ご自身のキャリアについて簡単に教えてください。

江崎さん「小学校の頃は福岡でサッカーをやっていました。中高は『読売ベレーザ』の下部組織、トップチームで活動していて大学中退、後地元に戻り、『福岡J・アンクラス』でプレーしました。

現役当時は福岡県サッカー協会で働きながら、18時半くらいからクラブで活動をする生活を7年ほど送っていました。引退後、夫の転勤で東京に出ることになったとき、日本クラブユースサッカー連盟を紹介していただき、お世話になることになりました。

2011年の東日本大震災の年でしたので、今年で10年目になります」

――大変な時期に上京されたんですね。

江崎さん「震災時は福岡にいて、映像では大変な状況を見ていましたが、実際に上京してわかったことはたくさんありました。実は、『日本クラブユース女子サッカー大会(U-18)』についてはその頃から話がありました」

――約10年、JCYで仕事をされているなか、主催として新しく立ち上がった大会は他にあるのですか?

江崎さん「新規は『日本クラブユース女子サッカー大会(U-18)』だけです。震災の復興支援に関することも携わっていましたが、東北地域が中心に動いていましたので、直接プロジェクトとして関わったのはこの大会が初めてです」

――プレ大会を含めると4、5回開催されていますよね?

江崎さん「この大会の前身となるプレ大会を北信越地域で数回実施しています。JCYの中でも『サッカーの発展には、女子の普及・育成が必要だ』と感じているところがありました。当然、JFAも各所に働きかけをしていました。その中で、JCYとの意向が丁度うまく混ざり合い、誕生したのが『日本クラブユース女子サッカー大会(U-18)』です」

――江崎さんは選手の経験もあります。女子の大会が立ち上がったことをどう感じられていますか?

江崎さん「選手の時代は目の前の大会に集中していましたので、クラブチームや学校チームなど環境面についてあまり考えたことがありません。今は随分と環境が変わってきましたが、私たちの時代は女子選手にとって皇后杯が一番大きな大会で、各年代の大会も数えるほどでした。

私は日テレ・ベレーザの前身となる読売ベレーザの下部組織に所属していましたので、トップチームに上がるのが第一目標でした。支える側に感謝するようになったのは福岡に戻り、なでしこリーグでプレーしたり、福岡県サッカー協会で働いたりしてからです。社会人になってから運営の有難みを感じるようになりました。

今の中高生は大きな大会があって目標が明確になっています。大会が増えることはモチベーションにつながりますし、早くから計画を立てて動くことができるので、自分たちの時代にこのような環境があれば、より目標も増えたのかなと思います」

――日本クラブユース女子サッカー大会について変化は感じますか?

江崎さん「プレ大会の頃は大会の周知まで手がなかなか回らなくて認知されていない部分もあったので、毎年同じチームが出場するような状況になっていたところがありました。そういうことを含め、『日本一になろう』というより『交流しましょう』という色が強かったのかなという気がします。

ただ第1回大会が始まってからはより認知が広がりました。

レベルは間違いなく、私たちの時代より上です。ただ大会を開催してみると地域差であったり、都道府県内部でも上位チームが決まっている状態だったり、女子サッカーとして浮き彫りになった部分も出てきました。格差というか、クラブ間での開きは広がっているのかなと感じているところはあります」

■女子の課題はU-15でどう活動の選択肢を作るか

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――それは発展するなかでぶつかる壁だと思います。

先週、岩手の水沢ユナイテッドFC・プリンセスを取材しました。今大会に出場した後、ユースチームの高校生が1名から5名になり、ジュニアユースから昇格したいと希望した選手が3名もいたという話でした。江崎さんから見て、街クラブの存在、女子サッカーがどのように映っていらっしゃいますか?

江崎さん「男子も同じですが、10年前のクラブチームの状況を思い返すと格差はありました。全国大会に出場するチームと言えば、Jクラブ+α。特にU-18はクラブチームが増えず、Jクラブが中心になっている状況は否定できません。

しかし、現在のU-15に目を向けると全国大会に出場するチームは、関東も関西もJクラブと街クラブと半々くらいになってきています。また地域差についても、最近はサガン鳥栖が優勝をしたりしています。ここも徐々に点差を含めて地域差がなくなってきています。

きっと女子も同じだと思うんです。

私は福岡から外に出てみて、初めて強いチームがいっぱいあって、上手な選手がたくさんいることに気づきました。地方の選手は全国大会に出場し、初めて自分たちを客観視して気づくことがたくさんあります。それはチームも、選手も。

