やっちまったと笑えない

 底冷えに加え、諸々の事情——大抵は仕事関係ではなく最近発売したゲームのやり込みにハマってるからだが——で、すっかり夜更かしが日常になった俺は当然のように風邪を引いた。鼻水が昼夜を問わず溢れ出し、喉が痛いあまり飴を欠かせない。咳も結構出るので常時マスクも付けざるを得ず、自業自得とはいえ不便な生活を送る羽目になった。それだけなら、まだ良かった。病院に行って薬を貰って、すぐに完治はないしろ、状況は好転すると予想していたからだ。しかしやっちまった。酷く寒い冬の朝、何とか布団から這って起き出して、まずはトイレにと廊下を歩いていったときだ。不意に鼻がムズムズして、やばいと思いつつも、なるべく鼻水を飛ばさないよう意識した。だが、それがマズかった。体を縮こめしたくしゃみは、まさかの俺の腰にクリティカル。激痛に崩折れたのは言うまでもない。——診断結果は無論、ぎっくり腰であった。
 というわけで今は時折思い出したように襲いかかる痛みと共にルーチンワークをこなしている。長引かないのはせめてもの救い——だが、初めてやった感想は想像を絶する不便さが辛い、だった。学生時代に足の骨にヒビが入ったことがあり、はじめは車椅子、少ししてからは松葉杖をついて生活していた。勿論それはそれで大変で、不必要に出歩くのが億劫なせいで家に引きこもり、友達がくれた漫画を読んでいたら、暇潰しのつもりがオタク人生に足を踏み外す——もとい踏み入れることになったりしたがいい思い出だ。しかし座ったり横になっている分には相当楽だったのを憶えている。その点、今回は座っていてもデスクの上の飲み物に手を伸ばそうものなら痛いし、寝返りでも痛い。痛み止めも二十四時間効くもんじゃなし。戦々恐々としつつ、一刻も早く解放されるのを祈る日々を送っている。
 ありきたりな話だが健康って大事だと思う。一回きりじゃない痛さがつきまとうというのは厄介で、死ぬ訳じゃなくともびびるもんはびびる。風邪の時もアドレナリンとか、何かそんなので夢中になっていて気が付かなかっただけで、それなりに支障は出てただろうし。歳を食っても自堕落な生活をしてたら当然といえば当然の出来事だ。しかし健康志向に走るかといえば、それも面倒臭いのが精神的に老いたってことなんだろうな。治ったらストレッチくらいはやってみるかと思いつつ、俺は俺の腰に気を遣いながらいそいそとゲームの準備を始めた。

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