【XBスポーツマーケティングレポート】 日本市場におけるeスポーツについて(後編)

皆さんこんにちは。XBスポーツマーケティングチームです。
前回のレポートを読んでいただけたでしょうか。前編では日本のファン層、市場規模などeスポーツの基本的な部分をお伝えしましたが、
今回の後編では従来のスポーツとの広告掲示の違いやビジネスとして
企業がどう関わっているかについてお話させていただきます。
是非読んでみてください。

<本日のトピック>
1. eスポーツの広告
 A) オフラインイベントの広告
 B) オンラインイベントの広告(ゲーム内の広告)
2. 企業の関わり方
 A) 企業のeスポーツチーム所有
 B) スポーツチームのeスポーツチーム所有
 C) 大会へのスポンサー
 D) 大会の主催
3. 今後の展望

1. eスポーツの広告
皆さんの中でもほとんどの方が、スタジアムに足を運んだり、
テレビで見たりと何らかの形でサッカーや野球などを観戦したことがあると思います。ではeスポーツの場合はどうでしょうか。
おそらく観戦したことがない方のほうが多いと思います。
従来のスポーツではスタジアム、選手が着ているユニフォームなど、
視聴者、観客の目に入るところにはたいてい企業のロゴや、
ブランドの広告が出ていると思います。これはeスポーツも同じで、
eスポーツが行われる会場、選手が着ているユニフォームには広告がついています。

A) オフラインイベントの広告
従来のスポーツでなかなか見られない点で実況席にも広告がついているのがeスポーツの特徴です。従来のスポーツでは、実況、解説席はプレイヤーとの距離が遠く、放送媒体にも映る機会は少ないですが、eスポーツの場合、サッカーや野球のように、試合をするコートが大きくないため、以下の画像のように実況、解説席がプレイヤーと近く、従来のスポーツよりも放送媒体に映ります。


B) オンラインイベントの広告(ゲーム内広告)
これに加えてゲームの中に広告を出すことができるのもeスポーツの魅力で
eスポーツならではの広告の掲載の仕方、プロモーション方法があります。


ご覧いただいた画像では、格闘ゲームのゲーム内広告としてUNIQLOが掲示されていますが、格闘ゲームに限らず様々なゲームジャンルで
ゲーム内広告が掲載されています。
このようにバーチャル空間の発展性は他のスポーツには無い
eスポーツの魅力の一つです。
こういったeスポーツならではの特徴を活用することでさらに、
企業のマーケティング効果を高めることが期待できます。

2. 企業の関わり方

A) 企業のeスポーツチーム所有
様々な形で広告掲載ができるeスポーツですが、
企業の関わり方もスポンサーとして広告を掲示するだけにとどまらず、
多様な関わり方をしています。
1つ目は企業がeスポーツチームを運営するという関わり方です。
企業がeスポーツチームを所有する意義として、将来の中間購買層になる
Z世代、ミレニアル世代を取り込むということと、
自社サービスと連動させて相乗効果を見込むということが挙げられます。
例えばPUBGモバイルのプロリーグに出場している
原宿ストリートゲーマーズというプロeスポーツチームは、
BS12 (トゥエルビ)が運営しています。BS12はスポーツ、ドラマ、アニメなど様々なジャンルを展開するメディアでBS12からすると、
原宿×eスポーツでZ世代、ミレニアル世代を取り込むことができますし、
eスポーツチーム側からしても、SNSにとどまらずBS12を利用して
多メディアでの広報を行うことができる点で相乗効果を生んでいます。


B) スポーツチームのeスポーツチーム所有 
また、最近では従来のスポーツチームがeスポーツチームを所有する動きも出てきました。というのも、eスポーツは「見るコンテンツ」として
発展してきたという点で従来のスポーツと共通点があるといえます。Netflix、YouTubeなどの台頭で特に若年層で「見るコンテンツ」として
従来のスポーツが選択される確率が低くなり、従来のスポーツの観戦者の
高齢化が見られるようになってきている中で、eスポーツとうまく連携することで、「見るコンテンツ」としての相乗効果、また若い世代からの注目を集めてライト層のファンの集客を行うという目的があります。
それに加えて従来のスポーツチームが持っている運営ノウハウをeスポーツチームの運営に落とし込むことでスムーズな運営を行うことができるのも
利点の一つです。こういった背景から従来のスポーツチームが、
eスポーツチームを設立するという実例が広がってきています。
例えばJリーグの横浜Fマリノス、湘南ベルマーレ、鹿島アントラーズなどは
eスポーツ部門を設立し、サッカーゲームのタイトルだけでなく、
違うジャンルのゲームタイトルもプレーしています。
また、その波及はチームにとどまらず、日本野球機構(NPB)や
日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)などの協会もeスポーツリーグを主催しています。



