ニコンの激安中古レンズを復活させる(その3)NIKKOR-Q Auto 135mm F3.5
おつかれさまです.今回は,はじめてのオールドレンズのオーバーホールである.このレンズは激安で入手して棚に飾って,カッコいいなあと眺めていた.最近,カメラをニコンD300に乗り換えたので,Ai改造することで絞り優先自動露出が使えるようになるはずである.これを機に,実用品に復帰してもらおうというわけである.
現状把握
レンズはフォーカシングリングの動きや絞りリング・絞りの動きは良好だが,肝心のレンズ自体がカビている.一目見て向こうが見えないくらいである.これは完全に分解して,レンズを清掃しなくてはならない.分解の方法は下記のサイトに詳しいので,このとおりやってみることにする.
フロント側からのアプローチ
分解の手順は,上記のサイトに詳しく写真入りで書いてあるので参照してほしい.今回最も手こずったのは,フォーカスリングの分解だった.セットスクリューは簡単に外れたのだが,リングの前部にあるツバが回らず分解できない.アセトンをしみ込ませては回そうとするが,引っかかるところもないので,力が入らないのだ.結局素手では力がはいらないので,スリップしないように台所用のゴム手袋を使って何とか回せた.
左のリングがなかなか外れなかった
さらに前玉と中玉を分離したいのだが.これもなかなか回らない.どうもねじ込みで結合されている部分は,必ず接着剤や塗料で固定されているので,アセトンで溶かしてからでないと回らないようだ.コツがつかめると,次々と分解することができた.
後玉も,カニ目レンチを使えば外せるようだが,絞りを開放にすれば,レンズの両側からアクセスできて清掃が可能なので,ここはあえて無理をせずに外さなかった.
すべてのレンズにカビがはびこっていたが,レンズクリーナーを使って拭き取ることができた.しかし,前から2番目の巨大な張り合わせレンズのフロント側には,どうやらコーティングの劣化による曇りがあって,レンズクリーナーやエタノールではきれいにならなかった.最後の手段である酸化セリウムが主成分のガラスクリーナーを使ったところ,それほど力を入れずに手で磨くだけで,すっきりと曇りが落ちた.
絞りリングのAi改造
レンズの清掃だけなら,マウント側から分解する必要はないが,今回は絞りリングをAi改造するので,マウントを外す必要がある.マウントはマイナスねじ5つで止められていて,ねじが固着していないか心配だったが,意外にも簡単に外れた.あとは改造する絞りリングを引き抜くだけである.
Ai改造の方法も,上記の同じサイトに載っていて,解放F値が3.5のレンズの場合,絞りリングの目盛りがF16+1/3の位置に段差を作れば良いとの事である.上記のサイトではドリルを垂直に固定するスタンドに設置して,ダイアモンドビットで削るように勧めているが,私はそういった工具は持っていないので,金属加工用の平ヤスリで気長に削ることにした.
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結局,カニ爪を止めるネジ穴ギリギリまで削って,段差を作った.カメラに装着して,物理的に干渉しないことを確認し,絞りの開放値が正常に認識されていることを確認する.ノギスで測るとこの段差はちょうど1.0mmだった.
マスキングテープで削る量を特定しています.
まとめ
今回初めてオールドレンズを分解して感じたことは,ひとつひとつの部品の精度が高く,絞り機構にはボールベアリングまで使われていて,当時のカメラレンズが,コストがかかった高級品であることである.ほぼ金属とガラスでできていて,プラスチックなどほとんど使われていないので,経年で劣化して,割れたり折れたりした部品はまったくなかった.なんだか数千円で入手して,乱暴に分解するのが申し訳なく思ってしまった.とはいえ,半世紀以上も前に製造された工業製品が,手入れされてもう一度活用されるのは,なんだか嬉しいし,愛着もわいてくる.
D300に装着できました.メタルレンズフードもいい感じ
いままで,ズームレンズばかり使ってきて,初めて単焦点レンズを使って撮影してみたが,あらためてヌケの良さに感動している.APS-Cサイズで焦点距離135mmは,もはや中望遠というより望遠レンズなので利用する場面が限られるが,入手価格が送料込み2千円以下で感動する写真が撮れるなら良い買い物だと思う.
Nikon D300, F4, SS1/200, ISO400
Nikon D300, F5.6, SS1/800, ISO400
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