近くて遠い、世界の話。

 行き帰りの乗り物の待ち時間に昼休憩。帰ってからもお風呂が沸くまでや寝る前にスマホを手に暇を潰すことが多い毎日を送っている。操作が楽で札束で殴る予定はなくてもそれなりに満足出来るソシャゲや、ぼーっと見れて、気になったシーンだけちょこっと巻き戻せばいい動画も面白い。けどどちらもある程度時間は必要だから、タイムラインを眺める回数が多かった。投稿を一つも見逃したくない、というタイプではないので、適当に流しては満足してやめるの流れを繰り返しても既読まで辿り着かずに済む。フォロー先もマスコミから芸能人、好きな本の作者にリアルの友人、ネットのみの知人等。一人暮らしを始めた際にテレビを買わなかったので出かける前ニュース番組を見ていた感覚を維持しようと、興味のないジャンルの話題も少し入るようにしている。
 今日も運良く座れたので、バスの窓から覗く見慣れた街並みからは早々に視線を外し、ポケットの中を探ってスマホを取り出した。隣の人の視線は気になるけど、手持ち無沙汰でいる方が余程気まずいのであまり気にしないようにしている。生活リズムが同じらしくてよく見る顔もいるけど言葉を交わすこともない相手だ。
 いつも通り、タイムラインには雑多な情報が流れている。大学時代の友人でもう交流はないのにフォローし続けている女の子が恋人の浮気を疑い若干病んだ投稿をしているのも相変わらずだ。マスコミは国内外で起きた事件事故について伝えているし、漫画家は今月新刊が出るという宣伝をする。芸能人でもまだいまいち人気が冴えない人はファンのリプライに更に返してくれたりした。そうして売れた人とのたった数回のやり取りのスクショを見直すたびに、サインを欲しがる人に共感したりもしたっけ。
 世界は今繋がっているんだなぁなんてふと当たり前のことを思う。いいことばかりじゃなくて、どちらかといえば匿名を盾に自分のエゴを押し付けようとする人達が目立つけど。でも数自体は善意の方が多いはず。疲れていて気持ちがささくれているときは自分も穿った見方をしがちなので、発言を控えようとはするけど、誰かしらは見ているはずの場所で不平不満を零したら、スッキリするのも分かるので難しい。ただこの先、ネットも現実と同じように変わっていくだろう。だったら画面越しに人がいると、絶対忘れないようにしないと。思いつつ一文を投稿する。

『今日もありふれた日になりますように!』

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