おそらく大会も回数を重ねることによって、またdivisinon2のような大会を開催することによって女子サッカーもいろんな変化が始まるし、進んでいくのだと感じています。

今、地域のクラブで女子チームの指導をしていますが、区、市、県をまたいでチームを選ばざるを得なかったり、サッカーとは違う部活に入ったり、サッカーそのものを辞めたりするような進路形態です。

私が関わっているクラブで女子U-15チームを立ち上げようとしているのですが、『グラウンドがない』『指導者がいない』という課題は大きいです。トレセンに入るにもどこかのクラブに所属していないといけないですし。

女子大会委員長の根岸(誠一)さんとは『地域単位でフェスティバルやクリニックのような活動を提供できたらいいね』という話をしています。競技者人口を広げる、手放さないことが大事です。やはり『サッカーって楽しい』と思ってもらえることが一番の根幹部分なので、そこに働きかけていかないといけないな、と。

もちろん全国大会には大きな意味があって、岩手の水沢さんのように元々あるチームにとっては目標になりますし、育成環境にとって大切なことです。ただ普及という側面も同時進行でやっていかないと『サッカーをやりたいんだけど、積極的になれない選手』を見守ったり背中を押したりする環境を作ることはできません。

ある程度、プレーした経験があるママのもとにいる子どもは『サッカーに親しむ子』が多いと思うんです。だから、少しでも『サッカーって楽しい』と思うママを増やし、子どもに関わることがいい環境になっていくのではないかと感じています。女子については、そういう子を増やしていけるように普及と育成を同時進行でやっていけたらと思います」

少し補足させていただく。

江崎さんも子を持つママとして、お子さんがサッカーを楽しんでいる。選手としてプレーし、サッカー界で働き、いろいろと実体験として感じているからこそ『サッカーの楽しさ』から始まる循環の重要性について触れていらっしゃるのだと思う。

このことは『サッカーに関わる全員が絶対に忘れてはいけない』ことだ。

■女子サッカーの発展にはJCYの役割が欠かせない

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――秋から『.WEリーグ』が開幕し、女子もプロという枠組みがスタートします。江崎さんがプレーしていた頃から発展し、サッカーに専念できる選択肢も生まれます。現役時代、働きながらプレーすることに対してどう感じていましたか?

江崎さん「私は、好きでやっている延長でサッカーを続けていました。だから、例えば福岡県サッカー協会で仕事をした後に『福岡J・アンクラス』で活動していたことが全く苦ではありませんでした。実際にプロがどういうものなのかは想像できませんが、これからの子どもたちはそこが目標になっていけばいいのかな、と。

ただ現役選手が頑張らないことには夢が持てない部分もありますから、今の選手たちを応援したいです。夏には東京オリンピックが開催される予定ですから、なでしこジャパンにも期待しています。女子サッカーを見た女の子たちが興味を持って女子の普及が少しでも進めばいいなと思っています」

――サッカーに限らず、スポーツ界にとってトップカテゴリーの活躍は大きく影響します。普及と育成とひと言で表現しても上からと下からとの両輪です。昔は女子のトップの選手たちが地方に行くと地域の女子を集めてイベントやクリニックを開いたりしていました。

江崎さん「普及と育成については、現在JFAも女子の地域リーグを整備しています。そこにはトップカテゴリーに属する『.WEリーグ』の下部組織も入ってくると思いますが、そこでJCYのクラブチームも絡んでいけたらいいですねという話は持ち上がります。

正直、女子についてはやろうとすれば何でもできると思います。

ただ事務局としての立場で言うと、組織として大きくなっているので整理しなければいけないことがいくつかあると感じていて、優先順位をつけなければいけません。だから、まずは現場の声を聞くことが大事だと考えています」

――いくら大会、その運営の仕組みを作ったとしても直接かかわるのは現場ですからね。やはり効率よく最大限に機能する形で物事を進めていかないと、その効果は期待できません。実際に『日本クラブユース女子サッカー大会(U-18)』を2度実施され、そこをどのように認識されていますか?