C) 大会へのスポンサー
次にご紹介させていただくのが、
eスポーツの大会にスポンサーとしてかかわる形です。
これはただ広告を会場に掲示するだけではなく、様々なアクティベーションを行うことでeスポーツを活用していくという関わり方です。
eスポーツの収益として1番大きな部分を占めているスポンサー収入ですが、
このスポンサーも多様化してきました。
以前まではendemicと呼ばれるeスポーツに関係のある企業
(例えば、パソコン、ゲーミングチェアなどの企業)が
ほとんどを占めていましたが、
近年はnon-endemicと呼ばれる企業(eスポーツと直接関係のない企業)の
スポンサーも目立ってきました。
例えば飲料業界のサッポロビールは2018年にeスポーツチーム
「レバンガ☆SAPPORO」のオフィシャルスポンサーに決定したことから
始まりでeスポーツに参入しました。
その後は「レバンガ☆SAPPORO」のオフィシャルスポンサーにとどまらず、「PUBG JAPAN SERIES Winter Invitational 2019」では
サッポロ生ビール黒ラベルを飲みながら観戦ができるチケット
「サッポロビールプレミアムシート」を販売したり、株式会社CyberZ、
株式会社テレビ朝日、エイベックスエンタテインメント株式会社が
開催している、eスポーツ大会「RAGE」の「RAGE 2018 Autumn」にも
協賛をして飲食エリアでベビースターとコラボした商品セットを販売したりしました。
このようにただスポンサーとしてユニフォームや会場に
ロゴを掲載するのではなく、自社商品を活かした施策を行うことが
eスポーツを活用するうえでより効果を高める方法でしょう。

※以下のリンクからご参照ください。

https://blog.sapporobeer.jp/play/10996/

D) 企業の大会主催 
また、大会主催という形でeスポーツに関わることもできるのが
この分野の魅力的なところです。
従来のスポーツでは、そのスポーツの協会が主催、または関わる大会、
リーグがほとんどなのに対し、eスポーツは協会に通さずとも開催することができます。
実際にeスポーツにもJeSU(一般社団法人日本eスポーツ連合)という
従来のスポーツの協会にあたる団体が存在しており、
プロライセンスの発行や、独自に認定したゲームタイトルのeスポーツ大会を開催しています。具体的には全国都道府県対抗eスポーツ選手権2020KAGOSHIMAやJAPAN eSPORTS GRAND PRIXなどの大会を
実施しています。ただJeSUに限らず、企業が主催する大会、リーグ、
また私設大会も珍しくありません。
例えば、NTTドコモはeスポーツリーグブランド「X-MOMENT」を主催しており、そこでは、人気ゲームタイトルの「PUBGモバイル」、
「レインボーシックスシージ」などのプロリーグ、またトーナメント形式の大会も主催しています。このほかにも凸版印刷株式会社と
サイバー・コミュニケーションズ主催の大会
「AFTER 6 LEAGUE」や、
先述した株式会社CyberZ、エイベックスエンターテインメント株式会社、
株式会社テレビ朝日の3社で主催している日本最大級eスポーツイベント「RAGE」なども開催されています。また、私設大会では株式会社JCGというeスポーツ運営を行う企業が
主催しているITエンジニア限定のeスポーツ大会「LogStare eSports Series」が開かれるなど、大会主催のハードルが低く、
大会を運営する形でeスポーツに関わることができるのもeスポーツの魅力です。

3. 今後の展望 
上述してきた通り、企業は様々な形でeスポーツという分野に関わることができるということもあって、
将来の中間購買層になるZ世代、ミレニアル世代にリーチするのに魅力的なこの分野に対し、多種多様な企業がいろいろな形でアプローチする動きが
広がっています。
特にeスポーツはオフラインイベントでの広告掲載、アクティベーションに加え、オンラインでのイベントやゲーム内というバーチャルな空間まで
活用できるため、これから更に発展が期待できます。
実際、前編でお伝えさせていただいた通り、eスポーツは成長分野で、
2020年の日本のesports市場規模は66.8憶円で2024年には180億円を超えて
拡大していくと予測されています。
これには上記理由の他に5Gの影響も考えられます。
現在オンラインでのゲーム対戦での障壁としてラグという遅延が発生することが挙げられます。eスポーツが今後さらに競技として公平性を保つためにこの部分の改善は避けては通れませんが、5Gによってこの問題が解決できる見込みです。この5Gによって通信環境が改善すれば、ゲーム回線の遅延などの問題が解消され、完全にリモートで大会を開くことも可能になるでしょう。
また上記したように、eスポーツ大会は主催するハードルが低く、
JeSU主催の大会、企業主催の大会、私設大会などたくさんの大会が
乱立している状況です。
このような背景からeスポーツのファンやプレイヤーの裾野も
ますます広がっていくと考えられます。
このように成長分野であるeスポーツに、
ただ単に投資をするだけでも見返りはあると考えられますが、
eスポーツというコンテンツをどのような形で活用していくのかを
深く考え、実行した企業がゲームチェンジャーになっていくと考えられます。


4. まとめ
・eスポーツの広告には、
従来のスポーツ同様の会場やユニフォームに載せる広告に加え、実況席
またゲーム内というバーチャルの広告掲示が可能。
・ 企業のeスポーツへの関わり方として、eスポーツチームの所有、
eスポーツ大会へのスポンサー、eスポーツ大会の主催が挙げられる。
特に、従来のスポーツチームのeスポーツ所有、大会主催のハードルが
他のスポーツよりも低い
ということが特徴。
・ 今後の展望としてバーチャルの発展性、5Gの普及など様々な要因により
eスポーツ市場は成長していく見込み。

いかがだったでしょうか。ここまで前編、後編とeスポーツについて
まとめさせていただきました。
このレポートが少しでも皆さんのお役に立てていたら幸いです。
今後もeスポーツに限らず、スポーツマーケティングについて
発信していきますのでどうぞよろしくお願いします!

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