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ニコンの激安中古レンズを復活させる(その9)New Nikkor 35mm F2.8(Ai改)

おつかれさまです.

今回は,焦点距離35mmレンズだ.35mmというと,所有しているD300のようなイメージセンサーがAPS-Cサイズのカメラでは,35mmのフルサイズセンサーで換算した焦点距離がほぼ50mmで,標準レンズということになる.ずっと入手したかったのだが,自分ルールの送料込み二千円以下ではなかなか見つからなかった.入手した個体は,Aiが使える絞りリングになっているが,製造番号から検索するとNew Nikkorのようで,正規に改造されたモノのようだ.やっと入手できたのは良いのだが,写真のような残念な外観のレンズである.多少のスレは味があって気にならない場合もあるが,ここまで塗装が剥げていると,所有欲がなくなってしまう.

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ちょっと残念な見た目ですね.

現状把握

この個体はとにかく使用感が強い.プロカメラマンが使っていたのだろうか.塗装が剥げているのは,主にフォーカシングリングで,距離目盛さえよく見えない.ここだけでも,再塗装が必要である.絞りリングやフロントの銘板もスレやキズが目立つ.さらに,フィルター枠が変形していて,これも修正しなくてはならない.光学系は意外にきれいで,チリはあるものの,目立ったカビやキズはなさそうである.

結局レンズを分解して,外装のパーツはすべて再塗装をすることにした.塗装には時間がかかるので,その間にフィルターリングの修正と,光学系の清掃をすることにした.

フィルターリングの修正

どこかにぶつけて変形したフィルターリングは,このままだと役に立たないし,分解にも支障がでるので修正することにする.ネットを検索すると,修正用の器具も販売されているようだが,お金のかからない方法にした.市販の平先ペンチを改造し,これを使って修正する方法だ.さっそく100円ショップで購入し,改造にとりかかる.改造といっても,ペンチの先端を片側だけ切断するだけである.金ノコを使って切断した.これにフィルターのネジを壊さないよう,不要になった時計バンドを適当な大きさに切ってペンチの両側に貼り付けた.

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ペンチの先端が長いほうを変形したフィルターリングの外側に当て,短いほうを内側に当てて,グイっと力を入れると変形する前の形状に修正することができた.ただし既に前のオーナーが,ペンチで修正しようとして,ネジ山が崩れている部分があった.これは実際にフィルターを何度も付けたり外したりしたが,完全には修正できなかった.

塗装

レンズのオーバーホールで塗装が必要になるとは思っていなかったが,ネットを検索してみると,オールドカメラのレストアでは,塗装もよくやられるようである.必要になりそうな塗料等は,ネット販売でも買えるが,仕事帰りに新橋のタミヤショップで揃えてきた.

● タミヤカラーエナメル塗料ピンクX-17
● タミヤカラーエナメル塗料スカイブルーX-14
● タミヤカラーエナメル塗料ライトグリーンX-15
● タミヤカラーエナメル塗料イエローグリーンXF-4
● タミヤカラーエナメル塗料フラットホワイトXF-2
● タミヤカラーエナメル塗料(溶剤)大ビンX-20
● タミヤフィニッシングペーパー細目セット
● クラフト綿棒 三角・XSサイズ 50本
● タミヤモデリングブラシ 面相筆 短

まずは,塗装が剥げたフォーカシングリングを,紙やすりで磨いて下地を作る.磨いていくと,アルミニウム合金の地金が姿を現し,なかなか楽しい.ただし,磨き過ぎると刻印された文字が消えてしまうので,そこは注意されたい.最後は1000番のペーパーで仕上げた.

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まあ完璧ではありませんが,これくらいで十分でしょう.

いよいよ塗装にとりかかる.当初,サーフェーサーと黒のラッカースプレーを使用したのだが,塗膜が弱くすぐに剥がれてしまった.そこで,下記の塗料をAmazonから購入し試してみた.5回程度に分けて吹き付けた.本当ならここでオーブン等を利用して高温で焼き付けたいのだが,ヘアドライヤーを使って乾燥させた.


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黒くなりました.この時点では,艶がない状態です.

墨入れ

ニッコールには銘板やフォーカシングリング,絞りリング,目盛りリングに,文字や目盛りがカラフルに入っている.これを修復するには,金属に掘られた文字に,希釈したエナメル塗料で色をいれていく.エナメル塗料はシンナーで希釈するのだが,やってみるとこの塗料の濃度が重要で,薄すぎると流れてしまうし,濃すぎると溝に入っていかない.試行錯誤して適当な濃度にし,面相筆と綿棒で溝に塗り込んでいく.はみ出した塗料は,シンナーをしみ込ませたシルボン紙で拭き取れば良い.

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墨入れした銘板(拭き取り前)

塗装の最後は,保護と艶出しのために,クリアラッカーを塗布する.1回だけでなく,少なくとも3回くらいは重ね塗りしたほうが良いだろう.特に,パーツのエッジは剥げやすいようだ.

レンズの清掃

レンズの分解は,例によって下記のサイトを参考にした.

今回はマウントのネジも問題なく外れ,特に苦労せずに分解・清掃ができた.レンズユニットも,順調に分解でき,すべてのレンズを両面から清掃することができた.ヘリコイドもグリスを新しいものに交換し,ヌルヌル感が戻った.

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今回は,順調に分解作業が進み,すべてのレンズを清掃できました.

まとめ

今回は外装にこだわり,再塗装を実施した.手間と時間はかかったが,やって良かったと思う.よく見ると,磨き過ぎて文字の溝が浅くなってしまい.墨入れがうまくいかなかった部分や,フィルターリングのネジ山のダメージや,修復できなかった傷や凹みもあるのだが,遠目にはごく普通の実用的なレンズに見える.私は塗装に関してまったくの素人だが,やればできるものである.レンズの清掃やヘリコイドのグリスアップも実施でき,全体的仕上がりも満足である.

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Nikon D300, F16, SS1/250, ISO200

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Nikon D300, F8, SS1/250, ISO200

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