江崎さん「加藤会長を含め、菅原理事長、杉澤事務局長といった方々が女子のことを考えて行動に移してくれたおかげで2019年に第1回大会が開催でき、運営できました。私は必死に目の前のことをやっていった中で時間が過ぎていった印象です。特に第1回大会は夏の開催で、男子の日本クラブユースサッカー選手権(U-15)と重なっていました。

第2回大会もコロナ禍で開催できるかどうかが見えませんでした。

冬まで延期し、結果的にJFA主催の『全日本U-18女子サッカー選手権大会』と重なり、出場チームがdivision2になりましたが、それは結果的によかったと私は感じています。今年も夏にクラブ日本一を決める日本クラブユース女子サッカー大会(U-18)を開催し、冬にdivision2が参加できる大会を開くことを計画しています。

レベルどうこうは関係なく、クラブを育てる、選手を育てる意味では、トップだけの大会ではなく、division2向け、あるいは地域の大会ができれば女子の環境はより良くなっていくのではないかなと、第2回大会を経験して感じました」

――女子の場合は、地域とのつながりも大事なのかなと思います。

江崎さん「男子も四十数年の歴史があって、今があります。きっと現在の女子の状況を振り返ると、男子も昔はこうだったんだろうなと思うんです。男子も最初は4チームから始まり、現在は約1600チームが登録するようになりました。女子もそうなっておかしくはありません。アプローチの仕方は違いますが、積み重ねていくことによって女子も形作られていくものだと考えています」

――少しコロナ禍での活動、さらに感染対策について触れたいです。

江崎さん「ここは理事長をはじめ、皆さんの思いは同じです。昨年は夏の甲子園(全国高校野球選手権大会)やインターハイ(全国高等学校総合体育大会)が中止になりました。皆さん、よく『中止にするのは簡単だ』とおっしゃっています。

『この中でどうやって運営していくのかを考えよう』と。

日本クラブユースサッカー選手権(U-15)は中止になりましたが、日本クラブユース女子サッカー大会(U-18)については中止にしない対応を取りたいと考え、『どうしたら開催できるのか』を議論し続けていました。その結果、開催を決めたという流れです。

ガイドラインはJFAが提示してくれたものがありましたので、例えば前橋市内のホテルと旅館の方々にもご協力してもらった上で開催が実現しました。

試合観戦についてはグループ予選は禁止という形をとれませんでしたので、最終的には観戦者の自己判断にゆだね、現場で検温やガイドラインの通達などできることはすべて行いました。準決勝以降、会場を移動してからは無観客にしましたが、結果として感染者0(ゼロ)で終えられたのは参加クラブ、地元のみなさま、関係者など実際に大会にたずさわってくれた方々のおかげだと感謝しています」

――夏には、また第3回大会が開催される予定です。新たに取り組みたいこと、例えば第1回大会はレギュレーションとして全チームが6試合を戦うことになっていましたが、そのあたりはいかがでしょうか?

江崎さん「このあたりはコロナ禍が状況を難しくしている部分もあります。実際に感染リスクが高まりますし、試合数が増える=滞在期間が延びるため、費用もかさみます。単純に試合数を増やしたから喜ばれるわけでもありませんので、慎重に進めていきたいと思います」

――最後に、スポーツ界そのものって男性社会だったりします。その中で女性が働くことは大変なこともあるのかなと想像したりします。そこをどう思っていますか?

江崎さん「私はサッカーが好きでここまでたずさわらせていただいて、大変とは感じていません。本当にありがたいと思っています。正直、どれだけ社会に貢献できているかとか、深く意識しているわけではありません。

ただJFAとも仕事をしていますが、女性もすごく働いていますし、サッカー経験者でない方もたくさんいらっしゃいます。『日本クラブユース女子サッカー大会(U-18)』に出場しているチームを見渡しても、女性のスタッフさんがいますし、選手時代の仲間も指導者をしている人もいます。

根幹として『サッカーが好きという人たちをどれだけ増やすことが大切なのかな』と思います。私は、サッカー経験がない方が同じ業界で働いていらっしゃることに尊敬と感謝がすごくあります」

江崎亜希子(写真奥)
▼日本クラブユースサッカー連盟

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小学校の頃にサッカーに出会い、読売ベレーザ(現日テレ・ベレーザ)の下部組織とトップチーム、福岡J・アンクラスでプレー。夫が転勤するタイミングで現役時代に働いていた福岡県サッカー協会の紹介もあり、一般財団法人日本クラブユースサッカー連盟のスタッフに。2011年よりクラブチームの活動を裏方として支えている

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取材=木之下潤
写真=佐藤博之
協力=日本クラブユースサッカー連盟

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